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生活クラブがAnother Milkキャンペーンで得たことと、次なる挑戦とは?! [インタビュー]

国産、添加物削減、減農薬にこだわり、安心・安全な食材を提供する大手生協の生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(通称:生活クラブ)。

「サステイナブル(持続可能)な生活」を支持し、国内の食料自給率を高めることを目指し、生産者と消費者である組合員がつながり、長く愛される製品を共に作り続けている。

生活クラブが取り扱う数ある製品の一つに、「パスチャライズド牛乳」がある。
生活クラブは、馴染み深いこの製品を活用し、昔からある他の牛乳との違いにフォーカスをあてた動画を作成。Teadsのインリード広告として配信した結果、生活クラブのブランド認知度・好意度を高め、新規会員獲得数の増加に寄与することが出来た。

牛乳を試飲した消費者の驚きの反応を、AIで測定し、3Dクリエイティブで魅せるというユニークなクリエイティブが、「パスチャライズド牛乳」をこれまで知らなかった消費者に、その高い品質についての気づきを与えることが出来た、この「Another Milkキャンペーン」。

出典:Teads

実施の背景、クリエイティブの着想から実施した結果について、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 情報企画部 広報課 課長 山田鞠子氏、ENJIN クリエイティブディレクター・アートディレクター 川田 拓人氏、アカウントサービス シニアスーパーバイザー 加藤剛史氏、メディアプランニングディレクター斎藤謙一氏、そしてTeads Japan アカウントエグゼクティブ 佐藤 眞輝氏が、対談形式で振り返った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

-自己紹介をお願いします。

山田氏(生活クラブ):生活クラブ連合会情報企画部広報課の山田鞠子です。生活クラブとして表に出る情報発信全てを担っており、PR活動としてのメディアアプローチ、自社HP、SNS、雑誌広告、Web広告など全般を管理しています。プロジェクトベースで広告出稿を通して、組合員を増やす活動も行っています。

川田氏(ENJIN):ENJINでクリエイティブディレクターを務めている川田です。生活クラブ様のプロモーションブランと、クリエイティブ全般を担当しています。

加藤氏(ENJIN):ENJINでアカウントサービスを担当している加藤です。生活クラブ様のプロジェクトの全体的なプランニングや進行を担当しています。

斎藤氏(ENJIN):ENJINでメディアプランニングディレクターをしている斎藤です。生活クラブ様のキャンペーンメッセージを効率的かつ効果的にターゲットオーディエンスへ届けるメディア戦略とプランの策定を担当しております。

佐藤氏(Teads):Teadsでセールスとして生活クラブ様、ENJIN様を担当している佐藤と申します。Teadsは広告配信プラットフォームとして、今回のキャンペーンにおいて、コンテンツ配信とターゲティングの部分でサポートを提供しました。

山田氏(生活クラブ):生活クラブの正式名称は、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会といいます。いわゆる食材宅配の生協にカテゴライズされますが、食品添加物や農薬を削減した安心・安全なオリジナル食品を国内の生産者と一緒に開発しているというのが特徴です。関東では大手生協の一つで、主に第一次産品、加工食品、飲料を中心に、雑貨類も含めて取り扱っています。

 

国内酪農家を支援する

-今回実施したAnother Milkキャンペーンを実施した目的についてお聞かせください。数ある生活クラブの製品の中から、今回パスチャライズド牛乳を取り上げたのはどのような理由でしょうか?

 

山田氏(生活クラブ):Another Milkキャンペーンの実施に至ったのは、生活クラブを使っていただく人、つまり会員数を増やすという大きな目的がありました。そのために、まず生活クラブの認知度を上げることが必要でした。そして、数ある生協の中からいかに生活クラブを選んでいただくかということが課題でした。

生活クラブの品物は低価格ではないものの、一つ一つの品質が高いので、その理由を知っていただければ、国産や安心安全に共感する方々に選んでいただけると信じています。
それ以前に、認知度が高くなければその選択肢にすら上がらないため、そこにフォーカスする必要がありました。

国内生産者の持続可能性を守るという理念に共感いただける方には、生活クラブを選択いただいているように思います。
これまでは、生活クラブの認知度を上げる施策と加入を促進する施策がバラバラに動いていましたが、今回は一つのキャンペーンテーマを掲げ、認知から会員獲得、そして製品購買までを一気通貫で行いたいと考えました。そのために、ENJINさんと一緒に当社の牛乳に着目し、この情報をもとに様々な媒体で情報を出していくキャンペーンを展開しました。

 

 

川田氏(ENJIN):キャンペーンで、パスチャライズド牛乳を取り上げた理由には複合的な背景があります。2023年冬の酪農危機が起こりました。子牛の価格が暴落し、牛乳の価格が上がらないにもかかわらず飼料価格が高騰するという、酪農家の経営が非常に厳しい状況に陥りました。このタイミングで酪農家を支援するためのキャンペーンを展開することに意義がありました。

山田氏(生活クラブ):生活クラブとしては、酪農家を支援するために何か行動しなければいけないという思いが強くありました。

また、生活クラブはもともと牛乳から始まりました。その牛乳に対する想いが、今の私たちの活動の原点でもあります。そこでENJINさんと一緒に、牛乳に着目したキャンペーンを展開することになりました。

パスチャライズド牛乳は一般的な牛乳と殺菌温度が異なり、72度15秒間殺菌で作られています。これは、牛乳本来の風味や栄養価を最大限に活かすための製法であり、日本ではあまり飲まれていない珍しい牛乳です。こうした特長や歴史、ストーリーを持つパスチャライズド牛乳を前面に打ち出すことで、生活クラブの理念を伝えられると考えたのです。

 

 

加藤氏(ENJIN):今回、生活クラブ様がWebでの会員獲得に舵を切るタイミングでもありました。
牛乳から始める原点回帰という戦略は非常に意義があるものでした。特にこのパスチャライズド牛乳は、生活クラブの理念や品質へのこだわりを象徴する製品として最適だったと思います。

 

パスチャライズド牛乳で伝える、生活クラブの理念や目指すこと

-このパスチャライズド牛乳をキャンペーンで取り上げる際、重視したポイントは何ですか?

川田氏(ENJIN):パスチャライズド牛乳は、低い温度でゆっくり殺菌することで、牛乳本来の風味や栄養を損なわずに提供できる製法です。この牛乳ですが、実は海外ではかなり一般的なものです。しかし、日本の市場ではまだ一般的ではありません。多くの人が馴染みのある牛乳といえば高温殺菌されたものが主流です。この点で生活クラブのパスチャライズド牛乳は、他とは一線を画す製品であるといえます。

山田氏(生活クラブ):生活クラブでは、品質と安全性にとことんこだわっています。この牛乳もその一環で、私たちは生産者と一緒にこの製法を守り続けてきました。牛乳の味わいや香りをしっかり感じていただけるという点で、他の牛乳とは違う存在感を持っているのです。また、酪農家の支援という面でも、この牛乳を選んでいただくことが国内酪農の持続性を支えることにつながっています。

川田氏(ENJIN):先ほどお伝えした通り、国内酪農の持続性という観点から見ても、このキャンペーンの意義は大きいです。日本の消費者にとっては、パスチャライズド牛乳はまだあまり知られていない存在ですが、これを知ってもらうことで、生活クラブが提供する理念や価値をより深く理解していただけるいいきっかけになると考えました。

山田氏(生活クラブ):私たちはこの牛乳の素晴らしさをずっと当たり前のものとして提供してきました。しかし、ENJINさんと組むことで、改めて外部の目線からその価値に気づかされました。自分たちにとっての当たり前は、実は特別なことであるということを再認識できたのです。この牛乳が持つ価値をもっと多くの人に知ってもらいたいと思いました。

パスチャライズド牛乳を通して、生活クラブの理念や取り組み、そして国内生産者を支える意義を伝えられればと思いました。消費者の皆さんにとっても、新しい選択肢としてこの牛乳を知っていただくことで、食に対する意識や選び方に変化が生まれるのではないかと期待しています。

 

Teadsだからこそ、ターゲットに届けられたメッセージ

-数あるプラットフォームの中で、Teadsの利用価値はどのような点でしたでしょうか。

加藤氏(ENJIN):Teadsさんの広告フォーマットは記事コンテンツの中に表示されるインリード広告であり、生活クラブのパスチャライズド牛乳のような製品の特長を伝えるのに最適です。ターゲティングの精度が非常に高く、セグメントされたターゲットに対して的確にメッセージを届けられるのが大きな特徴です。また、広告の配信先媒体も高品質で信頼性の高いものに限られているため、生活クラブのようなブランド価値を重視する企業にとって非常に魅力的なプラットフォームです。

 

 

斎藤氏(ENJIN):特にTeadsさんの広告が持つ自由度とインタラクティブなクリエイティブ表現は、スマホならではのユーザーエンゲージメントを最大化するのに役立ちました。通常のバナー広告や動画広告と違い、ただ広告メッセージが配信されるだけではなくTeadsさんの持つ広告表現フォーマットとクリエイティブ、そして記事文脈とが一体感を持った広告表示が可能ですので、ユーザーの注意を引き付ける効果が非常に高いと感じました。

川田氏(ENJIN):私が初めてTeadsさんとお仕事をご一緒させていただいた際に感じたのは、クリエイティブ素材の使い方が非常に巧みだということです。私たちが作ったクリエイティブを、Teadsのフォーマットにうまく組み込んで、より効果的な広告に仕立て上げてくれるという印象を受けました。これによって、クリエイティブ制作側としては、効果的なアプローチが可能という予測がたち、より意欲的に取り組むことができました。

山田氏(生活クラブ):また、動画広告といえばインストリーム動画広告というイメージが強かった中で、アウトストリーム広告の提案を受けたことは新鮮でした。記事中に自然に溶け込む形で動画を配信できるという点が、私たちのブランドにとっても非常にメリットがありました。特にコンテキストターゲティングの強みを活かして、生活クラブの価値を理解してくれそうなユーザー層に的確にリーチできた点は大きかったです。

 

 

佐藤氏(Teads):Teadsの広告は記事中に表示されるため、ユーザーがどのようなモーメントでその広告に触れるかを非常に意識しています。生活クラブ様に加入していただくターゲットのペルソナをしっかりと分析し、コンテキストターゲティング技術を駆使して最適なタイミングで広告を表示することができました。また、サードパーティー・クッキーの問題が取り沙汰される中、Teadsの独自のターゲティングテクノロジーは、クッキーレス環境でもしっかりとユーザーにリーチできるという強みを持っています。

斎藤氏(ENJIN):Teadsさんの広告配信先が高品質な媒体に限定されていることで、広告が表示されるコンテキストが生活クラブのブランドイメージとマッチしていたのもポイントでした。記事の内容と広告メッセージが一貫性を持ってユーザーに届くことで、ブランドの認知度向上だけでなく、ブランド好意度の向上にもつながったのではないかと感じています。

出典:Teads
ページ下欄よりケーススタディーをダウンロードいただけます。

 

加藤氏(ENJIN):結果として、ブランドリフト調査でも好意度が37.5%向上し、他の広告プラットフォームと比較しても、Teadsのパフォーマンスは非常に高かったです。ユーザーが広告をクリックした先のランディングページでの滞在時間も長く、エンゲージメントの高さが明らかになりました。これは、コンテンツと広告の自然な融合と、ユーザーが広告に対して興味を持つタイミングで適切にリーチできたことの成果だと思います。

 

ENJINとTeadsが、クリエイティブで伝えたかったこと

-今回のキャンペーンで使用されているクリエイティブについて、どのようにしてこのアイディアが浮かんだのでしょうか?

佐藤氏(Teads):今回のキャンペーンで使用されている3Dクリエイティブは、新しい価値を作り出すためのアイディアが詰まっています。単純に牛乳を訴求するだけではなく、背景にあるストーリーを伝えるためにどう表現するかが重要でした。

川田氏(ENJIN):生活クラブ様のパスチャライズド牛乳は、実際に飲んでみないと違いが分かりにくい製品です。そこで、牛乳を飲んだ時の素直な表情をAI技術で計測し、飲み比べのリアクションをクリエイティブに取り入れるというアイディアに至りました。この製品の特別さを伝えるためには、見た目だけではなく、飲んだときの体験をAIを使って科学的に視覚化することが重要だと考えたのです。

山田氏(生活クラブ):私たちにとっては50年以上取り扱っている当たり前の製品ですが、新しさを打ち出したPRをしていただくことで、その価値を再確認できました。飲んだときのリアクションでその違いを伝えるという発想はとても新鮮で、今までのまじめ一辺倒なアプローチとは異なる、新しい伝え方のヒントをいただきました。

加藤氏(ENJIN):キャンペーンのパフォーマンスについても、クリエイティブと配信面との高いマッチングが実現し、ブランド好意度も実施前と比較して想定以上の高いパフォーマンスを発揮できました。Teadsの広告プラットフォームを活用し、質の高いトラフィックを獲得できたことが、ユーザーとのエンゲージメント向上に繋がったと考えています。

 

「作り手」のためにも「食べ手」を増やし続けていく-生活クラブの今後

-今後の施策について、どのようなことを予定されていますか。今後生活クラブ様として、目指していきたい方向についてお聞かせください。

山田氏(生活クラブ):今後展開していく施策の目的は、今回と変わらずまずは認知を取り、会員獲得を図り、会員数を拡大して「食べ手」を増やしていくことです。
継続して利用する人が一定数いれば、生産者も安心して農作物を作り続けられます。そのためにも会員数を維持拡大して食べ手を増やしていかねばと思います。それこそが持続可能な生産と消費の体系づくりとなると私どもは考えています。

私たちが国内産の食品を食べ続けることで、国内の生産者も作り続けることができるというように、食料自給の向上には作る側と食べる側との両輪で回していくことが大切です。そのために、どのような手法で何を誰に見せていくのかということを、ENJINさんと一緒に開発して展開していくという枠組みで進められればと考えています。

生活クラブには古くから取り扱っているベストセラー製品が数多くあり、組合員の方から愛されておりそれぞれにストーリーがあります。このことをENJINさんとご一緒させていただき改めて気づかされました。

我々の理念である国内の食料自給率を上げていこうという考え方は、今の時代に適合しており、消費者の方からも受け入れられるものですが、それを理由に生活クラブの会員になっていただくという行動に至るまでには距離がありました。今回の「Another Milkキャンペーン」のように、取り扱っている製品から消費者の興味関心を高めてもらい、それをきっかけに会員になっていただくという手法が、新たな会員獲得をするうえで上手くいくのだろうと感じています。

牛乳のほかにも、皆さんにお伝えしていきたい素晴らしい製品がまだまだあります。今後も、私たちにとっては古くて当たり前のように思っていたものを、新しい見せ方や、新しいテクノロジーを用いて、私たちの理念も含めて消費者にお伝えしていきたいと考えています。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。