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アドテク業界の古豪、テレビとデジタルを融合し新しいダイレクトマーケティングの設計に挑戦[インタビュー]

アドテク業界で長きにわたり活躍をしてきた谷本 秀吉氏(※)は、この春新たな挑戦をするために、トライステージに執行役員として参画した。

その背景と詳細について、お話を伺った。

 

※株式会社トライステージ 執行役員 谷本秀吉氏 経歴

総合広告会社を経て、2002年よりGMO NIKKOに。GMOインターネットグループ在籍時は、GMO NIKKO常務取締役など、グループ複数社の役員を歴任する。

2017年4月 ソニーグループのSMN株式会社に移り、アドテクノロジー事業の執行役員、連結子会社のネクスジェンデジタルの代表取締役を務めた後、SMN株式会社のアドバイザーに就任する。

2023年4月 テレビ領域を軸とした統合ダイレクトマーケティング事業を行う株式会社トライステージに参画する。

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

―今回トライステージに参画された理由についてお聞かせください

理由は二つあります。

昨今のインターネット広告やアドテクノロジー業界は、プライバシー規制やアドフラウド、ステルスマーケティングなど、大きな問題への対策が求められています。

市場は堅調に伸びつつも、業界全体は今、今後の成長を脅かす問題への対策・対応の優先度が高い時期だと感じています。

一方、eコマースを含む通信販売市場は、2021年11.4兆円(前年比7.8%増)と23年連続で増加傾向にあり、特にコロナ禍にあったこの3年も堅調に伸び続けており、eコマースがその成長をけん引しています。

そこでアドテクノロジーの活用の余地が、通信販売市場にはまだ多分に存在すると感じ、より良いコミュニケーション価値の創出と提供のため、その当事者として携わりたいと考えたことが一つ目の理由です。

 

引用元)日本通信販売協会 Webサイトより *1

 

二つ目は、商品やサービスを提供する企業側は、積極的なデジタル活用「DX化」による、よりダイレクトに生活者に情報や商品を届けるD2C型へと事業転換が加速されています。

そのような中、昨今、広告単価の上昇による広告効率が停滞することに対する課題感に対して、ダイレクトマーケティングにもっと有効な施策が求められています。

これに対し、私がこれまでアドテク業界で培ってきた知見やノウハウが活かせるのではないかと感じたからです。

HubSpotの調査レポートによると、日本の広告単価が上昇していると答えているマーケティング従事者は62.3%にのぼりました。*2

今後、より効率的な広告運用のためには、メディアを横断し重複する無駄なコストと過剰なフリークエンシーを極力排除し、統合的な広告評価と効率管理の必要性がますます高まっていると思います。

 

―トライステージの事業についてお聞かせください

トライステージは、テレビインフォマーシャルといわれるテレビ通販番組枠の調達力で、国内トップクラスのシェアを誇ります。その枠は、フリーダイヤルでコールセンターによる電話注文と、QRコードや指名検索によるWebサイトの購入フォームへ誘導します。データやAIを駆使したプランニングから、そのプロモーションのレスポンスに応じて枠のアロケーションを調整する運用を行い、より多く購入頂くために番組制作や、購買導線のコールセンターとLPの整備をワンストップで支援しています。

また、今年5月に株式会社STREET HOLDINGS傘下のダイレクトマーケティング(DM)事業を行う会社としてグループ再編されており、同じDM事業内にはダイレクトメール発送代行を行うメールカスタマーセンター株式会社があります。
そしてグループでは他にもDX事業を行う株式会社アドフレックス・コミュニケーションズ、D2C事業を行う株式会社日本百貨店があります。

 

―主な顧客層である、通販業界のマーケティングの現状と課題についてお聞かせください

通信販売は、デジタルの発展と共に販売チャネルが多様化且つ複雑化していますが、企業側の対応整備が十分になされない場合に、コミュニケーションの分断化が起こり、商機を失ってしまう可能性もあるため、その対策が大きな課題です。

例えばテレビ通販はコールセンター経由で商品の販売がされるだけでなく、Web経由で購入に至る「テレビコマース」の割合が年々高まっており、商品によっては、全体の3割に達する場合もあり、オフラインだけでなくオンラインの購買体験も極力ストレスのないものに整備していく必要性は高まっています。

 

 

―谷本さんご自身は、これからのキャリアでどのような領域にコミットして、どのような役割を果たしていかれようと おもっていらっしゃるのでしょうか。

私のこれからのキャリアのコミット領域ですが、マスメディアとデジタルのコミュニケーションの融合の仕掛けの構築を手掛けていくことにあると考えています。

2020年に初めてデジタルインファクト社とコネクテッドテレビ広告市場規模予測レポートのリリースをし、その時にテレビとデジタルのコミュニケーション融合時代を表現するため「テレデジ」時代の到来をアピールに使っていました、笑。

また2022年には読売新聞東京本社とSMNで資本業務提携を結んだ際にもマスメディア(新聞とテレビ)とデジタルを活用した生活者にとって心地よいコミュニケーションを創出する取り組みを事業化することにも携わりました。

そして、実は私は過去にもトライステージとの事業に関わった経緯があります。

2013年の6月のちょうど10年前に、トライステージと以前私が在籍していたGMOアドパートナーズが、テレビチャネルとデジタルチャネルを統合したダイレクトマーケティング支援を行う合弁会社を発足しました。残念ながらその会社は今では存在していないのですが、当時もテレビとデジタルを融合させた施策設計を描いておりましたが、それが今はコネクテッドテレビが普及し、いよいよ本格的なテレビとデジタルを融合したコミュニケーションの考え方が本格的に到来していると感じます。

背景は違いますが、テレビや他マスメディアがデジタル活用による進化過程があると思っております。

 

―現在注目されている市場動向について、お聞かせください。

大局においては、人のメディア接触環境の変化と共に広告市場のトレンドも移ります。そういった観点で今、最も注目度の高い話題のひとつにはやはりコネクテッドテレビ広告があげられますので、「テレビデバイス」としての可能性の再定義に注目しております。

 

引用データ参照元:

*1 https://www.jadma.or.jp/pdf/2022/20220824press2021marketrize.pdf

*2 https://www.hubspot.jp/company-news/marketing-challenges2023

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。