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各プラットフォームの仕様・規制・制度に対するパブリッシャーの適切なアプローチとは―ATS Tokyo 2023イベントレポート(3)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が2023年12月8日、都内にて開催された。

 

「各プラットフォームの仕様・規制・制度に対するパブリッシャーの適切なアプローチとは」と題した本セッションには、株式会社アイモバイル 執行役員 メディアソリューション事業本部 本部長 甲斐 康浩氏、株式会社ドワンゴ ニコニコ事業本部メディア事業部 部長 永山 隆浩氏、株式会社ソシオコーポレーション メディア事業部 Manager 瓦野 晋治氏が登壇した。

 

これまで大きな影響を受けた仕様変更として、各登壇者は「ITPの標準装備開始」「IDFA取得の同意必須化」「オーバーレイ広告の規制適用開始」などに言及。こうした大きな変更に関する情報収集方法を問われた永山氏は、情報が錯綜する可能性をも踏まえ、「様々な立場に立つ関係者からの情報を集めながら、その仕様変更についての解像度を上げていくべき」と述べた。

 

 

また瓦野氏は、リリース直後の段階では新たな機能や仕組みは十分に整備されていない状況が多くあることから、該当する機能が何を目指しているかまでを想像することの必要性を指摘。甲斐氏は正確な情報を得るために、仕様変更を行った広告プラットフォームに対して直接的に確認を取っていると報告した。

 

また永山氏はATTダイアログの表示、瓦野氏は不適切な広告、甲斐氏は2023年ごろから急増した広告プラットフォームのペナルティ「確認クリック」などへの具体的な対応事例を紹介。これらの事例が象徴するように、近年はユーザーと広告主の利益を最大化することが優先され、パブリッシャーはそのあおりを受ける傾向にあるとの見解で一致した。

 

こうした状況を踏まえ、永山氏は、プライバシー規制が今後さらに加速していくことを想定した上で、法務部門や情報セキュリティ部門との連携を強化すべきと発言。瓦野氏は、大手広告プラットフォームへの依存から脱却するため、プログラマティック広告以外のマネタイズ方法の模索を提案した。

 

 

さらに甲斐氏は、ターゲティング規制の影響による広告単価の低下を補うために、過剰にクリックを誘発するような仕組みに手を伸ばせば、ユーザーや広告主からの理解を得られず、広告プラットフォームによる新たな規制対象となると警告。パブリッシャー、ユーザー、広告主にとって「三方良し」な広告実装が必要になる点や、アクセス数の増加や媒体価値を上げるためパブリッシャーが提供するコンテンツの独自性と差別化の重要性が今後さらに増していくとの考えを示した。

 

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。