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データクリーンルームは本当に普及するのか?データビジネス最前線の3人がその課題と展望を語る。―ATS Tokyo 2023イベントレポート(4)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が12月8日、都内にて開催された。

 

「データクリーンルームは本当に普及するのか?データビジネス最前線の3人がその課題と展望を語る。」をテーマとしたセッションには、株式会社電通 データ・テクノロジーセンター 部長 前川 駿氏、Globalive株式会社 代表取締役社長 梅野 浩介氏、読売新聞東京本社イノベーション本部 専門委員 國谷 一樹氏が登壇。

様々な立場でデータビジネスの最前線で活躍する3人が、ファーストパーティデータ活用における次のステップともいえる、データクリーンルームについての課題や展望についての議論が交わされた。

 

データクリーンルームとは、プライバシーが保全されたセキュア環境において、データの統合・分析をおこなうことのできる環境(クラウド)のことを指し、クッキーレス時代の高度なデータマーケティングとの両立を実現するための新しい手法として注目を集めている。

 

前川氏

 

前川氏はデータクリーンルームの活用について、「①GoogleやMetaのように広告事業を展開するプラットフォーム事業社が、広告の最適化を活用の主目的に、同意許諾の取得されているデータ付でクラウドとして提供されるもの」「②SnowflakeやLiveRampのように独立系のIaaSビジネス(クラウドソリューション)事業社が、CRMを活用の主目的に、データは提供せず、あくまでデータを突合するためのクラウドとして提供するもの」の2種類があると整理。

 

梅野氏

 

これに対して梅野氏は「Globaliveは後者である」と説明したうえで、「データクリーンルームはデータコラボレーションツールだと思っている」と説明。「複数の媒体社やデータホルダー、広告主が互いに声をかけて広告配信や分析をしていただくのが一番理想的だろう」と推奨した。

 

國谷氏

 

國谷氏は、データ利用における同意許諾に係る関連法規への対応リスクについても踏まえながら「前者は目的がはっきりしているが、後者は先に目的や仮説を立ててから相手を探すのが良いのか、それとも先に相手を探してからデータを突合して見えてきたものから探せば良いのだろうか」と疑問を投げかけた。

 

前川氏はこの疑問に対して「『とりあえずやってみよう』だけでは何も生まれないのは、アドテクの歴史でも良く起きていたと思う」との見解を示し、「顧客体験を前提としたマーケティングROIとプライバシーの保護を両立させる役割をデータクリーンルームは果たしてくれる。議論は仕切れていないが、両面から取り組んでいくことが望ましい」とした。

 

本セッションのタイトルでもある「データクリーンルームは本当に普及するのか?」という問いでは、梅野氏は「本来のデータクリーンルームは総合運用性が整備されていなければスケーラブルをしていかないのではないのか。A社・B社がそれぞれ別のデータクリーンルームのソリューションを使われていても、データを上手く取り出せたりコラボレーションを出来たりできることが望ましい」と述べた。

 

 

前川氏も同意をする形で「広告の効果計測だけではなく、今回話題に挙がっていたコラボレーションによる、マーケティングの前段や特定ファネル・テーマに絞った運用なども進むような推進をしていきたい」と述べ、國谷氏は「我々のようなデータホルダーが動かなければならない、という自覚はあるが事例もまだ少ない。やってみないと分からない、だからやってみる、というのも手ではないかと考えている」と展望を述べた。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。