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広告↔自社サイトのデータ往来で統合的最適化 KARTE Signalsが見据える広告業界の本質的課題とは[インタビュー]

大手広告プラットフォームの自動最適化機能の高度化に伴い、デジタルマーケターの役割は変化しつつあると言われている。ただいかに変化すべきかについては、いまだ抽象論に留まる。そこで「KARTE Signals」という新プロダクトの開発を通じて、その具体案を提示する株式会社プレイドに、未来のマーケター像について尋ねた。
(Sponsored by PLAID Inc.)

 

広告とCRMの架け橋に

 

―自己紹介をお願いします。

 

鷹嘴氏:「KARTE Signals」の事業責任者を務める鷹嘴昌弘と申します。事業開発を始めとして本事業の全体的な統括を行う立場にあります。

 

笠原氏:プロダクトマネージャーを務める笠原元輝です。主にプロダクト開発に関する業務管理を担当しています。

 

―改めて「KARTE Signals」の概要と主な用途を教えてください。

 

鷹嘴氏:KARTE Signalsは、自社サイトを訪問・利用する顧客から個人情報保護法等に則り適切に収集した情報つまりはファーストパーティデータをオンライン広告にも活用することで、サイトの内外での一貫した顧客体験を可能にするソリューションです。

 

また当社の基幹事業であるKARTEは、ウェブ接客、コンテンツやページのパーソナライズ、チャット、レコメンド、アナリティクス、プッシュ/メール/LINE送信などを可能にするCXプラットフォームです。KARTE本体としては、CRMやサイト運営に関心を持つ事業者様が主な顧客層となります。その中でも併せて一定規模の広告出稿を行う際に、KARTE Signalsを併用いただくことが多いです。

 

―ファーストパーティデータを蓄積及び活用するためのツールは、CDPを始めとして既に他にも多く開発されているのではないでしょうか。

 

鷹嘴氏:確かにデータ管理ソリューションは様々な形式で既に市場に出回っています。ただし、それらのデータ基盤は当然ながらデータを格納する箱に過ぎず、肝心のデータ自体は有していません。また基幹システムやCDPなどはIT部やCRM部門などが管理することが多く、広告担当者が容易にアクセスできないということが往々にしてあります。

 

一方で、KARTEをお使いであれば、CX最適化を目的に既にページ閲覧、クリック、購入といった細かなイベントごとのデータを取得しており、しかもこれらのデータを加工した上で、広告媒体へと送信することができます。本来であれば密接に連携すべきであるにも関わらず、分断されがちな広告部門とCRM部門または集客担当と接客担当の間に架け橋を作ることができるのです。

 

現状では両者間をつなぐためには開発リソースを割かなければならず、大仕事になります。しかも複数の異なるツールを使い分けることになるので、それぞれの管理画面にログインするだけでも面倒です。KARTE利用者がKARTE Signalsを活用すれば、ワンストップで完了するというのは非常に大きな利点だと思います。

 

―ファーストパーティデータ活用に乗り出す広告代理店も増えてきました。

 

鷹嘴氏:確かに大手広告代理店は広告媒体だけでなく、サイト運営やMAを含めた総合的な提案を行うようになってきていると思います。ファーストパーティデータ活用の重要性を認識しているからでしょう。ただし、データ環境を自力で整備できる広告代理店は国内でも限られています。統合的なマーケティングを志向するその他の広告代理店様には、KARTE Signalsを武器として手に取っていただきたいです。

 

―ファーストパーティデータ活用への関心が高まる背景には、やはりサードパーティCookieの利用制限があるのでしょうか。

 

笠原氏:最近ではGoogle ChromeでのサードパーティCookieサポート終了の延期が話題になっていますが、かねてからSafariのサイトトラッキング防止機能であるITP(Intelligent Tracking Prevention)が広告担当者の頭を悩ませてきました。サードパーティCookieが廃止されることにより、ターゲティングの精度低下やリターゲティングリストの減少が課題になっているのです。

 

そこでサードパーティではなく、ファーストパーティデータを活用すべきという考えに傾きつつあるのですが、鷹嘴が申し上げたように、そのデータを持っているサイト管理者と、データを使いたい広告担当者とが分断されており、お互いの意思疎通を図ることができないという構造的な問題が残されています。仮に両者間を何とか連携できたとしても、今度は広告担当者から広告媒体にデータを送信するにはAPI連携が必要です。

 

つまり、ファーストパーティデータを広告配信に利用するには、①自社サイトで取得できるデータを熟知している、②広告に活用し得るデータを理解している、③データ連携に必要な技術を把握している、の3点が揃わなければいけないのです。この3つの要件をすべて満たすのは、実際のところ、なかなか難しいのではないでしょうか。

 

データの精度に大きな自信

 

―KARTE Signalsをリリースしてから半年以上が経過しました。

 

笠原氏:ITPリリース以降、「コンバージョンに関するデータを広告媒体に送り戻す」手段として、各広告媒体のコンバージョンAPIが用いられてきました。ただし、然るべきデータ基盤を整備した上でAPI連携を行うためには一定の時間と費用がかかるといった課題があったことも事実です。KARTE Signalsはこの課題を解決することで、特にこれまでリソース不足に悩んでいたり、スピードを重視する事業者様からの導入が進みました。

 

鷹嘴氏:新たなデータ基盤を構築するとなると、大企業であれば各部門間の調整だけで数カ月から半年間を費やすことが一般的です。「来期の予算に組み込めるか検討しよう」という話になることも珍しくありません。KARTE Signalsであれば、最短50分でその仕組みを構築できます。

 

笠原氏:また効率性だけでなく、データの精度についても高い評価を得ています。例えばFacebookにおけるマッチングクオリティのスコアでは10段階中の7であれば上出来とされてきましたが、KARTE Signalsは9を超えました。質が高くて効率的なソリューションであることを証明できたと考えています。

 

―想定外の反応などはなかったのでしょうか。

 

鷹嘴氏:ファーストパーティデータには個人情報が含まれている場合があり、これを外部の広告媒体に送るという行為について、当社顧客の法務部門からの理解がなかなか得られない事例がいくつかありました。ただし、法務部門との協議を踏まえて、プライバシーポリシーを改定することで導入に至った企業様もいらっしゃいます。

 

―各企業の法務に関しては貴社の管轄外とも思いますが、その課題をいかに乗り越えていくつもりですか。

 

鷹嘴氏:今や3兆円の市場規模に達しようとしているデジタル広告も、黎明期は訝しい目で見られており、当時のデジタル広告担当者は社内の理解を得るのに苦労していました。ファーストパーティデータを広告に活用すれば、広告効果が上がり、顧客体験が向上するということが共通認識となれば、法務部門の理解は得やすくなるでしょう。

 

当社としては、サイトを通じた情報提供に加えて、今後は非弁行為に当たらない範囲でコンサルテーション業務などを行うことも検討しています。

 

―KARTE Signalsを最大限に有効活用した好事例があればお聞かせください。

 

笠原氏:KARTE Signalsをターゲティングに利用する場合に、「こういうデータを送りたい」という考えをしっかりと持っている企業様は非常に有効なセグメントをつくることができています。

 

ポケットマルシェ様の事例では、「一定期間内に3回以上購入した人はリテンションが上がる」ということを把握していたので、該当するユーザーにターゲティングを行った結果、CPAが下がると同時にROASが改善しました。

 

またKARTE Signalsは「Value Based Bidding(バリューベースビッディング)」と呼ばれるような、優良顧客の特徴を踏まえた類似拡張配信にも適しています。データに関する理解が深ければ、質の高いユーザーにリーチできる確率は一層高まると言えるでしょう。

 

データを往来させる仕組みの開発に着手

 

―今後の事業展開についてお聞かせください。

 

鷹嘴氏:既にFacebook、Instagram、Google、Yahoo! JAPAN、LINEといった主要媒体と連携済みですが、こうした媒体連携を引き続き強化していく予定です。また今後は逆に広告媒体側に蓄積されたデータをKARTE Signalsに取り込む仕組みを開発したいと考えています。

 

CPAやCPIといった顧客獲得指標においては、広告媒体の自動最適化はかなりの程度まで高度化しました。一方で、顧客の継続率やLTV(顧客生涯価値)といった中長期的な指標に基づく最適化機能はいまだ不十分です。

 

KARTEであれば、サイト上でどんなユーザーがいつ何をいくらで購入したかというデータを蓄積しています。広告媒体側のレポートをKARTEに取り込むことで、「LTVが高いユーザーに最適な媒体、キャンペーン、クリエイティブ」といった評価を行うことが可能になります。

 

この取り組みを加速させるために、先日Marketing Data Platform「Databeat」を提供するアジト株式会社をグループ会社化することを発表しました。KARTE  SignalsとDatabeatの連携により、国内の主要なインターネット広告出稿先媒体とそれら広告に接したユーザーのデータとが一気通貫で可視化され、広告予算の最適化、広告運用担当者の工数削減、そしてユーザーとのエンゲージメント向上に貢献します。

 

この仕組みが整備されれば、新規獲得を行う広告担当者と顧客維持を行うCRM担当者の間に存在する垣根を取り払うことができるはずです。例えば「CPA400円で顧客を獲得しているのだから、あとはCRM部門がきちんと顧客維持をしてくれ」ではなく、「この広告チャネルは顧客維持率が悪いが、短期的なキャンペーンには向いているのではないか」といったような建設的な議論が行えるようになるでしょう。

 

笠原氏:サードパーティデータを主に扱ってきた広告担当者は、ユーザーを群として見ることが多かったように思います。一方でKARTEは、一人ひとりのユーザーを深く理解するためのツールです。広告媒体側のデータをKARTE Signalsを通じて取り込むことができるようになれば、どんな広告に接触したユーザーがどんな特徴を持つのかが理解できるようになるはずです。

 

鷹嘴氏:広告媒体側のアルゴリズムと機械学習が非常に高度化した結果として、広告担当者が管理画面上で行う作業によって新規顧客の獲得効率が変動する余地はかなり少なくなってきました。

 

広告担当者には今後「いかにトラフィックを自社サイトまで誘導するか」だけではなく、「集めたトラフィックをいかにLTVが高いユーザーへと変えていくか」までを考えることが求められます。広告と自社サイト間のデータを行き来させることで、一気通貫の設計ができるというKARTE Signalsの強みにさらに磨きをかけることで、これからのマーケターたちのお役に立つことができたらと思っています。

 

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ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。