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ピンチをチャンスに。最新テクノロジーで広告主が「買いたくなる」メディアに―ATS Tokyo 2023イベントレポート(8)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が12月8日、都内にて開催された。

 

「ピンチをチャンスに。最新テクノロジーで広告主が「買いたくなる」メディアに」をテーマとしたセッションには、株式会社フジテレビジョン 総合報道戦略局 マルチメディア推進部 木下英明氏、ソニーマーケティング株式会社 カスタマーマーケティング部門 マーケティングコミュニケーション部 メディア企画管理課 統括課長 柴田裕紀氏、株式会社FLUX取締役 平田慎乃輔氏が登壇。

 

昨今のパブリッシャーが抱える外部環境の変化は凄まじいものである。クッキーレスに始まり、大手プラットフォーマーの台頭により、そもそも新たな読者の獲得さえも厳しさを増している。内部環境においても、プログラマティック広告の運用や純広告販売で優秀な人材を確保することに苦慮している。このセッションでは、パブリッシャーが置かれている環境を紐解きながら、最新テクノロジーを通じて広告主が「買いたくなる」メディア、つまり「売れる」メディアの実現についてディスカッションを行った。

 

柴田氏

 

「現在のデジタル広告ビジネスにおいて認識されている課題とその対策について」というテーマでは、柴田氏が広告を買う側の立場から「効率や価格を優先するあまり、広告手法も刈り取り型で、出稿先も大手に偏っている。また、クッキーレスにより、プランニングメンバーもデータの生成・活用について習熟していかなければならない」と課題を挙げた。

 

広告を売る側の立場である木下氏は、同社が運営するニュースサイト『FNNプライムオンライン』では、CPMおよび収益の改善が目下の課題になっていることを伝え、「プログラマティック広告がメインの媒体にとって、動画サイト含む大手媒体に可処分時間が寄っているのは大変な状況。現在はDMPの導入も始めており、広告レポートや運用型広告への活用や課題解決に向けて、トライアンドエラーに取り組んでいる」と現状を伝えた。

 

木下氏

 

両者のコメントを受けて、アドテクベンダーの立場から平田氏は「広告単価が下がっているからといって、無暗に広告枠を追加するなど、メディアのユーザービリティを損なう対応は望ましくない」と提言した。広告枠の価値を一つひとつあげていくために、様々なソリューションを複合的に組合せていくことが重要であると呼び掛けた。

 

本セッションのテーマにもなっている「買いたくなるメディア」については、柴田氏が「テレビやヘッドホンなど様々な商材をソニーとして抱えるなか、各商材への興味関心にマッチしたメディアに広告を出せるようになるのが一番理想的な形である」と回答。また、木下氏は「広告運用担当者としては収益性をあげるためにも、ビューアビリティだけでなくブランドセーフティなども含めて、『当社のドメイン・広告枠は良いものですよ』と言えるようにしていきたい」と展望を語った。

 

平田氏

 

両者のコメントを統括し、平田氏は「商品・商材に合わせた広告枠をマッチングさせるために、コンテキストターゲティングやバーティカル型アドネットワークの活用など、テクノロジーによる解決に取り組んでいる」と報告。「テクノロジーを使って体系化をしていくのは広告主とメディアの間に立っている我々のお仕事」としながら「今後、具体的な手法が確立されていけば、メディアの皆さんから新たなアイデアやメニューもあがり、まさに広告主が「買いたくなるメディア」になっていくのではないか」と期待感を寄せた。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。