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Web3とコマースが融合するとき - 次に起きる変化は何か?

ここ数年でコマースの状況は大きく変化したと言っても過言ではないだろう。コロナ禍をきっかけに、2020年代に入りデジタル化が進み、Eコマースは急成長を遂げた。世界の小売全体に占めるEコマース売上の割合は、2023年には20.8%になると予想されている。この数字は2026年までには24%まで上昇し、金額は80億ドル(約1兆1350億円)を超えるとみられている。社会のデジタル化が進み、Eコマースの割合が増えるなか、コマースはうまく環境に適応しながら大きく繁栄してきたと言えるだろう。

このように現在のインターネット環境にうまく適応してきたコマースは、「インターネットの次のステージ」であるWeb3でも同様の適応を果たせるだろうか?

Web3テクノロジーはまだ黎明期にも関わらず、大いにもてはやされてきたと同時に、厳しい目も向けられてきた。Web3技術の分散型の性格は、インターネットの民主化に資するとの期待もある一方、単なる一時的な流行に過ぎないとして早々に見限った人も多い。とりわけNFTは、デジタル資産としてのボラティリティの高さから、その価値をめぐってはさまざまな意見が飛び交い、喧伝厳しい批判が相半ばすることとなった。しかし、NFTに関する意見によく耳を傾けてみと、この新技術が商業的にかなり有望であることがわかる。2021年、NFTは約410億ドル(約5兆8170億円)に上る売上高を記録し、その経済的ポテンシャルの高さを示した。そしてその結果、多くのブランドがWeb3のステージに足を踏み入れることとなった。ナイキは2021年末にデジタルアパレルのスタートアップ企業RTFKTを買収し、翌年にはWeb3プラットフォーム「.Swoosh」を立ち上げた。2022年には、スターバックスのリワードプログラム「Odyssey」も発表された。これは、Web3技術を活用したロイヤルティスキームで、NFTの独占性と収集性を活用して、消費者にアピールするものだ。

Web3とコマース領域が交差するなか、アドテク業界にはどんな影響が予想されるだろうか。業界のエキスパートたちに意見を聞いた。

 

Web3にはコマースを改善するポテンシャルがある

Web3とその周辺技術は、現在直面している最も差し迫った問題の一部を取り除き、解決するポテンシャルを秘めていると思います。それは、サプライチェーンの真価を解き放つ能力です。信頼できるエンドツーエンドのトレーサビリティと監査によって、登録されているデータを簡単に検証できるようになります。これにより、資金や投資の新たな流れが生まれるかもしれません。また、空気の質をモニタリングして、大気汚染防止への取り組みをゲーム化することで、社会問題に取り組むインセンティブを生み出すことができるかもしれません。これらを実現するソリューションはすでに存在していますが、今はまだ規模の拡大に苦慮しているところです。しかし、今後数年で何ができるようになるかを知るのに、ちょうど良いベンチマークかもしれません。

 

グリーン・イズ・ザ・ニュー・ブラック 創業者、ステファニー・ディクソン(Stephanie Dickson)氏

 

 

ブランドが提供する体験の没入感が向上

オンラインで製品やサービスを売買する手法は、まだまだ大きな進化が続くでしょう。そして、それにもっとも寄与するのがおそらくWeb3の分散型モデルです。例えば、革新的なロイヤルティプログラムやリワードプログラムなどを通じて、ブランドはよりインタラクティブなショッピング体験を生み出せるようになります。また広告主はプライバシーファーストの世界で、オーディエンスをターゲットにして有効なエンゲージメントを築く方法を求めていますが、Web3の登場により、ユーザーが自分のデータをコントロールできる範囲が広がるため、取引がよりスムーズかつ迅速に行われるようになります。これは、オンライン小売の大変革につながるかもしれません。確実に言えるのは、広告主が顧客のエンゲージメントを高めるには、スムーズかつシームレスなサービスを提供し、全体的な顧客体験を妨げることなく、向上させることが重要だということです。

 

マルチローカル CEO、ジェームズ・リーバー(James Leaver)氏

 

 

Web3は新たな収益機会を大いにもたらす

Web3とコマースの接点を理解すれば、Web3で成功するための方法が見えてきます。私たちアルキミの調査では、従来のファネルに基づく成長戦略から、コミュニティの構築や透明性、セキュリティに重きを置くWeb3戦略への移行が進んでいることが明らかになりました。Web3の主要技術は、パーソナライズされたショッピング体験や革新的なリワード、データのプライバシーとセキュリティの強化を可能にし、新たな収益機会をもたらします。このような進歩はより多くの顧客を引きつけ、信頼を醸成します。Web3は将来のコマースをけん引する重要なポジションにあるのです。

 

アルキミ・エクスチェンジ CEO・共同創設者、ベン・プットリー(Ben Putley)氏

 

 

バーチャルコマースが視野に

コロナ禍以来、ブランドの現実のアイデンティティとオンライン上のアイデンティティが交差したり、融合したりする事例が増えてきました。そして、デジタル資産を活用することで、ブランドのオンラインプレゼンスを強化できることも明らかになってきました。

ブランドはすでにブロックチェーン上でデザインを開発し、消費者がそれを購入できるようにしています。例えば、アディダスやナイキのNFTコレクションはすぐに完売してしまいますが、それはブロックチェーン上のデジタル空間では、そのデザインが唯一無二のものだからです。これは、希少な資産には大きな需要があることを浮き彫りにしています。今後、時間が経つにつれ、この領域を模索するブランドがますます増えてきて、それが「バーチャルコマース」の時代へとつながるのだろうと予想しています。

 

SPHメディア イノベーション&フューチャリスト・アドボケート ライオネル・チョック(Lionel Chok)氏

 

 

アテンションと行動の関連性を確立

EコマースにおけるWeb3の将来性については、これまでも多くの議論が交わされてきました。この新技術が、オンラインで製品やサービスを売買する方法に革命をもたらすポテンシャルを持っていることは間違いないでしょう。しかし、そうした議論の多くが仕組みの話に偏り過ぎているように感じます。真の問題は、リテールメディアがどの程度のアテンション(注目率)をもたらすかということです。そして、行動を促すにはどれくらいのアテンションが必要で、適切な水準のアテンションを得るにはどうしたらいいのか、消費者が目にしたその広告は、本当に実店舗での販売につながっているのか、ということなのです。アテンションと消費行動の関連を証明し、把握することで、はじめてオープンウェブにも黄金時代が到来するのです。そして、長い間ウォールドガーデンに支配されてきた競争の場もようやく正常化するのです。

 

ルーメン CEO、マイク・フォレット(Mike Follett)氏

 

 

ブランドにとって今は準備の時

Web3は、小売業界に革命をもたらす可能性を秘めた多くの分野をカバーしていますが、革命はまだ本格的に始まったわけではありません。業界内で次々に導入され、主流となるためには、Web3の技術開発がさらに進展し、もっと成熟する必要があります。

とはいえ5年後には、コマースが、Web3体験とWeb3技術にけん引されている可能性は高いでしょう。これには、ブロックチェーン技術の採用や、メタバースにおけるカスタマイズ可能な、没入型のショッピング体験の創出が含まれます。アップルが何年も前から行っているような店頭での顧客体験は、ブランドが実店舗を維持している主な理由の一つです。しかし、Web3はこの顧客体験をまったく新しいレベルに引き上げるかもしれません。よって、小売ブランドがWeb3に向けて長期的な戦略を検討することは重要です。しかしまだ、本格導入には時期尚早かもしれません。

 

ガムガム EMEAジェネラルマネージャー、ピート・ウォレス(Pete Wallace)氏

 

 

ブランドと消費者が共にWeb3導入から恩恵を受ける

Web3の技術は確立されており、すでに多くの消費者がWeb3プラットフォームで、快適にサービスを利用し、取引を行っています。この技術が主流になるにつれ、Web3ベースのEコマースを使い始める消費者がもっと増え、ごく普通の存在になると予想されます。これは、デジタル広告の世界にとって大きなチャンスです。私たちショウヒーローズは、ブランドがオンライン広告に商取引機能の組み込みを望んでいることを理解しています。これには、オンライン動画やコネクテッドTVなどの主要プラットフォームが含まれます。Web3技術は、こうした商取引を促進するための、安全、安心、透明な手段を提供し、ブランドと消費者の双方に恩恵をもたらすでしょう。

 

ショウヒーローズ・グループ 英国カントリーマネージャー、スティーブン・フィラー(Steven Filler)氏

 

 

消費者行動の変化がWeb3の基盤を築く

コロナ禍が実店舗販売に大きなブレーキをかけ、デジタルコマースのイノベーションが一気に加速しました。私たちは今、コマースのDXサイクルが一段落し、これが消費者の行動をどのように変化させたかを目にしています。AR(拡張現実)や動画、ライブストリーミングなどは、デジタルコマースと非常に相性が良いため、リワード動画広告、デジタル通貨、利便性の高いプレミアムデジタルサービスなどがさらに普及することになるでしょう。

 

 InMobi バーティカル戦略責任者、ジャスティン・スパークス(Justin Sparks)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

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2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。