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リテールメディアとは何か、その広告としての可能性を考察する

リテールメディアは、デジタル広告に残さされた最大の「未開拓分野」だ。今後も広告予算のデジタルシフトが続くなら、EC小売事業者とECマーケットプレイスがその最大の受益者になるかもしれない。

 

アマゾンは依然として最強のウォールドガーデンであり、最大のリテールメディアだ。同社のeコマースサイトにおける広告売上高はすでに400億ドル(約5兆5300億円)に達している。だが中堅のECサイト、プラットフォームにも、まだまだ成長の余地はある。

 

それでは、広告費を獲得するためには何が必要なのだろうか?本記事では、リテールメディア領域の成長に不可欠なイノベーションと技術プロダクトについて考察する。

 

リターゲティング広告を超える広告プロダクト

リテールメディアで最初に目につくのが、リターゲティング広告だ。これは、急成長するリテールメディアのエコシステムの中で、ブランドが実施ずるキャンペーンとしては、最も初歩的なものだろう。

 

リターゲティングディスプレイ広告以外のものとしては、商品紹介の動画広告とライブコマースが伸びてくると思われる。

 

ライブコマースは、中国や東南アジアではすでに巨大市場となっている。この新しいチャネルは、ブランドの重要な販売施策のひとつとなってくるだろう。今後、この新機能を組み込んだ高価格帯の新広告フォーマットが登場すると見込まれる。

 

商品動画とライブコマースは、APAC(アジア太平洋)地域以外ではまだごく初期の段階にある(Amazonサイトを見れば一目瞭然だ)。しかし今後、その利用地域が拡大していくことはほぼ確実だ。なぜなら広告主も、エンゲージメントとオプティマイズを向上させるために、新しい技術にトライしたがっているからだ。

 

対話型メディア広告や商品レコメンデーション広告のような革新的なクリエイティブも、導入の拡大が見込まれる。特に対話型メディア広告は、顧客をエンゲージし、彼らをファネルに送り込む手段として、広告主から期待されている。

 

EC事業者が堅牢な広告インフラを構築すべき理由

現在、多くのEC事業者は、サイト上で基本的なディスプレイ広告を試している段階だ。ターゲティング配信は重要な出発点だが、EC事業者がこれをスケールするには、インフラとリソースに投資し、広告主に適切なAPIを提供する必要がある(以下の図で概説している)。

 

広告主は、自社製品を扱うECサイトに、より多くの広告費を投下するだろう。投下された広告費をサイトでの販売実績に結びつけることが、リテールメディア成功の必須条件といえる。

 

このワークフローの重要な構成要素を以下に挙げる。

 

EC事業者向けの広告システム

アドサーバーは、キーワード広告、予約型広告、プログラマティック広告など、広告システム内のすべての受注を管理する。システムの中でもアドサーバーが特に重要なのは、大型キャンペーンの多くは予約型で販売される可能性が高いからだ。

 

プログラマティック統合の中核は、SSPが担うことになる。世界には膨大な数のEC事業者が存在するので、その広告在庫を集約する必要がある。SSPは、様々な広告枠(ディスプレイ、動画、ネイティブ、リッチメディア等)にまたがるオークションを管理することになる。SSPの成功は、入札ストリームで利用できるデータの種類に大きく左右されるが、現在これらのデータは非常に厳しく規制されている。このことから、インベントリ集約の隙間を埋めるために、専門のリテールメディアアドネットワーク(RMAD)が出現する可能性もあるだろう。

 

DSPの需要

プログラマティックの広告需要はDSPからもたらされる。当初、実施されるのは、主に基本的なディスプレイ広告だろう。エコシステムが成長するのに伴い、マーケターはより高いROIを求めるようになり、IDが無効となった他の広告市場から、パフォーマンス広告予算がリテールメディアへ流れ込んでくると予想される。

 

測定技術レイヤー

重要なのは、アトリビューション測定がリテールメディアルのバイヤーにとっては大きな魅力だということだ。多くの新興ベンダーが測定ツールを提供し、販売データやインベントリ、パフォーマンスの最適化をマーケターに提供している。このような測定ベンダーが各種データポイントにアクセスできるように、リテールメディアは堅牢なAPIを提供することが重要になる。

 

クリーンルーム

今後、プライバシーとデータ漏洩の懸念はますます高まるだろう。そのため、リテールメディアとマーケターはいずれも、データを集約し、セグメント化し、利用可能にするために、クリーンルームを利用する必要に迫られるだろう。

 

クリーンルームによって、広告主、メディア、データプロバイダー等は、個人情報やローデータを実際には共有せずとも、ユーザーレベルでデータを照合できるようになる。

 

クリーンルームに関する最大の課題は実施段階にある。プラットフォームによる制限や法規制、ユーザーの同意といった理由から、セグメントする際にオンサイトでIDを利用することができない。

 

セグメントが常にセルサイドでのみ利用可能となる状況においては、クリーンルーム間での相互運用性が重要となるだろう。

 

リテールメディアは、オンラインメディアのディスプレイ広告の二の舞にはならないだろう。グーグルは、このチャネルに足がかりを持っていないし、リテールメディアは誰も、Adwordsに収益を依存していない。そのため、グーグルが広告インフラの主要部分をコモディティ化する能力は限定的となり、リテールメディアのデータへのアクセスも制限される。

 

こうした理由から、グーグルの独壇場とはならず、独自のインベントリ流通ルートが形成される可能性の方が高いだろう。さあ、リテールメディアを構築するなら今がチャンスだ。

 

 

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。