×

CTVは、テレビのデータドリブンな世界観を支配する

 

現在テレビは、視聴者にかつてないほど多くのコンテンツを提供している。スケジュールに沿ってコンテンツを放送する「リニア」TVと共に、この10年間でCTV(コネクテッドTV)が大きく台頭してきたからだ。Netflix、Hulu、Disney+などのCTVストリーミングプラットフォームは、本来のコンテンツ配信の役割を超えて、従来のテレビスタジオを凌ぐ制作能力と資金力を梃子に、今やコンテンツプロデューサーとして繫栄している。

 

だが、急速な発展にもかかわらず、順風満帆というわけではない。ロックダウン中、ストリーミングサービスは一種のブームになった。しかし、人々がパンデミック前の行動に戻ったことや欧州全域で生活費が高騰していることは、ストリーミングプラットフォームに間違いなく打撃を与えた。Netflixは過去10年間で初めて契約者数が減少し、最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングス氏は同社史上で初めて広告付きコンテンツに目を向けた。とは言え、CTVはアドテク業界で最もエキサイティングな分野の一つであり、パンデミックはただ、その成長を少し加速させたに過ぎない。

 

CTVの新時代

ExchangeWireの最高戦略責任者(CSO)、キアラン・オカーンは「CTVは、データドリブンなテレビのナラティブを支配し、業界イノベーションの大きな原動力であり続け、データドリブンテレビの主要なセグメントとなるだろう。CTVは、米国以外の国々でも重要な媒体ではあるが、その市場構造は米国より複雑だ。そうした国では、まずは断片化したテレビの在庫の拡大(1000億ドル超の機会)に取り組む必要がある」と断言する。

 

オカーンは続ける。「バイヤーは、データドリブンなテレビの購入に注目している。そのため、ウォールドガーデン内のインベントリとオープンマーケット上のCTVおよびリニアのインベントリを早期に集約する必要がある。ターゲティングのイノベーションはまだ初期段階だ。業界は未だIPターゲティングに大きく依存しているが、多くの場合、データはウォールドガーデン内でサイロ化されている。こうした状況はこれからの1年、プライバシーの観点からも厳しい指摘を受けることになるだろう。最終的には、コンテクスチュアルがテレビのターゲティングの主要技術になるはずだ」

 

「測定も大きな課問だ。グルーバル市場では、分断された測定フレームワークの寄せ集めが使い続けられている。グローバル規模での統一された測定を実現するためには、アテンション(注目率)や位置把握などの新しい技術ソリューションの登場が待ち望まれる」

 

CTVはリニアTVを終わらせるのか?

マターカインドで、英国およびアイルランド担当のマネージングディレクターを務めるセウン・オデネイェ氏によれば、CTVの成長は「アドレサビリティとその精度」に機会をもたらすという。英国の平均的な消費者は2023年までに12のコネクテッドデバイスを持つようになるという、イーマーケターの予測は、私たちが「ますますデジタル化する時代」を生きていることを示していると、アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパの講演で、オデネイェ氏は指摘した。さらに、YouTubeが17周年を迎えたということは、間もなく「オンデマンドTVしか知らない」英国人世代がアドテク業界の一員になるということだ。「デマンドを優先し、リニアは後回しになるだろう」とオデネイェ氏は予言した。

 

マインドシェアのデジタルビジネス担当ディレクターであるジェニー・スターランド氏も、16~34歳をテレビ視聴者の「最重要層」とした上で、この世代を中心にリニアTV離れが起きていると指摘する。メディアエージェンシーにとって、こうした傾向はこの重要な視聴者層にリーチする際の課題であり、CTVは「彼らの前に再び現れるための足掛かりになるだろう」と述べている。

 

しかし、シンクボックスのCEO、リンジー・クレイ氏は、リニアTVがCTVの補足的な存在になるという考えを真っ向から否定している。クレイ氏は「The Future of TV: Will You Survive or Thrive?(テレビの未来:あなたは生き残るか、それとも繁栄するか?)」にパネリストとして参加し、次のように語った。「CTVの最大手は放送局だ。なぜなら、放送局のVODこそがCTVだからだ。それがCTVの現実であり、テレビが進めている方向だ。私は『古くさい』過去のテレビとCTVの『エキサイティングな新しい未来』という構図を完全に否定する」

 

Roku(ロク)の国際広告マーケティングおよびインサイト担当ディレクターを務めるローラ・チャイビ氏は、クレイ氏に賛同した上で、リニアTVとCTVのあいだには「強大な緊張関係」が存在すると強調し、「放送局の理想はすべての人のための番組で、(CTVは)例外なく、パーソナライズを試みている。つまり、一対多と一対一という緊張関係があり、2つの世界がぶつかり合っている」と述べている。メディアプランナーがこの新しい環境で成功するには、「デジタルの長所とテレビの大衆へのリーチ」を組み合わせる必要があるとチャイビ氏は説明し、CTVが広告ツールとして指数関数的な成長を続けるには、根本的にリニアTVが必要だと示唆した。広告主にとっての課題は、リニアTVとCTVの成果の測定が「対極」にあることだ。メディアプランナーが両者をより良く理解して活用するには、この2つのメディアが互いに近づく必要があるだろう。

 

 

CTVの次なる展開は?業界関係者の見解

これからの1年間、CTVは間違いなく、注目メディアの一つになるだろう。そこで、私たちは業界の最前線で活躍する人々に、これからのテレビの可能性について話を聞いた:

 

アテンションの測定が不可欠

CTVの人気はパンデミック中に急上昇しました。私たちの調査では、パンデミック中、全世界の消費者の半数近く(44%)がCTVデバイスの利用を増やしており、この傾向は今も弱まっていません。

 

ブランドがCTVに広告を出す機会は増えており、他社より目立ち、消費者に本物の体験をもたらすことが、かつてないほど重要になっています。

 

 

同時に、かつてないほど難しくもなっています。プライバシー意識の高いこの世界で、必要なオーディエンスの注目を集め、広告を通して意味あるブランド体験を提供する、将来を見据えた方法論を再考する必要があります。結果として、アテンションの測定が不可欠になるでしょう。ますは、ビューアビリティをその指標として利用することから始め、広告露出とエンゲージメントの関係を理解することに移行し、最終的には、広告の影響や広告が個人に及ぼす印象のさまざま要素に目を向ける必要があります。広告の新しい通貨をアテンションとすることによって、初めてCTVを含むすべての環境で、有意義かつ有益なやり方で、キャンペーンを計画し、購入し、最適化できようになるでしょう。

 

ダブルベリファイ EMEA担当SVP兼マネージングディレクター、ニック・リード氏

 

 

CTVはいずれブランドの主要な検討事項になる

Netflixが2022年中に広告付きコンテンツの提供を開始すると発表したことで、テレビ広告業界はますますヒートアップしています。

 

テレビとデジタルの広告購入を、両方検討しているマーケティングチームにとって、デジタルで何が測定できるかは、CTVへの期待に大きな影響を与えるでしょう。

 

 

 

どの世帯にリーチしているか(そしてリーチしている世帯の数)を証明し、広告効果を立証することは、今後の重要な課題です。また、アップフロントとニューフロントはいずれ統合される運命にあるため、テレビ広告の購入方法も進化するでしょう。CTVはいずれブランドの主要な検討事項になります。リニアTVで放映されるスポット広告は、インターネット配信番組のためにプランニングされた広告のサブセットとなり、その逆になることはないでしょう。

 

VDX.tv 製品管理担当VP兼データ保護責任者、ティム・スリース氏

 

 

テレビとCTVの区別はまだ必要だが、それほど長く必要とされることはないだろう

CTVの広告費は2021年、57%増の152億ドル(約2兆480億円)に達しました。2022年にはさらに39%増加し、212億ドル(約2兆8570億円)になると予想されています。IABによれば、動画バイヤーの4分の3(76%)がメディアプランニングの予算においてCTVを「購入すべきもの」と位置付けています。

CTVがこれほど関心を集めている理由は2つあります。ひとつ目は、SVOD疲れや生活費の上昇に後押しされ、テレビ視聴者が積極的に無料または低料金の広告付きストリーミングサービスを探しているということです。

 

ふたつ目は、広告主が、長年使ってきたデジタルターゲティングのための各種パラメーターを、ようやく大画面テレビ広告の購入に適用できるようになったということです。広告バイヤーは、視聴者が利用時間を増やしているストリーミング環境、つまり、FASTやAVODサービスでターゲティングできるようになっただけでなく、テレビ視聴者をより高い精度でターゲティングできるようになったのです。

 

視聴者は、リニアTVをBVOD、AVOD、FASTサービスと区別していませんが、広告業界では、まだ区別が必要です。なぜでしょう?それは、CTVでのターゲティングや測定、アトリビューションの方法が、従来のテレビとは大きく異なるためです。数年後には、CTVから「C」を取り除けると私は考えています。しかし、現在は、テレビ広告購入、プログラマティックTV広告購入、さらにはターゲティングに用いられている技術やデータが、まだこの区別を必要としています。

 

パブリカ CTV戦略担当VP、ポール・ガビンズ氏

 

 

断片化というCTVの特性は、広告主に新たな課題をもたらす

テレビを取り巻く状況は、かつてないほど急速に変化しています。大手のコンテンツ供給会社にとって、SVODは最初の一歩でした。しかし、インフレによる生活費の上昇やCTV業界の競争の激化をきっかけに、Netflix、Disney+といった初期の勝者は極めて高い解約率に直面し、成長を維持するのに苦労しています。

 

そして突然、広告を収入源とするテレビは、それほど悪いものとはみなされなくなりました。そして、初めてテレビ出稿するブランドにとっては、大きなチャンスとなりました。

 

この業界では、広告主は他社とは何か違うことをしなければなりません。リビングルームのテレビは今や、完全に接続されたデジタルデバイスであり、クリエイティブは以前よりはるかにイマジネーション豊かになり、インタラクティブになりました。さらに、テレビの広告主が利用できるデータセットも、以前とは比べものにならないほど充実してきています。オーディエンスだけでなくコンテクストによる指標も、今後大きな役割を果たす可能性があるでしょう。

 

しかし、コンテンツの断片化(分散化)というCTVの特性は、特にアドレサビリティと測定に関して新たな課題をもたらします。当然ながら、Cookieもクリックも存在しないため、チャネルを横断して特定オーディエンスをターゲティングするための、属性、関心、行動などのデータセットを作成することが非常に困難です。実のところ、CTVは「従来型」のテレビでも、「従来型」のデジタルでもないのです。そのため、この新しいメディアに本当の意味で命を吹き込むためには、さまざまなアプローチを考える必要があるのです。

 

イールドモ インターナショナルゼネラルマネージャー、ジョン・ティグ氏

ABOUT ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS

ExchangeWire.com / Supported by CCI

本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。