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変化の時代のデジタル広告戦略:短期的な解決策に惑わされるな

ホーム(HOME)のデジタルメディアアカウントディレクターで「The Wires Global 2021」の審査員を務めるウィリアム・ヒューズ氏が、ExchangeWireに寄稿した本記事で戦略的マーケティングの観点からデータプライバシーについて語ってくれた。

 

「雨が降り、洪水が起き、風が吹いて、あの家を叩いた。だが、家は岩の上に建っていたので、倒れなかった。この私の言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人のようになる」 – マタイによる福音書 7章24~27節

 

筆者は、デジタルメディアプランナーとして10年以上働いてきた。これまでもテクノロジーの変化に合わせて計画を変えたり、規制の変更に合わせて調整を行ったりしてきたが、この3、4年はやや状況が異なっている。

デジタルマーケターにとって、私たちの家は常に岩の上に建てられてきたと言える。デジタルチャネルのパフォーマンスを追跡し、評価する能力は、決して完璧ではなかったが、少なくとも一貫していた。戦略を正当化し、将来の取り組みを導くためには、一貫した指標が必要だった。法律やテクノロジーの変化が、測定とアトリビューションに与える影響を解説した記事はすぐに見つかるので、ここでは繰り返さない。そうした記事の大半は、現状を維持するための「ソリューション構築」について述べているが、この問題の倫理面を論じたものはほとんどない。

 

先に触れたように、筆者のバックグラウンドはパフォーマンスマーケティングだ。データを愛し、新しいターゲティング戦術を展開し、パフォーマンスを向上させる新たな方法を見つけることに喜びを感じてきた。長年、それが生活の糧だったのだが、もはやそのような偏った視点だけで活動することは許されない。

筆者はホームにおいて、他分野の専門マーケターたちに囲まれ、共にカスタマージャーニー全体の最適化に取り組んでいる。そのため、自ら立てた獲得戦術が、ブランドエクイティや生涯価値の向上などに与える影響も考慮する必要がある。結果として、当社のアプローチは純粋なパフォーマンスエージェンシーとは異なる、というのが筆者の考えだ。

今回は、変化と不確実性に満ちたこの新しい時代に、私たちが戦略を練るために用いている「岩盤」をいくつか紹介しよう。

 

プライバシーリスクを評価し、メディアプランをヘッジする

ホーム デジタルメディアアカウントディレクター、ウィリアム・ヒューズ氏

ブランドは、まず自社のメディア戦略のどこにリスクがあるのかを把握する必要がある。これは、法律上の懸念やブランド価値との全体的な整合性など、企業の全体的なリスク許容度に沿って計画を実行するために不可欠な工程だ。

リスクを特定すると同時に、データを多用するメディア戦略を、コンテキストのような「安全地帯」の戦術でヘッジすることも重要になるだろう。情勢が変化し、サードパーティの豊富なデータソースがコンプライアンス違反とみなされたり、データソースを支えるテクノロジーが識別子の削除によって機能しなくなったりした場合、パフォーマンスの新たなソースを探すのに奔走することになるからだ。

今から動いて、リスクのある場所を把握し、より安全なパフォーマンスのソースを探すことが、将来のキャンペーンを安定させることにつながる。リスクを把握しやすくするために、ホームでは比率の上限を設定し、リスクの高い顧客データを利用する戦術への依存度が50%を超えると、警告が出るようにしている。

 

出稿する広告の注目度と質を精査する

ホームで私たちが特に感銘を受けてきたのは、カレン・ネルソン=フィールド氏と、オーディエンス測定会社アンプリファイド・インテリジェンス(Amplified Intelligence)のチームによる取り組みだ。彼らのインサイトの結果、私たちはメディアチャネルとプランを4つの「R」のフレームワークで評価するようになった。

 

リーチ(reach):これは分かりやすいだろう。このプランで評価するのは、ターゲットオーディエンスのうち何人が広告を目にするかということだ。

関連性(relevance):これはコンテキストの代替策だ。自社のキャンペーンは、適切な場所で適切な時間に表示されているだろうか?

反響(resonance):ここで評価するのはインプレッションの質だ。このプランは、関心の高いメディアと低いメディアのどちらに表示されるのか。競合他社の広告が乱立していないか。プレイスメントのビューアビリティ(可視性)はどうか?

リアクション(reaction):リアクションでは、行動を促す能力に基づいてチャネルとプランを評価する。デジタルチャネルでは、購入を促すためにユーザーをサイトに誘導できることが普通だが、オフラインチャネルでは、期待されるアクションが遅れて実行されることや、出稿したチャネルと異なるデバイスから実行されることがある。

 

このフレームワークを用いることで、ターゲットオーディエンスの個別のインサイトに依存するのではなく、広告が表示される環境を活用して効果を高める広告戦略を展開できるようになる。

 

適切なテクノロジーの吟味と選択

アドテクの世界は新たなスタートアップの登場で活気づき、そうした新興テクノロジーの一部が広告に活用されるのもそれほど先の話ではないだろう。しかし、ここでも多くの厄介な問題が待ち受けている。

彼らのソリューションの多くは、技術的な問題の解決にばかり注力し、法的な影響や倫理的な影響には対処していない。確かに、グローバルなソリューションであれば、必ずしもEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠する必要はないが、筆者が思うにGDPRはグローバルなデータ規制の未来を先んじて見せてくれる水晶玉のようなものだ。米国と中国もこの道をたどっており、どこでもこのような未来が来るのはもはや時間の問題でしかない。

したがって、そうした新興テクノロジーをよく吟味し、賢く選択することが重要になる。誇大な宣伝を鵜呑みにせず、データ収集プロセスをプロバイダーによく確認してほしい。筆者の見解では、ユニファイドID(UID)や新しいアトリビューション手法を目にするピッチの5つのうち4つには赤信号が灯り、英国やEU加盟国では安心して使えるレベルではない。

 

測定の新手法をテストする

私たちは効果を重視するあまり、「マーケティング・ミックス・モデリング」や「計量経済学」に傾倒してきた。そして、そのような短期的なパフォーマンス測定のニーズは依然として非常に高い。

先に述べたように、当社はアトリビューションソリューションの発展を追い続けているが、そうしたソリューションは常に非常に大きなリスクを伴う。そこで私たちは、特にデジタルでのパフォーマンス測定について、従来と異なる考え方をするようになった。

 

実際の例を紹介しよう。iOS 14.5およびATT(App Tracking Transparency)フレームワークの導入を境に、私たちが複数のチャネルで以前から展開していたいくつかのアプリキャンペーンで、パフォーマンスの大幅な低下が見られた(Apple Search Adsは別だが、今はその話は控える)。

だが、プランナーである私たちは、ユーザーの行動が一夜にして突然変わったわけではなく、広告が今も概ね適切なオーディエンスに表示されていることを認識していた。キャンペーンの「効果がなくなった」のではなく、その効果を証明できなくなったのだ。

 

そこで、業界でのキャリアを新聞広告のバイイングから始めた経験豊富なメディアチームのメンバーらに相談したところ、素晴らしいアイデアがもたらされた。それは、アップルがアプリ開発者向けに用意しているサブスクリプションオファーコードだ。

私たちは、チャネルごとに専用のオファーコードを作成し、以前と同じようにアプリキャンペーンを継続した。その結果、私たちの推測が正しかったことが確認された。ATTが導入されてから50%も膨れ上がっていたCPA(顧客獲得単価)も、個別にコードを設定するという昔ながらの測定方法で計測すると、許容範囲に戻っていたのだ。実際のCPAは、ATTによって高くなったと考えられていたCPAより、低かったのだ。

もちろん、そのオファーコードが友人と共有されたり、クーポン系コードを集めるサイトに掲載されていたりした可能性もあるが、それでも効果は出ている。この話は、測定をダイレクトレスポンスに限定して見直した一例にすぎない。ホームでは、キャンペーンの将来性を証明して今後の戦略を構築する「岩盤」を提供するために、他にも複数のテストを実施している。

 

その都度、短期的なソリューションから別の短期的ソリューションへと乗り換えて、現状維持を望もうとするのは、砂の上に家を建てようとするのと同じだ。プランナーである私たちにとっては、この新時代において、有効なデジタルメディア戦略を立案するためには、どんな激動の時期であってもパフォーマンスを支えることができる、不動の「岩盤」を掘り当てることが欠かせないのだ。

とはいえ、こうした戦術にも、テストを行う余地は残しておくべきだ。リスクを適切に回避した上で、新しいテクノロジーを慎重にテストする能力も必要だ。

デジタルメディアプランナーにとって、今は厳しい時期だ。新しく学ぶべきことも、断ち切るべき悪習もたくさんある。しかし、常に変化する世界だからこそ、私たちはこの仕事が好きなのだ。

 

「The Wires Global 2021」の応募受付は7月末で終了した。11月4日にロンドンで開催される授賞式で各賞が発表される予定だ。詳細については専用ページで確認してほしい。

ABOUT ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。