デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が2023年12月8日、都内にて開催された。

「グローバル市場における標準化動向について」をテーマとしたセッションには、IAB Tech LabのExecutive Vice President, Product & Chief Operating Officerを務めるシェイリー・シング氏が登壇した。

シング氏は、広告に関するグローバルなデジタル基準を策定することを主な目的として設立されたIABの概要を紹介。これまでに広告の入札をリアルタイムで取引する方式となるOpen RTB（Real Time Bidding）、オンライン広告の不正を減らすためのads.txt、アドサーバーと動画プレイヤー間でのデータの受け渡し方法を定めたテンプレートとなるVAST（Video Ad Serving Template）、ビューアビリティ計測など広告の視認性を測定するためのOpen Measurement SDKなど、現在のオンライン広告業界で広く採用されている規格や技術の標準化を実現してきたと説明した。

また近年では、プライバシー保護の強化が進められていることを受けて、データクリーンルーム、IDソリューション、プライバシーサンドボックスといった技術の標準化にも取り組んでいると報告。一方で、いくつかの取り組みにはまだ多くの課題が残されているとも伝えた。とりわけ媒体社がユーザーデータを外部機関に共有することなくターゲティング可能なオーディエンスセグメントを作成するためのSeller-Defined Audiencesについては、サードパーティCookieが利用可能な現状においては業界関係者から十分な関心を得ることができていないと指摘。また標準化が進むためには、広告主を始めとするバイサイドの理解を得ることが鍵になるとも述べた。

さらにシング氏は、IABによる2024年以降の取り組みを示したロードマップを提示。プライバシーに関するユーザーの同意についての設定を保存などするためのGlobal Privacy Platformや、主にコネクテッドテレビ広告向けのCreative ID frameworkなどの標準化に注力していくとの考えを示した。