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第一線のマーケターはサードパーティCookie規制をいかに乗り越えたのか―KARTE Signalsを選んだ理由とは[インタビュー]

サードパーティCookieの利用制限による影響が顕在化して久しい。Google Chromeでのサポート廃止を控え、新たな対応策やソリューションが次々と打ち出されているが、デジタルマーケティングの現場がいかに格闘し、解決策を見出しているかを伺い知る機会はまだ少ない。そこで自ら手を動かして問題解決に当たり、ITP導入以前の実績値を超える広告効果を取り戻した株式会社Timersの最高執行責任者に貴重な体験談を聞いた。

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マーケター自身がバナーを作成

 

―自己紹介と事業紹介をお願いします。

 

株式会社Timersの最高執行責任者(COO)を務める栗城良規と申します。Timersという社名には、「どれだけ時代が変わっても、変わらない人の幸せに向き合い、社会に新たな選択肢をつくる」という企業理念が込められており、さらに昨年4月には「社会の二項対立を溶かす」というビジョンを加えました。例えば育児と仕事のどちらかを選ぶのではなく、両立を実現できるような環境を整備するためのお手伝いができたらと考えています。

 

具体的には、「時代が変わっても、変わらない人の幸せ」の一形態として主に家族をテーマとした3事業を展開しています。一つ目はFammというアプリの運営です。お子様の撮影写真を載せたカレンダーをサブスクリプション形式でおじいちゃんやおばあちゃんなどに配送するこの事業で大きな成長を果たしてきました。二つ目は、ファイナンシャルプランナーや生命保険の担当者と面談を行うことと引き換えに、プロによる写真撮影の機会を無料で提供する事業です。そして三つ目として、子どもと一緒におうちで参加が可能なママ専用のスクール運営(Fammスクール)を4年前からと、主にその卒業生と業務を外注したい企業をマッチングする 人材サービス(Fammアシスタントオンライン)を2年前の4月から開始(現在すでに250社以上に導入済み)するなど、多領域の事業を展開しています。

 

―どのようなマーケティング組織を装備していますか。

 

インハウス運用と外部委託の併用です。マーケティング予算が最も大きいスクール事業については、社内マーケティング担当者が2名、マーケティングパートナーが2名の計4名が協力し合いながら業務に取り組んでいます。

 

またこれはマーケティング関連部署に限定した話ではないのですが、会社全体として第三者ツールの活用を奨励し、社員全員が運用型広告を出稿し、SQLでの分析も自ら行うといったことを目標とした社員教育を行っています。

 

マーケターが技術的な課題に直面し、エンジニアやデザイナーに相談したところで話が止まってしまうというのはどの会社でも起きているかと思います。そのような状況を回避すべく、当社ではマーケティング担当者が第三者ツールを通じてバナー作成まで行っているのです。デザイナーが骨子を作りそれをベースに修正作業をすることもあれば、最初から自分で制作する場合もあります。そのような形で、広告の質とPDCAのサイクルを高速で回すところのバランスを高い水準で追求することを行っています。

 

また広告媒体側における機械学習の精度が上がるにつれて、マーケターに求められる役割も徐々に変わってきています。広告運用自体での差別化は、一昔前と比べるとだいぶ差分が減りつつあり、今はクリエイティブ制作能力や広告の最適化に必要な計測やデータ環境を整備するための技術の有無が問われていると思うのです。マーケターの視座を高めるという意味でも、第三者ツールを徹底的に使いこなすことや、技術面の理解にはこだわっていきたいと考えています。

 

―主にどのような広告媒体を利用していますか。また重視するKPIについてお聞かせください。

 

広告予算の多くをデジタル広告媒体に投下しており、運用型広告が大半を占めます。スクール事業の利用者の実に9割を占める育休中の女性たちの潜在的なニーズを掘り起こすためには、デジタル広告媒体が外せないと考えているためです。

 

なお、スクール事業の利用対象者の方々には、まずは無料説明会にお越しいただいてから、お申込みをいただくかどうかを判断していただいています。よって、説明会の予約数やそのCPAがまずは最も重要なKPIとなります。

 

チャットボットとのデータ連携に苦慮

 

―サードパーティCookie利用制限の影響をどのように受け止めていますか。

 

Apple社がiOS14をリリースした直後から割とすぐに影響を感じていました。ただリリース当初は、当社の別施策がうまくいっていたため、それほどの打撃を受けずに済んでいたのです。ところが、時間が経つにつれてCPAが悪化するなど、いよいよ深刻な影響が表れ始めたので、対応策について本格的な検討を開始しました。

 

同じように困っている人が世の中にたくさんいるはずだと考え、有料のブログを見たり、広告代理店関係者を含む様々な人に話を聞いて、広告のコンバージョンAPIの仕組みについてはすぐに理解できました。ただ少し厄介だったのは、当社の申し込みフォームとコンバージョンAPIの相性が非常に悪かったのです。単純な申し込みフォームであれば、GoogleタグマネージャーやWordPressを通じて比較的容易に設定することができたのですが、当社が特殊なCMSを利用しており、かつチャットボットを活用しているためにブラウザ上の情報が届かないなどの課題があって、既存のツールやソリューションを通じてコンバージョンAPIに対応することができませんでした。

 

―どのような対応策を取ったのでしょうか。

 

当社には優秀なシステム部隊がいますが、彼らは必ずしも広告関連システムに特化した技術や知識を持っているわけではありません。そのため、課題解決のためには、適切な外部パートナーを見つけなければならないと思いました。

 

そのタイミングで、自社サイトを訪問・利用する顧客から適切に収集した情報を活用することでコンバージョンAPIを設定するKARTE Signalsの存在を知り、すぐに問い合わせをしました。

 

コンバージョンAPI関連機能を提供するその他の事業者様からも見積もりは取り寄せたのですが、まずはチャットボットに対応できるという点でKARTE Signalsを選びました。現状において、コンバージョンAPIに対応したチャットボットの事例はかなり少ないと思います。

 

 

またKARTE Signalsが第三者ツールであることも大きいです。スクラッチ開発となると、自分たちで管理できる範囲がかなり狭まります。さらにサードパーティCookieを含めた個人情報の利用制限は今後ますます強化されることが確実視されていることを鑑みると、あらゆる媒体に対して横断的に機能するツールが望ましいと考えました。加えて、KARTE SignalsがコンバージョンAPIだけではなく、類似拡張配信に向けてのオーディエンス作成にも活用できるという点を高く評価しています。

 

利用料の10倍程度の広告効果

 

―実装や具体的な成果が出るまでにはどれほどの時間がかかりましたか。

 

優先度を上げて集中的に取り組んだので、最初の打ち合わせから1週間ほどで実装できたと記憶しています。ただし、最適化を図るに際してデータの重複処理などにやや手間取り、具体的な成果が出るまでには約3カ月を要しました。今考えると1.5カ月程度には短縮できたかとも思うので、その点は反省ポイントでもありました。その間、KARTE Signalsの担当者様にはほぼリアルタイムかつ超速で課題発掘にお付き合いいただき感謝しています。同じ画面を共有しながら、チャットボット機能の提供企業との打ち合わせに同席いただいたことも何度かありました。

 

こうしたご協力のおかげもあって、一度悪化したCPAは今ではITP導入以前の基準値まで戻りました。KARTE Signalsの月額利用料の10倍程度に相当する広告効果が出ているので、ROIがすごいことになっています。

 

―自社サイトの訪問情報などを外部利用するに当たっては、個人情報の利用規約の変更なども必要だったのではないかと想像します。

 

実はプライバシーマークの取得準備なども同時並行で行っていたため、会社としては個人情報の取り扱いについて既にかなり整理されていた状況にありました。結局のところ、必要なのは最低限の知識と「こういう情報を利用する場合は、こういう点に気を付けなければならない」というパターン分けです。そうした整理を行うに当たっては、専門のコンサルタントの方や顧問弁護士を最大限に活用しました。

 

法的な問題に関しては、私が1人だけで頭を悩ますよりも、この分野の専門家のご知見もいただきながら、様々な観点を加味した上で落としどころを見つけるという作業が大事だと考えています。

 

―サードパーティCookie利用制限による弊害を乗り越えた現在は、どんな課題に取り組んでいますか。

 

現時点では説明会の予約数をKPIに設定していますが、当然のことながら、中には予約をキャンセルしたり、説明会に来たけれども申し込みには至らなかった方も当然いらっしゃいます。そのため、本当は最終的な成約に至った獲得単価(CPO)を追いたい。現状においても、ある程度まで把握できる仕組みは構築したのですが、事業モデルの特性上、スマートフォンアプリなどのようにCV数が数千や万単位出るような商材とは異なり、学習データの取得の観点においてはCV数に限りがあるので、データの正確性にはやや欠けます。KARTE Signalsであればオフラインの行動情報も連携できるので、今後はオフラインデータも活用しながらCPOを追い求めていきたいと思います。

 

Timers社によるKARTE Signals活用の成果

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ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。