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リテールメディアの普遍的な課題を解決-「購入完了の瞬間」にフォーカスして顧客体験と収益性を高めるRokt独自のECソリューションとは[インタビュー]

自社の保有するファーストパーティデータを活用し、個々の顧客に対してパーソナライズされた体験を構築したり、顧客の関心に沿う広告の配信などを行う「リテールメディア」の取り組みが、EC事業者の間で増えてきている。ただし、その方法論がまだ確立されていない現状においては、「顧客体験の向上」や「付帯収入の確保」といった理想と現実が一致しないこともしばしば。どのような点が成否を分けるかについて、EC事業者向けにマーケティングテクノロジーを提供するRokt(ロクト)のカスタマーサクセス部門インターナショナルヘッドのマイケル・ロション氏及びアジア統括事業開発責任者の三島健氏に見解を聞いた。

(Sponsored by Rokt

 

EC事業者が続々とリテールメディア機能を装備

 

―自己紹介をお願いします。

 

ロション氏:EC事業者向けにマーケティングテクノロジーを提供するRoktにて、主に米国以外の国・地域のクライアント支援を統括するマイケル・ロションと申します。とりわけ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、欧州が主な担当地域となります。

 

Roktのソリューションは、ECサイトで顧客が買い物を完了した直後の「購入完了ページ(購入確認画面)」上に、顧客ごとに最適化した広告をウィジェット形式で表示します。この独自の仕組みを、日本市場を含めた世界中に広め、各クライアントの成功を支えることが私の役割です。

 

RoktによってECサイトの購入完了画面に表示される広告プレースメントの例。AI・機械学習によるデータ分析を基に、顧客の関心・嗜好に親和性が高いと判断された広告が表示される。

 

三島氏:アジア地域における事業開発責任者を務める三島健です。eBay、Expedia、JTBなどのオンライン事業の市場展開や事業推進、そしてGoogleの広告営業などを経て、今年1月より現職に就いています。

 

―グローバル、日本それぞれのリテールメディアの現況についてお聞かせください。

 

ロション氏:競争環境の激化に伴い、多くのEコマース事業者は安定的な収益を得ることが難しくなってきています。そこでリテールメディアとしての機能を装備することで、自社保有データの活用を促進するだけでなく、外部広告の受け入れを通じた新たな収入源の確保に取り組むようになりました。

 

米国市場においては、食品、アパレル、アクセサリー、家具などを取り扱うECサイトは、ほぼすべて何らかの形式でリテールメディア機能を有していると言っていいでしょう。金融などはまだそれほど積極的ではありませんが、今後はこれらの分野においてもリテールメディア化が進んでいくはずです。

 

三島氏:日本の関連事業者の多くが、自社データの活用という観点でも、まだまだ戦術的な取り組みに留まっている傾向にあります。サイト訪問歴に基づくリテンション施策などは珍しくなくなりましたが、戦略的かつ全体的な顧客体験の設計・評価まで含めたリテールメディア展開を行っている事業者はまだほんの一握りといった印象です。

 

―リテールメディア運営に関わる普遍的な課題についてお聞かせください。

 

ロション氏:当然のことながら、リテールメディアの運営は容易ではありません。とりわけ顧客体験を阻害することなく、マーケティングを目的とした情報やメッセージを送り届けるには様々な創意工夫が求められます。

 

 

またリテールメディアを運営するにあたっては顧客データの活用が必須となりますが、このデータ活用においても様々な課題があります。日本であれば改正個人情報保護法、欧州ならEU一般データ保護規則に準拠した上で、ユーザーのプライバシーを十分に保護しなければなりません。

 

一方で、こうした法律やガイドラインを遵守した上で、ユーザーの面倒を省き、顧客体験を向上できるのであれば、ユーザーは事業者によるデータ取得及び利用を喜んで許諾するはずです。

 

あくまでも顧客体験の向上が主目的であり、収益化はその次であるという意識を持つことが何よりも重要だと思います。

 

三島氏: 日本市場固有の課題ではないのですが、部門横断的な取り組みにまで発展させた事例がまだ少ないように思います。つまり、マーケティング担当、プロダクト担当、ファイナンス担当がそれぞれ個別にリテールメディア施策を検討または展開しているものの、全社的な取り組みではないので、全体的な顧客体験の設計や評価ができていないという状況が散見されます。

 

―どの事業者も、顧客体験の向上や最適化を目的としてデータを活用しているのではないでしょうか。

 

ロション氏:ユーザーの観点から言えば、必ずしもそうはなっていないというのが現状です。例えば、航空券をオンライン購入しようとすると、「座席変更しますか」「軽食は必要ですか」「Wi-Fiはご利用になりますか」といったアップセルのための質問が次々と表示されてきて、いつまでたってもチェックアウトできないという経験をしたことはないでしょうか。このような仕組みは、「顧客体験の最適化」とは真逆のアプローチになってしまっています。

 

一方で、例えば顧客データを通じて、「このお客様はいつもWi-Fiを利用している」といったことを事前に把握できれば、ユーザー側の入力作業にかかる負担を軽減した上で、さらに顧客体験の最適化を図ることができるはずです。

 

三島氏:日本市場においても顕著なのですが、データに基づくコンテンツ表示や商品のレコメンドなどに対する意識は高いものの、顧客体験の向上は二の次になってしまっている例が少なくありません。

 

購入完了フェーズにフォーカスしたリテールメディア施策は稀有

 

―貴社はそれらの課題に対してどのように対応していますか。

 

三島氏:多くのリテールメディア事業者がウェブサイト上の空きスペースへの広告表示を通じてアッパーファネル(認知フェーズ)のマーケティング支援を提供しているのとは対照的に、Roktはオンライン購入後に新たなタッチポイントを作り、広告を提示することでミドルファネル・ローワーファネルのマーケティング支援を行っています。

 

購入後の瞬間というのは、顧客の購買意欲、幸福度が最大限に高まっているタイミングです。そこでデータを活用して、一人ひとりの顧客に合った提案をすることができれば、その広告は好意的に受け止められ、非常に良い反応が期待できます。

 

Rokt Ecommerceの紹介ビデオ。Roktを導入することで、ECサイトが自社の保有するファーストパーティーデータを活用し、どのようにユーザー体験と収益性を向上できるかを解説している。

 

ローワーファネル施策においては、例えば「歯ブラシを買ったら歯磨き粉」「靴を購入したら靴下」といった、購入商品に基づくレコメンドを行う仕組みは既に見受けられますが、Roktのように歯ブラシや靴の購入者に対して、顧客のデモグラフィックなデータの分析に基づき、例えば動画サービスのサブスクリプションやクレジットカードの申し込みを案内するなど、その方のニーズに最も合った商材カテゴリの広告を提示する仕組みの施策は、世界でもまだかなり珍しいモデルです。

 

 

新領域であるリテールメディアに関しては、どの事業者も他社の成功及び失敗事例を学ぶことに高い関心を持っていらっしゃいます。新しい試みであるがゆえに、その仕組みについての説明に多少の時間を要することもありますが、特にRoktは基本的に初期投資を必要とせずに新たな収益源を生み出すための取り組みなので、事業者様の理解を得やすいと考えています。

 

―Roktは、Cookieレスソリューションとしても注目されています。

 

ロション氏:ユーザー体験の向上を目的としたソリューションを開発する上で、サードパーティCookieに依存しない仕組みの構築は大前提でした。購買履歴という各事業者が保有するファーストパーティデータを用いることで、安心してかつ自信を持って、顧客体験の向上に役立てていただけたらと思います。

 

外部広告の表示による苦情は0件

 

―そもそもEC事業者のウェブサイトに外部広告を挿入することで、顧客体験を阻害することにはならないのですか。

 

ロション氏:実際に多くのEC事業者が外部広告の挿入による影響について懸念を抱いています。米国の栄養補助食品販売事業者であるVitamin Shoppeも、当初は強い懸念を示していました。こうした事業者は、ユーザーを自社サイトに誘導するために多大な投資を行っているので、外部広告を挿入することでのユーザー離脱は絶対的に避けたいとの思いを持っています。

 

そこで当社は事前にテストを実施するなど慎重かつ段階的な実施をしたのですが、結局のところ、1年間でユーザーから受けた苦情は0件でした。それどころか「一度出た広告を再表示するにはどうしたらいいか」という問い合わせが来たほどです。

 

テストはどのように実施するのですか。

 

ロション氏:各企業様のご要望に応じてとなりますが、一般的にはテスト期間として1~2週間を用意し、数日ごとに、サイト全体のインプレッションの5%、25%、50%、70%、100%といった具合に外部広告を表示する割合を段階的に増やしていきます。また正式にローンチ後もUXやデザインの見直しや変更を随時行います。

 

加えて、日本市場においては、データ取得や利用に関する説明や案内表示について、より慎重にテストを重ねる傾向があります。

 

―今後の日本での事業展開についてお聞かせください。

 

ロション氏:日本法人の設立以来、当社の顧客に対してきめ細かな支援を提供するための人材の確保に努めてきました。本社からのサポートとローカル採用をバランスよく進めることで、グローバル展開で培った知見を提供しながら、日本市場特有の課題を解決するための体制を整備することができたと思います。

 

今後、日本法人を通じて日本市場の課題に取り組むことで、日本だけでなく、その他の市場にもその知見を役立てることができるようになると思います。例えば日本の改正個人情報保護法への対応を進めることで、プライバシー保護に関する当社の引き出しは増えていくことになります。日本とその他の市場の事例を横展開していくことで事業拡大をしていけることが、グローバル展開の醍醐味と言えます。

 

三島氏:成長している企業はやはりパートナーシップを有効活用しています。当社としては、信頼してもらえるパートナーになるために、顧客体験の最適化に引き続き真摯に取り組んでいきたいと思います。

 

Rokt Ecommerceについてのお問い合わせは、こちらから

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。