×

サイバーエージェントが見通す、ダイナミック広告の今後[インタビュー]

 

サイバーエージェントは、同社が提供するデータフィードマネジメントサービス「CA DataFeed Manager(シーエーデータフィードマネージャー)」において、「Facebook Dynamic Ads with Local Products」に昨冬に対応している。

公表内容の詳細や、データフィードを活用したダイナミック広告の現状と今後について、同社インターネット広告事業本部 Instagram局 マネージャー 三浦大輝氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

 

ダイナミック広告配信で位置情報を活用

-まずは「CA DataFeed Manager」についてお聞かせください。

本ツールは広告主が保有している自社の商品データを各広告媒体に配信する際に、最適化されたデータフィードを自動生成することが出来るというものです。
それによりデータフィードの生成工数の削減をすることができ、リアルタイムでデータフィードの情報更新もできるため、広告配信における機会損失を削減することが出来、また無駄なコストの削減にもつながるのがメリットになります。

 

-貴社のFacebook広告の取り扱い状況についてお聞かせください。Facebook広告全体のお取り扱いにおける、ダイナミック広告の活用比率はどのくらいでしょうか?

当社のFacebook広告の取り扱いは、引き続き堅調に伸びております。またダイナミック広告の活用比率は、全体の10%程度となります。

 

-昨冬公表された、Facebook Dynamic Ads with Local Products(DAFL)に対応したことについて、お聞かせください

DAFLは、位置情報をもとにユーザーをターゲティングして広告配信をする広告メニューです。例えば渋谷に店舗を持つ店舗系の広告主の場合、データフィードの中に、渋谷店から「半径10キロ以内」とカラムに設定すれば、半径10キロ以内にいるユーザーに対しては、渋谷店のクリエイティブを配信することができます。

位置情報に応じて各ユーザーに合ったクリエイティブ出していくというのが、DAFLの機能となっており、それに当社のCA DataFeed Managerが対応しております。
元々DAFLは、デリバリー系サービスを提供している広告主向けに提供を行っておりましたが、そのほかに店舗系の広告主においても広告効果を確認しております。

デリバリー系サービスを提供している、あるいは店舗を保有している広告主は、ダイナミック広告自体をこれまで活用することがありませんでした。
配信時にエリアを設定し、そのエリア向けにクリエイティブを作って、これを対象エリアのユーザーに当てるという流れが一般的でした。
元来のダイナミックの機能をあまり使っていなかったので、そもそもデータフィード自体を広告主が持っていらっしゃらなかったのです。これを仮に手動で用意するとなると、運用コストが掛かるということが、課題となります。「CA DataFeed Manager」が、DAFLに対応したことで、データフィードの自動作成と運用コストの削減につなげることができるようになりました。

 

 

ダイナミック広告、三つの方向性と可能性

-ダイナミック広告全般の需要動向と今後の方向性についてお聞かせください

三つの観点からお応えできると考えております。
まず一つはメディア軸というところで、今までダイナミック広告というとCriteoやFacebookが主役でしたが、直近ではスマートニュースやLINE広告のように、広がりがみられています。

二つ目は、広告主の業種軸です。ダイナミック広告は、今までは総合ECや人材、旅行などの業種広告主がメインでしたが、新たに店舗系やデリバリー系の広告主などへと広がりつつあるということです。

三つ目がFacebookによる機能開発によるところでありますが、ダイナミック広告のメニューの中でも開発が進んできているということがあります。もともとダイナミック広告はリターゲティングが中心だったですが、今回のDAFLのようにノンリターゲティングの精度が上がっているというような動向がみられます。

今後はクッキーレスの進展によりリターゲティングが厳しくなりつつあるので、ダイナミック配信においてもノンリターゲティングでの獲得が見込めるようなメニューの開発が進んでいくであろうと予想されます。

また、各媒体ではクリエイティブの自動化が進んできてはいるものの、ダイナミック特有の、各ユーザーに最適化されたクリエイティブを当てることができるというのは、今後プロダクトとしての強みになっていくと思います。この辺りは期待できる点です。

 

-ダイナミック広告は、基本的には静止画のクリエイティブが引き続き中心になるのでしょうか?動画のようなものが出てくるという話題は出ていないのでしょうか?

基本的には静止画でカルーセルのものが増えてきていますが、動画対応については今のところ出てきていません。

 

 

決済機能のリリースが、ショッピング広告需要活性のきっかけに

-データフィードマネジメントのサービスにおいて、他社との差別化のポイントはどこにおいていらっしゃるのでしょうか?

広告主が保有するデータをもとに複数の媒体に対応できる点や、1媒体での当たり施策をもとに他媒体向けのフィードもカスタマイズできる点が挙げられます。
また今回のように新たなビジネスチャンスが生まれた際に、開発をスピーディーに行うことができるという点においても、弊社内でプロダクトを保有していることの強みであると考えています。

 

-今ECの領域ではShopifyの普及が進んでいますが、これにより何か貴社のエージェンシービジネスにおけるFacebook広告の取り扱いに何らかのインパクトがあると想定されていますか?

Shopifyの普及は進んでいると感じています。これらのサービスと広告プロダクトなどのシームレスなデータ連携は広告効果を最大化する際に必要になると考えています。

またInstagram ショッピングなどの話は最近相談や問い合わせが増えてきてはいるものの、まだ日本では決済機能の提供が始まっておりません。
この機能の提供が始まれば、FacebookやInstagram周りの市場がまた大きく動くことになるでしょう。

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。