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北米Shopifyの現状と3つの最新マーケティングトレンド[インタビュー]

米国におけるEコマース全体の売上高はパンデミックの影響で伸び、一時ECの売上の割合が約15%まで上昇したが、2021年は13%の推移を保っている状態だ。北米で注目されているShopifyを軸としたマーケティングトレンドについて、LA在住マーケターであるプリンシプルのKris Irizawa氏に話を聞いた。

 

ー北米デジタルマーケティングのトレンドはどのように変化しているのでしょうか

多くの企業がオンラインでのビジネス拡大に投資している中、Eコマースの革新と新しいマーケティングのトレンドが生まれることが期待されています。

 

 

こういった状況でShopifyは、Eコマースストアの活性化に重要な役割を果たしました。Shopifyのようなプラットフォームによってブランドは簡単にDTC(Direct to Consumer)で商品を売れるようになり、新たな知見が得られるようにもなりました。

 

ShopifyやDTCを中心とした事象から、今後注目するべきマーケティングトレンドを考察できます。

 

米国EC市場が好調

ー米国のEC市場の状況について教えてください

米国Eコマース市場は年々拡大の一途を辿っています。

 

 

2020年の米国のオンライン小売における売上高(現物商品)は4,316.5億ドルに達しており、2024年には5,634億ドルに迫ると予測されています。

また小売に占めるECの割合も増え、2020年第3四半期にはEC売上シェアは約14%に達しました。

 

 

Amazon、eBayに次ぐオンライン小売業者Shopify

ーShopifyは日本でも注目が高まっています。世界的にはどのくらいの規模のプラットフォームなのでしょうか

Shopifyはカナダで2004年に創業した、ECサイト開発・運営を助けるプラットフォームです。いまでは175か国170万ショップ以上に導入されるまで成長を遂げており、米国ではAmazon、eBayに次ぐ第3位のオンライン小売業者となりました。

 

※ Shopify Plusを利用する事業者(マーチャント)は世界で1万以上
2020年の流通総額(GMV)は約12兆円
世界で4億5700万人近くが商品を購入(2019年比52%増)
事業者(マーチャント)によるShopifyでの総売上高は約30兆円

参考:Huge Shopify Statistics in 2021: Facts, Market Share & More

 

Shopifyを導入している大手企業 (海外)

日本市場にも進出

ーShopifyの日本国内での成長性を教えてください

Shopifyは日本市場にも進出しています。日本国内の新規加盟店には、例えば「BAKE The Online」「益子WEB陶器市」「オリオンビール」「タイガー魔法瓶」「タンスのゲン本店」などがあります。

 

2020年の日本市場における流通総額(GMV)は、2019年比323%増を達成し、その成長率は他国に比べても高いと言われています。また新規出店数の伸び率は前年比228%増で、こちらも他のマーケットの中でも上位に位置しています。

参考:2020年のShopify 成長率を発表 |PR TIMES

 

3つの最新マーケティングトレンド

ーShopifyの登場により、どのようなマーケティングのトレンドが見えてきましたか

 

トレンド1:Shopify Capital・新ビジネスローン事業

Shopifyはここ5年間で金融サービス「Shopify Capital」を成長させており、現在では20億ドル(約2,160億円)の資金をビジネスオーナーに提供していると発表しました。

 

この金融サービスの特徴は、「Shopifyでビジネスをしているビジネスオーナーの売上データやウェブサイトのトラフィックデータから、機械学習により融資判断(資金提供すれば更に売上を伸ばすことが可能か)をする」というものです。

 

Shopifyが予測に利用するデータ

  • 当該ストアの(オンライン/オフライン)売上データ
  • 当該ストア(オンライン)のパフォーマンス
  • 7,000万のデータポイントからみた、当該ストア商品の売れ行きトレンド(他のサイトを含む)

このサービスを可能にしているのが融資判断の高い精度です。現状の機械学習モデルでは、ビジネスオーナーの最低売上金額を90%もの精度で予測できると言われています。

参考:How Shopify aims to level the playing field with its machine learning-driven model of lending | TechCrunch

 

トレンド2:ゼロパーティーデータ

ーポストCookieで注目されていることはありますか

ゼロパーティデータ(ZPD)とは、消費者が積極的かつ意図的に共有している自身のデータのことです。例えば、プリファレンス、購入意図、個人的なコンテクスト、ブランドにどのように認識してもらいたいかなどのデータが含まれます。

 

ブラウザがサードパーティのCookieを廃止し、AppleがIDFA(広告用ID)の共有をユーザーが拒否できるようにしたことから、このZPDに注目が集まっています。

 

ZPDを獲得する施策には、投票、クイズ、ウィジェット、ニュースレター登録などがあります。

 

 

しかしZPDの本質は、顧客との信頼関係にあります。なぜなら、顧客から信用されてはじめて意味のあるデータを獲得できるためです。そのためB2Cマーケターたちは「顧客との信頼性」「共感してもらえるか」にも気を配っています。

 

トレンド3:データ基盤への投資が増加

ーこれからはさらにデータをうまく活用することが求められそうですね

ウェブマーケティングまわりのデータ基盤と管理への投資が伸びています。マーケターの最優先課題トップ3(2021年)では、新規顧客獲得数の増加(65%)の次にデータ管理の改善(44%)が位置しています。

 

 

▼AI、ゼロパーティデータへの投資も

8割以上のマーケターは、2021年のマーケティング戦略の一環として、人工知能(AI)を取り入れる可能性があると答えました。84%が現在、社内でAI機能を開発しているか、開発を計画しています。

 

また78%のマーケターは2021年、メッセージング体験をよりパーソナライズするために、ゼロパーティデータを利用することを計画しています。

※US&UKでの500名のB2Cマーケター調査

 

AIなどへの投資への関心がコロナ禍にあり、2021年8月のCMOサーベイでわかった事はマーケティングの最適化・自動化において、人工知能や機械学習の活用は11%弱に留まっていることがわかりました。今後2年間、マーケティングへのAI活用は引き続き注目するエリアです。

 

プリンシプルアメリカの取り組み

ー貴社でのShopifyに関する事例があれば教えてください

米国子会社のEboost社は、Shopifyを利用するクライアントの広告案件において、GTMやデータフィードを活用してShopify、広告タグ(FB, Google Ads) をオーディットして、設定しています。多くのクライアントが正しくデータ取得する為のマーケティングツールを適切に利用していないのが現状です。

 

広告のパフォーマンスにだけ注視せず、ウェブサイトから得る行動データやSEOに関連するデータなども分析しており、全体的なKPIやパフォーマンスをクライアントに共有し、クライアントが付加価値を得るようキャンペーンを管理しています。

 

▼Kris Irizawa氏によるマーケティングトレンドのまとめ

  • パンデミック下でもEコマースは成長を続けており、 多くの企業がShopifyでDTCサイトを立ち上げている。
  • Shopifyの新ビジネスローン事業「Shopify Capital」では小売業者のデータ(行動、顧客、売上、商品など)を融資判断に活用。AIや機械学習でプラットフォームがどんどん賢くなっているため、企業に求められるCX改善のラインも上がってくると思われる。
  • ゼロパーティーデータへの注目が加速。サードパーティーデータクッキーなどの廃止により、今後ユーザ情報を得るためには顧客との信頼関係がキーになる。
  • ウェブマーケティング回りのデータ基盤と管理への投資が伸びている。ShopifyなどでEC事業を立ち上げた後、さらに発展させる上ではデータ活用が最重要。

 

プリンシプルは米国にも拠点を持っており、現地のトレンドに合わせた充実したコンサルティング体制が整えられている。今後も現地マーケター視点でのトレンド情報に注目したい。

 

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。