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日本型リテールメディア市場を切り拓く ―「リテールメディアJAPAN」設立の狙いと未来―

リテールメディア領域の成長に伴い、これを取り扱うメディアも増えつつある。

なかでも直近では、リテールメディアJAPANというサイトが立ち上がり、同領域の専門性の高い情報提供を開始している。

 サイト運営者の野口氏は、かつてGeoLogicを立ち上げて位置情報型広告の提供を開始、その後スマートニュースに参画し、同領域の事業をけん引しているアドテク業界の筋金入りのスペシャリストである。

野口氏に、サイト立ち上げの背景と今後の活動について、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

【リテールメディアJAPAN】

 

リテールメディアJAPAN

URL:https://www.retail-media.co.jp

 

リテールメディアの新時代へ! 専門メディア「リテールメディアJAPAN」誕生

 

―まずは野口さんの活動についてお聞かせください。

野口氏:今所属しているGeoLogicやスマートニュースグループとは別に、リテールメディアの将来性に可能性を感じて、メディアを立ち上げました。

所属にとらわれない中立な立場で運営したいこともあって、2024年12月に株式会社ライトメディアという名前で独立資本のメディア運営事業会社を設立しました。

 

―「リテールメディアJAPAN」という名称に込められた意図を教えていただけますか。

野口氏:リテールメディアはネット広告の新しい流れとして多くの方が注目されていると思うのですが、日本ではまだまだ黎明期だと認識しています。

特に日本型のリテールメディアという部分に注目しています。小売の形態や市場構造というものは、米国と日本ではかなり違います。

名称にJAPANと付けたのは、日本型リテールメディアがどう進化していって、これからどうなっていくのか、どうすれば市場が活性化するのか、そういったところを伝えていければと考えています。

 

 

米国とは違う? 日本型リテールメディアの可能性と課題

 

 

―日本型のリテールメディアの特徴を具体的に教えていただけますか。

野口氏:米国ではEC系でAmazon、実店舗型でウォルマートが中心プレイヤーとしてリテールメディアを展開しているのですが、日本の小売はかなり異なります。

EC市場では、楽天をはじめその他のプラットフォームも多数存在していますし、実店舗型に関してはさらに寡占ではない市場が広がっています。そういった環境のなかで、リテールメディアの展開方法も米国とは違った形になっていくのではないかと考えています。

 

―具体的にリテールメディアJAPANでは、どのような情報をどういう志を持って提供されるのでしょうか。

野口氏:日本でのリテールメディアという市場が確立するための、支援をしていきたいと考えています。例えば認知拡大や啓蒙活動ですね。市場がフラグメント化してしまうと広告出稿がしづらくなり、市場が広がらなくなってしまうので、その辺りの標準化も進める一助ができればと思っています。

 

―メディア以外にも、何かソリューションを持って支援するようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。

野口氏:今はとにかくメディアだけを考えています。特に海外で起こっていることを日本語でわかりやすく解釈して伝えるというような情報提供、そして今後は各ベンダーや広告主などにインタビューをしていきたいと考えています。

最初の取り組みとして、リテールメディアの用語集や媒体一覧を作りました。そうしたニュース以外の、ノウハウ的なストックもしていきたいと考えています。

 

―想定されている読者層はどのような方々でしょうか。

野口氏:リテールメディアに係る様々なプレイヤーの方にご覧いただきたいと思っています。リテールメディアを提供する実店舗型小売企業、ネット系EC運営者、メーカーのブランド担当、販促担当の方々、アドテクベンダーの方など。先述の用語集に関してもかなり気を遣いました。アドテク用語をどんどんと使っていくと小売の方々にとって読みづらい文章になってしまいますので、そのようにはならないように、どの業界の方にも通じるように、気遣ったメディアにしていきたいですね。本当に言語が違うので、小売の方が使う「棚取り」という言葉をアドテクの方はなかなか分からないでしょうし、アドテクの方が「CDP」と言っても小売の方はわからないです。

 

―リテールメディアの情報を提供するプレイヤーは他にもいますが、どのように差別化を図っていかれますか。

野口氏:メディアとして他社との差別化を追求する考えは正直ないです。リテールメディアという市場自体が日本で確立されれば、そこで何らかのビジネスはできると考えているので。他社メディアと同じような内容を掲載することも問題ありません。このメディアだけで広告収入やサブスクリプション収入などでマネタイズすることは考えていないですね。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。