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業界を再構築する:サービスレイヤー編

基盤となっていた巨大な業界構造全体が崩壊する時、あなたならどうするだろうか。簡単に答えられる問いではなく、問題の解決は非常に難しい。しかし、我々の業界は今このような問題のさなかにある。

サードパーティCookieはこの20年以上にわたり、測定とターゲティングの通貨として利用されてきた。そして今、その通貨が通用しなくなろうとしている。

 

 

業界の人々は、次に何が来るのかをまだ理解していないのではないだろうか。ディスプレイ広告は、プライバシーの問題によって永遠に変わる。リターゲティングは終わった。そして、常に曖昧だったビュースルー指標は強制的に退場させられようとしている。

モバイルマーケティングも「Application Tracking Transparency(ATT)」の導入により、アップルの「iOS」環境全体で広告費を追跡・測定する能力が制限され、マーケティング担当者は深刻な影響を受けることになるだろう。オムニチャネルでのアトリビューション分析もますます難しくなっていく。

 

プログラマティックに関してひと言(だが重要な話)

プライバシーファーストの世界では、プログラマティック、特にモバイルウェブやデスクトップウェブで何が起きるのか。それだけでも1本の記事になるだろう。ただ、筆者は2019年の予測記事でこの問いをすでに取り上げており、そこではPIE(プログラマティックがすべて)主義という考え方を打ち出している。

すべてのメディアがなんらかの形で自動化されるのだから、プログラマティックに対してより包括的に取り組み、ニッチなディスプレイ広告だけでなく、オムニチャネルレベルで考えることが(生き残りのためには)必要だ。専門用語のより厳密な使用に立ち返るなら、「プログラマティック」ではなく「プログラマブル」について語るべき時なのかもしれない。

プログラマブルはアドテクノロジーが、インプレッションベースでのバナー広告購入という制約を超えて、さらに進化するのを後押しするだろう。今後1~2年の間には、現在のリアルタイムディスプレイ広告のインフラの多くが、不要になる可能性が高い。

もう使えなくなるCookieマッチング技術に、これ以上コストをかける理由はないからだ。

SSPとDSPが存亡の危機にあると考えるのは正しい。しかし筆者は、今はこの両者にとっても、バイサイドなりセルサイドなりをしっかり確保し、後退しつつある全能のグーグルをアドテクトップの座から引きずり下ろす絶好の機会だと考えている。

ポストCookieの新たな実行レイヤーがどのような形になるのか、はっきりしたことは誰にもわからない。ただ、いくつかアイデアはあるので、今後、紹介していきたい。

 

業界の見方を変えるべき時

アドネットワークのリターゲティングを捨て、ビジネスを救ってくれる他の軸を追い求める前に、まずはデジタルマーケティングの巨大エコシステムにおける自社の立ち位置を認識する必要がある。サードパーティCookieとIDがなくなる以上、現在の業界地図はどれも役に立たない。

メディアとプライバシーの断片化により、私はこの業界が(1)サービスレイヤー、(2)マーテク+アドテクのミドルウェア、(3)デジタルメディアとデジタルコマースという主要な3つの領域に分かれていくと考えている。概要は以下の図で示している。

もちろん、ディスプレイ広告は(1)と(2)の影響下にあるが、そのエコシステムの領域(3)は遙かに大きい。図では、この3つのレイヤーをさらに詳細に分けている。

今回はこの中から「サービスレイヤー」に着目する。

 

新しいサービスレイヤー

これからの10年、メディアとコマースのエコシステムの細分化が進むにつれ、サービスレイヤーの重要性はさらに高まるだろう。そのままでサードパーティCoolieの代わりになるものはない。さまざまなソリューションを組み合わせることが必要になる。

ウォールドガーデン、マーケットエコシステム、およびコマースプラットフォームが乱立し、混乱が拡大するなか、バイヤーには、それらすべてに対するアトリビューション戦略とターゲティング戦略が必要となる。難しさは増していく一方だ。

サービスレイヤーでマーケターが頼ることになるであろう主要セグメントを見ていこう。

 

ホールディンググループ

ホールディンググループモデルは、業界観測筋、マーケット、そして、立腹している某元CEOから絶えず攻撃されているようだ。ビジネスモデルに課題がある、巨大なウォールドガーデンによって中抜きが進んでいる、デジタル時代のクライアントの期待に応えられていないなど、問題が多すぎて解決不可能なのではとさえ言われている。しかしそれは、自己実現的予言のようなものであって、誇張されすぎているのではないだろうか。ホールディンググループは、この業界でおそらく最も柔軟性に富んだ企業体であり、必要に応じて進化していく。ホールディンググループはいまだグローバルな規模を有しており、プライバシーファーストのエコシステムのなかで、他に類を見ない視点をブランドに提供している。断片化はブランドを、再びホールディンググループへと向かわせるだろう。

 

独立系エージェンシー

デジタルコマースとデジタルメディアのエコシステムが断片化すれば、専門性を備えているところが成長するはずだ。しかし、そこには複雑な事情がある。ホールディンググループに対抗できるだけの規模を備えた独立系エージェンシーがいくつか登場するだろうが、彼らがポストCookieの世界でオムニチャネルを提供するためには多くのリソースが必要となるため、集約的にならざるをえないだろう。コマース、CTV、中国、DOOH(デジタル屋外広告)、オーディオなど、バーティカルな分野にリスクをとってもチャレンジしたほうがいい。選択肢は豊富にある。

 

クリエイティブエージェンシー

1対1のマーケティングから1対多のマーケティングに移行しつつある現在、クリエイティブの重要性はさらに高まるだろう。クリエイティブエージェンシーは今後10年で、アドテクノロジーを駆使してクライアントのクリエイティブ資産の管理と最適化にあたり、クリエイティブの才能とデータドリブンのインサイトをひとつにまとめ、それを融合させるようになるかもしれない。利益率の高いクリエイティブの制作管理ビジネスは、圧倒的な力を持つところが残ることになる(S4Capitalは、この分野に価値創造があることを証明している一例だ)。クリエイティブエージェンシーは、この好機を生かしやすい立場にある。

 

FLoCの専門企業

グーグルの広告技術「FLoC」(またはその後継技術)がChromeの匿名ウェブの通貨になる。多くのブランドやエージェンシーが、ディスプレイ広告キャンペーンの測定とターゲティングのため、FLoCを積極的に利用するようになるだろう。Safariをはじめとするほかのブラウザがこれを採用するかどうかはわからない。バイヤーが冗長なCookieマッチング技術を回避し、より効果的でプライバシーを優先した配信/最適化を行うことで、ディスプレイ広告のプログラマティック技術は実行レイヤーにおいて統合されることになるだろう。この場合、FLoCウェブの取引において、バイヤーを支援するFLoC専門企業が登場することが考えられる。どのような姿になるのかはまだわからないが、技術レイヤーよりもサービスレイヤーの機能に近いはずだ。

 

大手コンサルティング企業

デロイトやアクセンチュアなどはこれからも非主流技術を回避し、「デジタルトランスフォーメーション」の美しいパワーポイントや、(収益性が高いバックオフィスのExcel自動化スクリプトのような)ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を提供していくだろう。大手コンサルティング企業は、いずれもメディアバイイング事業には関心がないようだが、この分野はこれから重要性が高まるだろう。

 

データ、テクノロジー、インテグレーション専門コンサル企業

ブランドやホールディンググループが堅牢なアトリビューション、プラットフォーム連携、データ管理/実行機能などを構築する際、「マッドテック・ミドルウェア」と社内システムを活用、支援する、まったく新しいタイプのサービスレイヤーが登場してきている。Silverbullet、Keppler Media、Hybrid Theory、Canton、Chalice、The Programmatic Advisory、Sparrow Digitalなどがそうだ。また、監査法人もこの市場に参入してきている。競争は激しくなるだろうが、高成長が期待できるだろう。

 

アドネットワーク

アドネットワークをサービスレイヤーに含めるのを奇妙に思う人がいるかもしれない。しかし、アドネットワークには以前から中間領域の分野がある。強力なメディア管理が事業の一部であることを踏まえると、サービスレイヤーとするのは適切だろう。ホールディンググループやブランドが、これらにバイイングをアウトソースしており、このモデルは引き続き成長するだろう。繰り返しになるが、先に述べたように、バイヤーの大半はシンプルに「グーグル」指標への最適化を可能にする選択肢を求めるため、「FLoCウェブ」に過度に依存する可能性が高いだろう。また、オーディエンスの集計が困難になった世界では、バーティカル型アドネットワーク(VAN)モデルの人気も高まるだろう。英国のオゾンプロジェクト(Ozone Project)のような、 FLoC外の匿名ウェブ全体で専門性を発揮し、よりブランドフレンドリーな指標に向けて最適化する新たなアドネットワークも登場するだろう。

 

広告管理企業

ミッドテールからロングテールのパブリッシャーは、自力でサイトをマネタイズすることを諦める可能性が高く、代わりにマネタイズをこれら広告管理企業にアウトソースするようになるだろう。これらの企業は、パブリッシャー資産のマネタイズとアドテクをすべて管理し、パブリッシャーへのキャンペーンパフォーマンスと収益還元についてはFLoCに依存することになるだろう。

 

パブリッシャー

Cookieを用いたオーディエンスの構築ができなくなると、大手パプリッシャーは、独自のファーストパーティデータやCookieレスのターゲティング/測定と、独自のインベントリーを組み合わせることによって、エージェンシーおよびブランドに向けたメディアソリューションを構築することになるだろう。また、技術ベンダーと組んで中小企業向けソリューションを開発し、ウォールドガーデン外でビジネスを勝ち取るパブリッシャーも増えるだろう。

結局のところ、プライバシーの新時代への移行とは、Cookie時代特有のアドテクビジネスをバリューチェーンから取り除くことだ。その先については、「ATS London 2021」で大いに議論されることになるだろう。ATS Londonはデジタルマーケティングに関する欧州の名門カンファレンスだ。参加希望者はこちらでチケットを入手できる。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにサイバー・コミュニケーションズが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)
日本のインターネット広告誕生の1996年に設立。以来、電通グループのデジタル広告関連事業者として、デジタルマーケティング全般のサービスを展開、数百の媒体社・広告会社との取引と共に、業界を牽引し、最先端のマーケティングサービスを通じて、クライアントと ユーザーのコミュニケーションを実現している。