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個人情報保護法施行により、日本が世界一のCookielessマーケットになる可能性

ベンジャミン・リーバーグ
Head of Data, Teads APAC and JAPAN

 

警鐘

昨年2021年から今年は、多くのアドテク企業が、cookieless時代を生き抜くために様々な戦略を練ってきました。

ブランド(広告主)や広告代理店の皆さんが、新しいターゲティングソリューションについて多くの知識を学んだことは間違いありませんが、IAB(Interactive Advertising Bureauインタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)は、先月の2月8日に発表したレポートで、警鐘を鳴らしています。

第5回年次報告書「State of Data」では、プライバシー法、サードパーティクッキーの廃止、クロスメディア・アドレサビリティ(個人特定)の制限や技術革新が広告測定にどのような影響を与えるかを調査しています。

この報告書は、多くのことが語られながらほとんど行動が起こされておらず、その結果、業界の準備態勢が誤って認識されているということを示しています。

これまでの測定方法に代わる、プライバシーを重視した新しいソリューションが用意されておらず、その結果、広告主は近いうちに重要な測定機能を失う可能性があると指摘しています。
この問題は、業界全体に大きな影響を与える数十億ドル規模の問題と言われています。オープンRTBプログラマティックバイイングにおいて、アドレサビリティと計測を支えるサードパーティクッキーと識別子がなければ、アドレサブルオーディエンスのプールは縮小し、キャンペーンのROAS/CAC/CPMを維持するためのコストは最大で200%*も上昇すると言われています。
**Sources: Common Thread Collective, 1/10/22 ; eMarketer, 11/5/21; MOLOCO

調査によると、バイサイドではすでにCPMが上昇しているそうです。
多くの業界リーダーが「差し迫ったクッキーIDの排除が収益に影響するとは考えていない」ものの、AppleのiOS 14.5のリリースを受けて、約半数(49%)がiOSデバイスで、30%がAndroidデバイスでCPMの増加を確認しています。それでも、ほとんどのブランドが、ファーストパーティデータへの投資を増やさず、サードパーティデータに大きく依存し続けています。

 

 

氷山の一角

日本では、このようにサードパーティデータや測定に依存し続ける現状が、まもなく試されることになります。

iPhoneやその他のアップル製品が日本の消費者間で広く普及していることから、日本はすでにcookielessマーケットのトップに位置すると考えられます。

日本でのiOSとSafariの利用率は55%と非常に高くなっています。つまり、オープンウェブのユーザーの55%が従来の手段(cookie)を使って識別できないことを意味します。(2022年1月、Teads Japanデータ)

これまで、Google ChromeやAndroid端末に残っているサードパーティークッキーは、いくつかの注意点を除き、通常通りビジネスを継続することが許されていました。しかし、2022年4月1日以降、これまでの技術的な制限に加え、待望の個人情報保護法(正式名称:個人情報保護法、APPI)の改正が施行されます。

EUのGDPR規制と同様に、APPIでは企業はユーザーの同意を得ること、データの使用に関して透明性のある情報を提供することが義務付けられます。日本のデジタル広告の場合、IDターゲットによるメディアバイイングを可能にしたいパブリッシャーは、自社のウェブサイト上でユーザーの同意が得られていることを確認する必要があります。

ユーザーは、トラッキングを拒否するかもしれません。もしくはパブリッシャーは読者を失うことを懸念して、強制的なサインアップを控えるかもしれません。

また、クッキーを利用したバナーや同意管理ツールなどが、すべての法的要件を満たすことが可能であるかについても重要な懸念点となります。

いずれにせよ、日本で特定が可能なユーザーの数は、さらに減少することが予想されます。

Cookielessの影響は、隠すことはできません。

氷山の一角から、徐々に山肌が姿を現しはじめ、デジタル広告の需要が増え続ける中で、Cookie IDに依存したプログラマティック広告の限界が明らかになるでしょう。

日本は今後業界に新しい道を切り開くことで、cookieless業界のリーダーとなるでしょう。

エコシステム内のすべての企業は、新しいデータと測定ツールの導入、およびプライバシーのコンプライアンス認証に時間とリソースを投資する必要があります。
これらの準備には時間を要します。いますぐ準備に取り掛かりましょう。

 

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ABOUT ベンジャミン リーバーグ

ベンジャミン リーバーグ

Teads, Head of Data APAC and JAPAN
ドイツ出身。デジタル広告最適化について、四六時中考えているデータの専門家。エンジニアリング(デジタルメディア工学・心理工学)、国際関係の修士号取得後、来日。国内のデジタルメディアエージェンシーにて勤務後、Teads Japanへ。現在、TeadsでCookieless戦略、ターゲティング最適化、データプライバシーの分野に従事し、IABのData&Attribution分科会のカウンシルを務める。