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「DXを通じて人口減少時代を耐え抜く世の中を」―株式会社フェズ、島根県出雲市に新オフィス開所

 

2023年6月2日、株式会社フェズの新オフィス開所式が島根県出雲市で行われた。

リテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を提供するフェズは、設立8年目を迎える社員130名のベンチャー企業。東京都千代田区に本社を構えるが、2019年には島根県に進出するなど所縁が深い。

 

 

主力事業「Urumo Ads」の業務を出雲オフィスへ

冒頭、同社 代表取締役 伊丹順平氏は来賓への感謝の言葉と共に、出雲オフィスの概況について説明した。

 

フェズの主力事業である「Urumo Ads(ウルモアズ)」。国内最大規模のリテールデータプラットフォーム「Urumo」をベースに、オンオフにまたがる「広告効果」「来店効果」「購買効果」を可視化するソリューションを提供している。出雲オフィスでは、その広告の配信設定からデータ分析、レポーティングなど広告運用業務の大部分を担当することになるという。また、伊丹氏からは、「IT人材を採用するにあたって東京だけに絞っているのではなく、これからは地方に住んでいる方も含めて、活躍いただける方に来ていただくという視点が重要になる。今回はDX領域の方に力になっていただきたく、当社として新たな体制を敷く中で出雲に進出させていただいた」と出雲市進出の背景も述べられた。

 

島根オフィス内観

国内小売市場におけるフェズの独自の立ち位置

リテールメディア広告の市場規模は2023年時点で245億円ほどだが、今後3年間で800億円にまで伸びるとも言われている。(※1)これだけ急拡大が期待されている領域で何故フェズが業界のトップランナーとして注目を浴びているのか。伊丹氏は日本と米国市場を比較しつつ、「ウォルマートがアメリカ国民の40%ほどの購買データを保持しているのと対照的に、日本では大手小売企業であっても、市場全体の5、6%ほどを占めているに過ぎない。つまり、各小売の購買データを国内マーケットのデータとして取り扱うことができない。日本のように多くの小売企業が存在して、データが分断されている状況においては、第三者が各データを統合してマーケット化しなくてはデータ価値を高められない。この分野へいち早くに参入し、データ統合を進めてきたのが当社であり、No.1規模のプラットフォーマーとして小売様、メーカー様から受け入れていただいている要因でもある」との見解を示した。

 

また、「現在フェズにご提供いただいている約1億のID-POSデータは、今後2億、3億と拡大させていくことを視野に入れている。データ規模が大きくなるにつれてデータ価値も高まっていくことになる。『Urumo』をさらに大きなプラットフォームにしていくことができれば、最終的には世界で勝てるとも見込んでおり、いずれは海外にも打って出ていきたい」と展望を述べた。

 

※1 CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施~リテールメディア広告市場は2022年に135億円、2026年には805億円と予測~(https://cartaholdings.co.jp/news/20220927_2/

 

フェズでしかできない地域への貢献を

さらに伊丹氏は、日本が直面している大きな課題として人口減少にも言及。「人口減少に伴い、小売業は現在のオペレーションでは店舗が維持できなくなり、店舗数は減っていく。同時に地域の消費者も減るため、これまでと同じような販売方法では売上は必ず落ちていくこととなる。さらにお伝えしたいのは、人口が減っていく社会では、小売業だけでなく様々な分野で問題が起こってくる」とした。

 

今後の日本を待ち受けているイメージを共有しながら伊丹氏は、「当社はDXを通じて小売様のビジネス課題の解決に取り組んでいるが、出雲オフィスは当社だけではなく出雲市の皆様と一緒に将来の課題に向き合い、解決していけるような事業所にしていきたいと考えている。また、これから出雲オフィスで働く社員はフェズの社員であるとともに島根県民であり、出雲市民でもある。フェズの事業を通じて学んだことは、将来的には自分たちの生活をより豊かにするためにも活用してもらえる。例えば、フェズで働きながら副業で市内の他企業を支えるDX人材になるかもしれない。もしくは、フェズを卒業した後に、県内企業でDXを推進していく担当者になる可能性もある。人口減少にも耐えられる世の中を作っていける人材を育んでいくことで、フェズでしかできない県や市への貢献をしていきたい」と今後の展望を示した。

 

伊丹氏の熱のこもった挨拶が拍手で包まれると、その後は一転、和やかなムードの中でフェズ社員と来賓の歓談が続いた。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。