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ATSロンドン2021:アドテク業界の未来を再構築しよう

グーグルは3月、サードパーティのアドテクに別れを告げた。いつも通りの曖昧な投稿で、同社は今後、自社ブラウザとアドテクスタックで、クロスサイト識別子を使用しないことを全世界に向けて明らかにした。すべてはプライバシーのためということだ。

率直に言えば、グーグルの投稿は答えよりも疑問が多く残るものだった。そして、このニュースは業界を騒然とさせた。

 

 

我々の業界の大部分は混乱状態にあるが、ひとつだけ確かなことがある。グーグルがサードパーティの識別子やCookieによるトラッキングと測定に幕を下ろそうとしていることだ。

我々がどれだけ本気で維持しようと努めても、古いモデルは終わりを告げた。プラットフォームも、ブラウザベンダーも、そしてW3Cも、アドテク業界の願いを聞き入れることはない。本当に新しい時代を迎えたわけだ。

業界にとってはまさに「進化か死か」の瞬間だ。

 

すべてを壊してやり直そう

今、デジタルマーケティングは岐路に立たされている。サードパーティCookieの廃止、識別子の使用制限、厳格なプライバシー保護法の成立により、アドテク業界は消費者に対してマーケティングする方法を見直さざるを得なくなっている。

これまでのような測定やターゲティングのやり方はもはや通用しない。マーケターはメディアの断片化に直面している。ウォールドガーデン(特にグーグル)はプライバシーという便利な盾をビジネス強化に転換し、生き残りを確実にしようとしている。ファーストパーティデータが「キング」であり、「クイーン」であり、それだけがすべてである世界で、グーグル、フェイスブック、アマゾンは君臨し続けることができる。

だからこそ今、自問しなければならない。これは独立系アドテクやオープンなインターネットの終わりを意味するのだろうか?

答えは断固としてノーだ。ExchangeWireはむしろこれを再生と捉えている。

グーグルがサードパーティのアドテクとオープンインターネットを放棄したことで、何も描かれていない巨大なキャンバスが残されようとしている。消費者を測定、ターゲティング、マーケティングする新たな方法を描くためのキャンバスだ。

これからの10年は我々の業界にとって、マーケターとパブリッシャーのためにプライバシーファーストのソリューションを構築し、それをデジタルメディアとコマースの隅々にまで行き渡らせる最大のチャンスだ。

 

アドテクとデジタルマーケティングはグーグルよりはるかに大きい

グーグルが私たちを圧倒するという終末論に取りつかれるのは簡単だ。

グーグルが21世紀初頭にデジタル広告市場に参入して以来、そのような振る舞いを一度もしたことがないと言っているわけではない。グーグルは買収(ダブルクリック、ユーチューブ、アドメルド、インバイト・メディア)のたびに、検索、動画、ディスプレイ広告の完全支配に一歩ずつ近づいている。

しかし、グーグルに敵意を抱くべきではない。グーグルがアドテク業界を犠牲にすると決断したのは、おそらくそうするしかなかったためだろう。「プライバシー」の課題と利益の減少が行動の動機になったのは明らかだ。グーグルのDNAには自己利益の保全が組み込まれている。

もしこれが5年前だったら、筆者はグーグルの動きについてもっと懸念していただろう。しかし、世界は前に進み続けており、2021年のメディア環境はかつてないほど複雑化している。

確かにグーグルは検索、ディスプレイ広告、オンライン動画市場を手中にしている。ChromeとAndroidを保有し、ファーストパーティデータも揃っている。自社が所有、運営する利益率100%のアドテクとメディアにすべての需要と支出を注ぎ込むことで、将来の成長を確実なものにしようとしている。

もしあなたのビジネスがグーグルのエコシステムに依存しているのであれば困った状況だ。もしFLoC(コホートの連合学習)がパフォーマンス広告を救うと思っているのであれば、転職を考えた方がいいかもしれない。グーグルの善意に頼るというのは、デジタル業界ではあまり利口なビジネスモデルとは言えない。

朗報は、1兆ドル規模を超えるデジタルマーケティング市場においては、グーグルも決して万能ではないということだ。

グーグルにも弱い分野やまだ存在しない分野がある。

 

・グーグルも我々と同様、アップルの環境においては無力だ。

・ファーストパーティプラットフォームやパブリッシャーが台頭し、そこではグーグルが閉め出されている(パブリッシャーにとっては素晴らしい状況だ)。

・グーグルはユーチューブを所有しているが、CTVコンテンツの企業やプラットフォームの多くは、グーグルとやや距離を置いている。

・DOOH(デジタル屋外広告)は数十億ドルのチャンスを秘めているが、グーグルはまだ小規模な統合しか行っていない。

・音声、ゲーム、VR(仮想現実)などの新興チャネルはまだすべての人に広く開かれている。

・そして、忘れてはいけないのが、グーグルが参入に苦労している1兆ドル規模のコマースメディア市場だ。

 

アップルのプライバシー改革

アップルはプライバシーを重要なマーケティング戦略と位置づけている。サードパーティベンダーがiOSやSafariでユーザーの行動をターゲティングや測定できないようにすることで、同社CEOのティム・クック氏は皆の「人権」を守る役割を買って出た。プライバシーに関するアップルの新しい合言葉は明確だ。もしあなたがアップル製品を購入するのであれば、アップルはあなたの安全を守りますというものだ。

これは偽善的な言葉だ──特に、数十億ドル規模の新たな収入源を開拓しようとしている企業の言葉としては。サードパーティによる測定とターゲティングを排除したアップルが、アプリストア広告やプライバシー重視のターゲティング広告を推し進めようとすることは間違いないだろう。

アップルはプライバシーの保護に精力的に取り組んでいる。ATT(AppTrackingTransparency)の導入によって、GDPR(EU一般データ保護規則)の要件を軽やかに回避しようとしている。これまでにわかっている限りでは、アップルのデバイスのあらゆる広告トラッキングを対象にしたハードオプトアウトは存在しない。また、アップル独自のトラッキングソリューションであるSKAdNetworkにも未解明の疑問がいくつかある。

さまざまな業界団体から嘆願や怒りの声が届いているにもかかわらず、アップルは方針を変更するつもりがないようだ。アップルは独自のルールをつくろうとしており、それがアップルの特権だ。

これも2021年に我々が取り組むべき課題のひとつだ。しかし、ExchangeWireはやはり前向きに捉えている。

現在のアップルは革新的ではなく、過去に発表した製品の栄光の「賃料」を回収しているだけだ。デジタルマーケターや自社のプラットフォームで動くアプリのために、新たな広告ソリューションを開発しているとは思えない──これも業界全体にとっては巨大なチャンスといえる。

 

マーケター、パブリッシャーへの影響は?

筆者はパブリッシャーについて、これほど強気になったことはない。パブリッシャーは目の前のチャンスに気付いたのだ。マーケターにCookie廃止後の購買機会を提供するため、ファーストパーティデータを収集する戦略を加速させているように見える。

多くのパブリッシャーが成長を促進するため、サブスクリプションと、広告やコマースを融合したビジネスモデルを構築している。リーチ(Reach)とフューチャー(Future)はその典型だ。激しい非難を浴びせられていたパブリッシャーモデルが特別な10年を迎えようとしている。

1 to 1マーケティングの重要なインフラを失ったマーケターは、今回のグーグルの動きを災難と考えるかもしれない。

しかし本当は、ウォールドガーデンへの依存から脱却し、あらゆるチャネルのマーケティング戦略とアトリビューションモデルを再構築する絶好のチャンスと捉えるべきだ。

コンテクスチュアル、クリーンルームといった分野で起きている技術革新は、マーケターがデジタル支出の配分を見直すきっかけとなり、より賢明な購買と、欠陥のある測定モデル(グーグルとフェイスブックでみられた)からの脱却につながると筆者は考えている。

 

業界の未来を再構築

グーグル後の未来を見据えた素晴らしい企業がすでに現れている。筆者は特に、マーケターやパブリッシャーによるデジタルマーケティングの見直しを支援する、プライバシーファーストの測定企業やターゲティング企業に期待している。

我々は2021年のATSロンドンで、アドテクとデジタルマーケティング分野における今後10年の可能性を示すつもりだ。

グーグル、フェイスブック、アップル、アマゾンのような「レンティア・キャピタリスト」モデルの、周辺でまたはそれらを介してイノベーションを起こしているパブリッシャーやマーケター、サービスレイヤーベンダーやテクノロジー企業を紹介する予定だ。

今はまだ負けを認めるべき時ではないし、鳥の群れのような名前が付いたウォールドガーデンの指標であるFLoC(鳥の群れを意味する「flock」と発音が同じ)に従属すべき時でもない。

我々全員がウォールドガーデンへの依存から脱却し、新たな段階の業界に参加するときだ。

11月のATSロンドンでお会いできることを楽しみにしている。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにサイバー・コミュニケーションズが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)
日本のインターネット広告誕生の1996年に設立。以来、電通グループのデジタル広告関連事業者として、デジタルマーケティング全般のサービスを展開、数百の媒体社・広告会社との取引と共に、業界を牽引し、最先端のマーケティングサービスを通じて、クライアントと ユーザーのコミュニケーションを実現している。