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Teads に聞く、広告のアテンションという考え方と新しいビジネス[インタビュー]

 

近年グローバル市場では、広告のアテンションという新しい考え方が広がりつつある。どのような考え方なのだろうか?同社の今後の事業戦略と合わせて、Teads Japan株式会社 マネージング・ディレクター今村 幸彦氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

 

広告における、アテンションという考え方

―アテンションについてお聞かせください

アテンションは、日本語で「注目」と訳されます。ビューアビリティというのは、「見られる可能性がある」というものですが、ではその広告は本当にユーザーに見られているのだろうかというようなところを、しっかりと見ていこう。それがアテンションという考え方です。

これは、Teadsに限らず海外では大手広告代理店グループで話題になっている言葉です。「アテンションを見ていきましょう」、「アテンションをしっかりと捉えて見ていきましょう」というような話がなされるようになり、リサーチも進んでいます。

アテンションエコノミーというのは、もともとは90年代米国の社会学者が、情報の正しさや、情報発信元の信頼性というようなものにこれまでは価値があったものが、ソーシャルメディアの発達と情報量の増加により、信頼性や正確さよりも、どれほどアイキャッチングなものか、どれだけ人の注目を集められるものなのかというようなところに、経済的価値が移っていくと提唱したものです。

今あるフェイクニュースや、炎上マーケティングなどがその悪例として挙げられていますが、大手企業のマーケティング活動においても、やはりアテンションを意識した広告活動をしていかなければならないということを、広告代理店が提言しています。そこで、創業当初より世界のトップクラスのパブリッシャーや、広告主とお付き合いをしているTeadsとしては、どのようにアテンションを高めていけるのかということを、積極的に追求し続けています。

やはり、当たり前の話ではありますが、広告が注目を集めるためには、「Connection:注目を集めるためにいかに適切な人々にアプローチするか」、「Context:消費者が情報を寛容するベストな環境文脈はなにか」、「Contest:最も大きなインパクトを与える適切なクリエイティブとメッセージとは」というような、これらすべてがいわゆる肯定的な広告体験というものに結び付くものになっていて、やはりアテンションをしっかりと獲得して、肯定的な体験を増やすことが広告の目的です。

そして、良質な広告体験は消費者、広告主、パブリッシャーの3者の相互理解のもとで成り立ちます。

Teadsでは早期よりアテンションを研究してまいりました。2018年には独自に自社のキャンペーン内でどういった広告表現が、消費者の視線をとらえているのであろうかという分析を実施しました。

2021年には電通インターナショナル社を中心に業界複数社が集まり3年間にわたり「人々にアテンションを与える要素が何であるのか」を共同研究した結果を取りまとめた調査レポートを、2021年夏に公表しました。そして2022年には、HAVAS社とTeadsとによるTrinity Projectと題し、アテンションとメディアとの相関関係を分析しました。

研究開発が進む、アテンションをベースにした広告ビジネスモデル

デジタル広告には現在CPM、ViewableCPM、CPCV(視聴完了)といった認知に対する課金モデルや、CPC、CPAといったユーザーの具体的なアクションをベースにした課金モデルがあります。ですが、インプレッションや視聴完了と、クリックとの間を補完するものがあるのではないかということになると、これまで我々はブランドリフトサーベイをやってみたり、態度変容を調べたりすることで補完してきました。

将来は、アテンションを用いて、コスト・パー・アテンションで広告パフォーマンスを評価するという、新しい課金形態があってもいいのではないかと考えております。

電通インターナショナルが昨年発表した調査結果によると、消費者が1日にメディアに接触する時間は299分。そのうち広告に接している、すなわちビューアブルな状態であるのが、84分。ただ実際に、広告が消費者のアテンションを獲得できているのはたったの9分です。広告は、消費者のメディア接触時間の1%しか、アテンションを確保できていません。このようななかで、広告はいかにアテンション時間を確保していくかが、求められるのです。

当たり前のことかもしれませんが、広告のサイズが大きければ大きいほどアテンションを得られやすいのです。

一方、ビューアビリティというのは、その定義から小さいサイズの広告のほうが、高く出やすく、サイズが大きいバーティカル広告などは、ビューアビリティが低く出てしまう傾向があります。

電通インターナショナルのレポートでは、アテンションを引き出す4つのドライバーとして、Time in View(広告の視聴可能な表示時間)、User Choice(選択)、Creative(クリエイティブ)を挙げています。そして、Teadsの広告はこの4つ全てに適しております。

また、HAVASとの調査では、コンテンツへの関心が高ければ高いほど、その場所に掲載されている広告のアテンションが高く、また、スマートフォンにおいてはスクロール速度が遅ければ遅いほど、アテンションが取れる。そして、広告を視認できる時間が長いほど、アテンションを得られやすいという結果が出ています。

HAVASの調査結果で面白いのは、ニュースコンテンツというものは、広告のエンゲージメントやアテンションを取りやすい媒体であるということです。テキストが多ければ多いほど広告に対する注目度も高まります。これは弊社の実績からも見られる傾向であり、写真ばかり掲載されているコンテンツでは広告がアテンションを取りづらくなります。

また、1ページ当たりに広告が表示されている本数が少ないほうが、1広告当たりのアテンションが高まるという結果も出ています。

これらの調査結果をベースにすると、Teadsの広告は、アテンションが取りやすいということを申し上げることが出来ます。これは、Teadsが素晴らしいパブリッシャーの方々と提携させていただいているからにほかなりません。

 

 

Teadsにおける、アテンションの取り組み

Teadsは現在欧米市場では、複数のスタートアップ企業と共に、アテンション計測を開始しています。Teadsを通して実施したキャンペーンにおいて、どれだけのアテンションを取ることが出来たのかというレポートを取得できるようになっております。その後は、最適化が図れるようになり年内にはアテンションベースでのプランニングをすることが出来るようになります。

そして2023年には、アテンションベースでのバイイングを可能にしていくという計画です。日本においては別のタイムスケジュールで予定をしており、遅くとも2023年には調査を開始する予定です。

 

 

数々の新領域に挑戦、2023年の戦略

―Teadsの2023年の戦略についてお聞かせください

これまでお伝えしてきた、アテンションベースでの広告ビジネスに関する取り組みへの注力。ダイレクトレスポンス領域における広告プロダクトのリリース。そして、三つ目の施策としてオムニチャネル化というものが挙げられます。

そしてもう一つは、CTV・OTT領域におけるインストリーム広告の配信を日本では来年から開始します。これまでアウトストリーム領域に注力してきたTeadsですが、テレビCMの視聴が低下してきている中で、OTTにも注力してまいります。

また、Googleが計画を延期したとはいえ、すでに日本のインプレッションの半分以上がクッキーレスになっていますが、Teadsのプラットフォームにはクッキーレス配信機能が装備されています。この領域においても注力をしていきます。

また、ニールセンと共同で、TAR(Total Ad Ratings)に関する調査を実施しています。これにより、テレビとデジタルとで動画広告を展開したときに、リーチでどのくらい重複があり、デジタルでしか取れなかった人たちはどのくらいいて、その人たちのユーザー属性が補足できるようになり、テレビCMでリーチすることが出来ないユーザーリーチを広告主に提案することが出来るようになります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。