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パンデミック後のテレビはどうなるのか:カール・トーマス・ペターソン氏に聞く

 

北欧の放送大手、NENTグループ(NENT Group)のデジタルセールスマネージャーを退任するカール・トーマス・ペターソン氏がExchangeWireの独占インタビューに応じ、パンデミックがテレビに与えた影響や、リニア放送(従来型TV)のパブリッシャーが、コンテンツを継続して収益化するため、どう適応していくべきか、パブリッシャーの収益モデルは今後どうなるか、などについて語ってくれた。

 

パンデミックは、ストリーミングをはじめとする他のチャネルと比較して、テレビにどのような影響を与えたのでしょうか?

 

今回のパンデミックは、ストリーミングとリニアTVの両方に活況をもたらしたと考えています。ロックダウン中、多くの人々はストリーミングプラットフォームのコンテンツを次々と試し、その合間にリニアTVを視聴していたのではないでしょうか。パンデミックによって、競争が激化したストリーミング市場では、新サービスの導入が促進され、いくつかの大手が計画より早く市場に参入することになりました。結局のところ、パンデミック中はエンターテインメント全般が活況を呈していました。なにしろ、私たちは皆ソファーでくつろぎながら、一気見するくらいしかやることがなかったのですから。

 

リニアTVのパブリッシャーは、どのような方法でコンテンツを収益化しようとしているのでしょうか?

 

NENTグループのデジタルセールスマネージャーを退任するカール・トーマス・ペターソン氏

この質問に答えるには、「チャンネル・ドリフト」または「ネットワーク・ディケイ」と呼ばれる現象について簡単に説明する必要があります。これは、放送局が特定のセグメントやターゲットの視聴を最大化するために、コンテンツをシフトしていくことを意味します。

 

MTVはその好例で、10年かけてコンテンツをミュージックビデオからリアリティ番組に移行しました。パンデミック中の北欧市場でも、番組収益を最大化しようとするこのような動きが目につきました。また、多くのパブリッシャーにとって、プラットフォームの枠を越えて視聴者の注目を集め、維持するためには、サブスクリプションとリニア放送のバランスを取ることが非常に重要でした。

 

それを実現するための鍵となったのは、どのようなイノベーションやテクノロジーだったのでしょうか?

 

世界的に見ると、パラマウント(Paramount)のプルートTV(Pluto TV)が、一つの好例だと思います。プルートTVは、全く新しい視聴無料のAVODサービスとオンデマンドサービスを構築しました。このプラットフォームが登場したことで、放送局は、デジタルで「リニア」放送を行うことができるようになり、コンテンツも簡単にアップロードできるようになりました。これによって、従来放送と同様に、番組の合間(ブレークタイム)を収益源(CM枠)に活用できることが示されました。

 

パブリッシャーの収益モデルの変化は、放送局と広告パートナーの関係にどのような影響を及ぼしていますか?

 

放送局がサブスクリプションサービスに注力するほど、広告主が得られるリーチは小さくなります。リニアTVはパンデミックを無事に乗り切りましたが、サブスクリプションサービスは、その間にも指数関数的な成長を遂げました。視聴者を満足させる必要性が高いほど、サブスクリプションサービスはより多くのコンテンツを必要とします。広告主にとっては、従来のメディアバイイングだけでは十分な数の潜在的オーディエンスにリーチできない可能性が高くなるのです。これについては、今後も前途多難です。

 

この新しい収益モデルにとって、ファーストパーティデータはどれくらい重要ですか? またその結果、プライバシーにどのような影響が生じていますか? または、どのような影響が生じる可能性があると思いますか?

 

EU一般データ保護規則(GDPR)の規制によって、少なくとも欧州では、テレビのプライバシーは十分に対処されていると思います。テレビ視聴者をターゲットにしたい場合は、必然的にプレミアムメディアの購入となるため、昨年と同様、ファーストパーティデータが今後も重要です。しかしここ数年、データサービスに革命をもたらすような新製品は出ていません。しかし、状況は変わってくると思います。

 

2022年末、さらにはそれ以降、パブリッシャーの収益モデルは、どのようになるでしょうか?

 

パブリッシャーは所有するコンテンツの数が多いほど、より多くのオーディエンスを引きつけられるようになるでしょう。これから2025年まで、サブスクリプションと無料視聴のバランスは、オーディエンスをペイウォールに囲い込む方向にさらに傾くと思います。視聴者や読者を引きつける鍵はスポーツだと言い続けてきましたが、それは今も同じです。スポーツとそれを放映する権利は、これから価格が高騰するでしょう。多くの新しいベンチャーがこれらの放映権に入札し、その権利から利益を得るでしょう。スポーツが、一般家庭がどのプラットフォームに料金を払うかを判断する際の鍵になるからです。2030年までには、10~15の主要なサブスクリプションパブリッシャーが、全ての視聴コンテンツを世界規模でコントロールするようになると予想しています。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。