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Roktと電通が語るポストCookieとリテールメディアの最前線[インタビュー]

アドテク業界で今最もよく耳にするキーワードと言えば、「ポストCookie」と「リテールメディア」ではなかろうか。この両者の最前線で活動するのが、日本を含む世界15カ国で事業展開中のEコマーステック企業、Rokt(ロクト)社である。同社と事業提携する電通のR&D担当者を一緒に迎えた上で、日本そして世界が向き合う市場課題について議論をしてもらった。

(Sponsored by Rokt)

 

EC機能を持つサイトを束ねるアドネットワーク

 

―自己紹介をお願いします。

 

渡邊氏:株式会社電通 データ・テクノロジーセンターの渡邊涼太と申します。電通グループのR&D組織である電通イノベーションイニシアティブと連携をしつつ、世界的な市場動向を観察し、どのような新規テクノロジーが電通グループの事業ポートフォリオにとって必要であるかを見極めた上で、新規事業開発を行うことを主な業務内容としています。

 

電通とRoktは2019年より業務提携を結んでおり、電通はRoktの日本国内におけるGo-to-market戦略の立案と実行を支援してきました。国内におけるリテールメディア市場の拡大を目指し、積極的にRoktのソリューションをご提案、ご支援させていただいております。

 

三島氏:Roktでアジア地域における事業開発責任者を務める三島健です。eBay、Expedia、JTBなどのオンライン事業の市場展開や事業推進、そしてGoogleの広告営業などを経て、今年1月より現職に就いています。Roktは日本事業の立ち上げ以来、とりわけ広告主様とのお取引の拡大において、電通グループ様より多大なご支援をいただいています。

 

―Roktのサービス概要をお聞かせください。

 

三島氏:ECにおける「購入の瞬間」に着目した、Eコマース事業者様の収益性改善のためのマーケティングソリューションを提供しております。一言で言えば、EC機能を持つサイト(媒体社)を束ねる独自のアドネットワークと捉えていただければ分かりやすいかと思います。ユーザー様がオンラインで購入を完了した瞬間に、関連性の高い広告を表示します。この際、LTVの向上を狙った自社のお知らせを表示することもできますし、第三者の広告主様による広告を表示することも可能です。

 

特に後者の場合は、媒体社様側においては、例えばチケット販売やファッション系の製造小売業(SPA)を手掛ける事業者様が、本業に加えて広告収益の創出を図る目的などにご活用いただいています。

 

一方、広告主様の立場に対しては、ある商品を購入したばかりの購入意欲の高いユーザー様の中から、AI/機械学習によって自社商品と親和性の高い方を見つけてリーチすることができるといったサービスを提供しています。

 

―関連性の高い広告を提供するために、どのようなデータを参照しているのでしょうか。

 

三島氏:媒体社様が保有しているユーザー様のデモグラフィック情報や購入した商品・サービスの情報を元に、機械学習に基づき関連性の高い広告を推測します。さらに、ユーザー様一人ひとりのRokt広告に対する過去の反応(どのような広告に対して興味を持ったか、また持たなかったか)も参考にしています。いずれの場合でも、ユーザー様に関するデータはすべて不可逆性のあるハッシュ化を行った上で処理しています。

 

結果論としてリテールメディアの代表格に

 

―EC機能を持つサイトを中心としたアドネットワークとは、いわゆるリテールメディアの一種なのでしょうか。

 

三島氏:日本市場においては、小売店が店内に設置したデジタルサイネージに広告を配信する仕組みをリテールメディアと呼ぶ傾向が一部でありますが、「リテール事業者様が保有するユーザー基盤や会員基盤を活用したマーケティング活動を行うためのメディア事業」という本来の定義に基づくならば、Roktはリテールメディアの一種と言って差し支えないと思います。

 

ただし、Roktは必ずしもリテールメディアとなるべく創業したわけではありません。あくまでも、「一人ひとりのユーザー様にとって、最適なタイミングで、関連性の高いお知らせ・広告を表示することで、ユーザー様、EC事業者様、広告主様の三方良しのエコシステムを構築する」ことを目指して開発を続けてきました。

 

関連性の高い広告を出すために、長らく活用されてきたのがサードパーティCookieですが、Roktのソリューションは、サードパーティCookieではなく、媒体社様の持つファーストパーティデータが中心となります。購入の直後であるというタイミングを最大限に活かし、ユーザー様自身が登録したデモグラフィック情報や購入した商品などの情報を活用することで、サードパーティCookieより信頼性の高い多岐にわたる情報を基にAI/機械学習を使って関連性を導き出しているのです。ファーストパーティデータを活用するという特性により、Cookieレスやリテールメディアという文脈で取り上げられる機会が増えたと考えています。

 

渡邊氏:三島さんの仰ったとおり、サードパーティCookieに基づく広告配信モデルとは異なり、ECサイトに来店して購入をしたお客に対して「こういう商品もいかがですか」と案内するRoktの仕組みは、ユーザー様の同意や理解を得るという点において非常に先進的だと思います。

 

サードパーティCookieの利用制限が強化されつつある市場環境に加えて、世の中やクライアント企業の関心として、より購買が約束されたソリューションに注目が集まっていると感じています。電通グループとしても、ファネル最下部の意思決定の領域をより強化するために、Rokt社との協業に至った次第です。

 

 

―いわゆる大手ECプラットフォームとは競合するのでしょうか。

 

三島氏:オーディエンスデータを最大限に活用するという意味においては共通点があると思いますが、Roktでは各ユーザー様が「過去にどんな広告と接触し、どんな反応を示したか」を機械学習しているという点、また「購入直後」の瞬間に第三者ブランドによる広告を表示できる点で、独自性があると考えています。

 

―広告主にとってはどのような利点がありますか。

 

三島氏:購入したばかりの購買意欲の高いリアルなユーザーにリーチできる点、また購入完了画面という面が、広告枠として活用するにあたり非常に質が高いという点かと思います。

 

買い物に集中し、満足度の高い状態のユーザーにリーチできるだけではなく、フラウドへのリスクが極端に小さい、質の高いオーディエンスを供給できる点も重要です。購入完了画面という厳選されたトランザクションに対して広告を表示するので、ビューアビリティは97%に達しています。Roktは、CVへの期待値によって表示する広告を最適化しつつ、モデルとしてはあくまでもクリック広告ではありますが、ビューアブルインプレッションとしても機能しています。

 

渡邊氏:購買情報に基づく機械学習を最大限に活用できるという点を高く評価しています。Roktに出稿する広告主様の中に自動車販売事業者様がいらっしゃるのですが、ピザ販売サイトに表示された広告のパフォーマンスが非常に高かったそうです。ピザを注文するのはファミリー層が多く、ファミリーカーとの相性が良かったようなのですが、このような発想は広告代理店の担当者がいくら頭をひねってもなかなか出てこない、機械学習だからこそ得られたインサイトだと思います。

 

―購入完了ページのみに広告が表示されるとなると、広告在庫は限定的になるのではないでしょうか。

 

渡邊氏:日本事業を開始してから最初の1年は、予算消化が少額に留まってしまうということが実際にありました。ただ現在は、国内でRoktを導入した媒体社様の拡大に伴い、広告在庫は既に十分に確保できていると思います。

 

CPMが2万円の事例も

 

―どのような媒体社がRoktとの相性が良いと思いますか。

 

三島氏:やはりトランザクションのボリュームつまりはCV数が多い媒体社様が比較的向いています。どちらかと言うと薄利多売の事業者様の方が広告の出面が多くなり、また利益率の向上に対する貢献も果たしやすいので、Roktとの相性が良い傾向にあります。チケットサイト、ECモール、旅行サイトなどとの相性は抜群です。

 

―どれほどの月間CV数があると、どれほどの広告収益を得られるのでしょうか。

 

三島氏:CV数だけでなく、媒体社様がどの程度までユーザーデータを共有していただけるかによって広告収益は大きく変わります。全く同じ製品が購入されたとしても、Roktに対して送られる情報が「A社のスニーカーを買いました」なのか、それとも単に「靴を買いました」なのかでは、配信広告の関連性が大きく変わるからです。さらに例えば「33歳男性で東京都に住んでいるユーザー様が購入した」といった情報が付加されかどうかによっても大きな違いが生まれます。

 

あくまでも平均値としてですが、クリック率は7~9%ほどです。そこから計算をすると、ディスプレイ広告の10~20倍のパフォーマンスとなる傾向にあります。CPMが2万円という実績を持つ大手SPA様もいらっしゃいます。

 

 

―もともと自社商品を販売するために開設されたECサイトが外部広告を掲載するとなると、競合排除を始めとして新たな課題が生じるのではないかと想像します。

 

三島氏:そうした課題を解決するために、Roktでは様々な機能を用意しています。例えば「広告を表示することでお客様から苦情や問い合わせが来たら対応しきれない」との懸念を示された大手事業者様に対しては、全体のトランザクションの1割のみに広告を出すという試行期間を設けたことがありました。ただ結果としては、そのご心配は現実のものとはならず、その後すぐに全トランザクションへの広告表示に拡大しています。

 

また、競合に関する懸念に関し、例えばフードデリバリーを営む事業者様であれば、他のフードデリバリー事業者だけでなく、ミールキットやスーパーマーケット事業者の広告が表示されないよう、クリック一つで除外のコントロールをすることができます。

 

渡邊氏:EC機能を持つ多くの媒体社様は、副次的な収入源として広告事業を始めるので、既存事業に悪影響を与えないというのは大前提です。

 

ただRoktの広告が表示されるのは、購入完了後のページつまり一般的には顧客とのコミュニケーションが終了するポイントです。A/Bテストを行うにしても、そもそもマネタイズポイントではなかった購入完了ページで、新たに収益を生み出せるという仕組みなので、電通グループとしては各事業者様には案内しやすいプロダクトです。

 

―今後の事業展開についてお聞かせください。

 

渡邊氏:冒頭の自己紹介で述べた通り、私は先端的なテクノロジーの研究や事業開発を担当しているのですが、正直なところ、先進的であればあるほど、広告主様にとっての利点が即座にはわかりづらいということは少なくありません。その中で、Roktは先進的かつ広告主様がすぐに恩恵を受けることができるという稀有な広告プロダクトであると考え、パートナーシップを締結するに至りました。

 

今後はこれまで注力してきた広告主様の開拓だけでなく、より多様な媒体社様と連携させていただくために、電通グループ会社各社との連携を加速していく予定です。

 

三島氏:Roktの市場シェアはまだまだ米国が中心であり、日本市場への細かな対応はまさにこれからというところです。日本企業の皆様が抱える様々な課題解決にしっかりと貢献できるよう、電通という素晴らしいパートナーと一緒になって、今後も取り組んでいきたいと思います。

 

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ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。