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プレイヤーたちに聞く!デジタルサイネージ広告最前線〜LIVE BOARD編〜[インタビュー]

デジタルサイネージ広告市場はコロナ禍からの回復で市場規模は2019年を超え、特に都内の主要エリアでの大型ビジョンや、小売店でのデジタルサイネージの設置が進み市場が拡大している。3rd Party Cookieの規制が話題になる中で、注目を集めるデジタルサイネージメディア。タクシーサイネージメディア「GROWTH」やオフィス喫煙所サイネージメディア「BREAK」など複数のデジタルサイネージメディアを運営する株式会社ニューステクノロジー代表取締役 三浦 純揮が市場を取り巻くプレイヤーたちにインタビューを行い、今後の市場動向を読み解いていく。

 

※対談・インタビューの参加者は次のとおり。

株式会社 LIVE BOARD 櫻井 順 代表取締役社長(カバー写真)
株式会社ニューステクノロジー 三浦 純揮 代表取締役

 

記事提供:株式会社ニューステクノロジー

 

コロナ禍での逆境が事業成長へ

三浦:御社はDOOHを運営されていますが、LIVE BOARDさんが出てくるまで、DOOHという言葉自体が市場になかったような気がしていますがいかがでしょうか?

 

櫻井氏:まずDOOHとは、Digital Out of Homeの略で、交通広告、屋外広告、商業施設などに設置されたデジタルサイネージを活用した広告媒体を指しています。弊社は、設立の2019年から、このDOOHを活用した広告販売を推進しておりましたので、DOOHという言葉の認知に貢献できたのでしたら嬉しい限りです。

 

また、昨今ではプログラマティックOOHという言葉も広がりつつあり、我々が得意とするOOHのプログラマティック広告がより活用されることを期待しています。

 

三浦:業界的にデジタルサイネージといったり、LEDパネルといったり、様々な呼び方がありますよね。呼び方もそうですが、昨今のOOH市場はコロナ禍前後で変化があったと個人的に考えています。櫻井さんはどのように感じていらっしゃいますか?

 

 

櫻井氏:そうですね、特にコロナ禍の前後で、よりDOOHの存在感が強まったと感じています。人流が減ることでOOHの魅力の1つである不特定多数にリーチすることが難しくなったことから、OOHに関しても広告主や広告会社がより効果の可視化を求める傾向が強くなりました。そのような需要に対して、当社は独自のデータを提供できましたし、コロナ禍での環境変化により、さらなる“データ化”にむけて会社としても舵を切るきっかけになり、技術面・事業面で成長することができました。

 

デジタルOOH、アナログOOHの真価

三浦:広告主にとって、効果の可視化は広告出稿の決め手の1つですよね。一方で、効果の可視化が難しいアナログのOOHが今後どうなっていくのかが気になります。

 

櫻井氏:世界の傾向を見ても、日本国内のDOOH化は進んでいくと予測しています。

 

DOOH先進国といわれるオーストラリアでは、DOOHとアナログの割合が7:3なのに対して日本国内DOOHは20%〜30%台のイメージですので、まだまだ伸び代はあります。

 

一方で、同じ広告を出し続けるアナログのOOHの強みは、常にその場所にある、その場所に行けば100%出会える部分にあり、その点を魅力に感じる広告主もいます。ですので、完全にデジタル化してしまうというよりは、デジタルとアナログは共存していくことになると考えています。

 

 

三浦:たしかにそうですね。渋谷のハチ公で例えると、ハチ公が1時間毎に別の動物になっていたとしたら、今のような有名な待ち合わせ場所には成り得ないですよね。やはり、その空間やその場所に存在し続ける強みについては僕も同意見です。

 

反対に、デジタル広告は取引が自動的に処理されていくので、いつ・どこに・なにが流れているかわからないという側面がありますよね。

 

OOHの魅力の1つである、その広告を“見た感”は数値化できるものでしょうか?

 

櫻井氏:はい、LIVE BOARDでは「世の中ゴト効果」と呼んでいるのですが、こういったことを実現するために必要なインプレッション数については調査結果が出ています。

https://liveboard.co.jp/information/202201000081.html

 

理論上では出せるのですが、イコール実感値というレベルになるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

 

最適なフリークエンシーについては実際に広告主からもよく質問されるテーマですので、引き続き、人の生活動線上での中長期的なコミュニケーション設計について研究を重ねていきたいと考えています。

 

 

モーメント×クリエイティブで屋外広告の価値を最大化

三浦:改めてになるのですが、DOOHの魅力と今後の目標や戦略についてお伺いできますか?

 

櫻井氏:

DOOHの魅力は、

①ディスプレイの技術(解像度や3D等)向上で質の高い広告を届けることができる

②多様なクリエイティブや表現に対応

③ターゲットに応じた柔軟な配信ができる

この3点ですね。今掲げている目標は、TVやラジオなどマスコミ四媒体やインターネット広告などを含めて、全体の広告予算のうちのOOH予算である6%を伸ばしていくことです。そのためには、家の外(Out of Home)の接点をしっかり抑えるという意味で様々なロケーションや面との連携を進め、広告主のニーズに合わせて最適なプランニングができる環境を作ることが必要です。

 

三浦:アナログなOOHにも通ずることですが、②のクリエイティブ要素はとても重要ですよね。何を出すかよりも、どう出すか、どう表現するのかがOOH施策成功の肝ですよね。

 

櫻井氏:おっしゃる通りです。ただ屋外広告を掲示するだけでは、世の中ゴトとして“大きなうねり”を作り出すことはできません。クリエイティブ視点でDOOHを活用した成功事例としていつもご紹介しているプロジェクトがあり、ご紹介させてください。

 

 マクドナルド プロモーション企画「ランダムマック」

 

これは、プログラマティック配信をフルに活用し、天気や時間、シチュエーションに応じて変化するQRコードを掲示した事例です。

 

QRコードを読み取ると、マクドナルドのメニューがランダムに表示され、スマホからそのままオーダーする仕組みで、2022/4/11(月)〜4/24(日)の実施期間中、2,074,334人の方にご参加いただきました。シチュエーションに合わせた広告配信を行うことで、認知だけでなくアクションにまで繋げることができた好事例ですね。

 

天気や時間の他にも様々なシチュエーションに合わせて配信することを「モーメント配信」と呼んでいるのですが、広告主の関連ニュースの直後に広告を放映したり、QRコードを読み込み、スマートフォン画面で作成したメッセージをリアルタイムで屋外ビジョンに表示するリアルタイムでの連携も可能です。

 

OOHの価値を可視化し、OOH全体予算を底上げ

三浦:OOHはリアルの場や空間で人との接点を作るので、リアルタイムでの連携であったり、ライブ感を提供できることで、より人々の記憶に残る施策ができますね。

 

こういった視点でプランニングされる事例が増えていくと、DOOHのシェアがさらに広がってきそうですね。なにか課題などは感じていらっしゃいますか?

 

櫻井氏:OOH業界全体で言うと今、追い風がきていると感じています。2021年のコロナ禍ではステイホームの状況下でテレビの広告出稿がやや回復しましたが、それ以降は依然として若年層を中心に視聴者は減少し続けています。また、デジタル広告でCookie規制が進む今、OOHの公共性の高さや、いつもその場所にある安心感や信頼感の価値を訴求していけたら、OOHがその受け皿に成り得るのではないでしょうか。

 

一方で課題としては、OOH媒体の一括管理ができない状況にあることだと考えます。元々、屋外広告の持ち主がビルのオーナーであったり、オーナーが点在しているんですよね。ですから、我々のようなプラットフォームが様々な場所・面との連携を強めていき、業界全体の横串を通す役割を担っていき、OOH業界の底上げを図っていく必要性を感じています。

 

OOH業界の底上げを図っていくためにも、LIVE BOARDとしてはテレビやデジタルでは担えない役割を可視化・データを蓄積しながら、テレビ・デジタル・DOOHのトリプルメディアでネットワークを拡げていきたいと考えています。

 

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。