IDレス環境におけるパブリッシャーの収益向上を実現する―Intent IQ主催「Intent IQ VIP NIGHT」[イベントレポート]
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2026年5月、IDソリューションをグローバルに展開するIntent IQは、パブリッシャーを招いた招待イベント「Intent IQ VIP NIGHT」を東京・渋谷にて開催した。サードパーティCookieをはじめとするシグナルが制限されるエコシステムにおいて、いかに正確なユーザー理解を維持し、パブリッシャーの価値を正当に評価させるかについて、来日した経営陣がプレゼンテーションを行った。後半には株式会社Leave it to me代表・池田寛氏、かわらのLab合同会社代表・瓦野晋治氏によるパネルディスカッションが行われ、メディア価値の再定義について議論が交わされた。
(Sponsored by Intent IQ)
アイデンティティ戦略と安全性重視のアプローチ
冒頭、挨拶を行ったIntent IQ会長のロイ・シュケディ氏は、日本のパートナー企業への感謝と、長期的なパートナーシップ構築への意気込みを語った。Intent IQは約30年にわたる同社の歴史の中で、エコシステムの進化に適応し続ける技術開発を行っている。シュケディ氏は日本を「品質・精度・パフォーマンスを重視する市場」であるとし、そういった市場に参入できることを誇りに思うと述べた。日本市場が求める高い水準を満たした絶対的な正確性を持つ基盤を構築するために、研究とデータドリブンなアプローチに多大な投資を積み重ねているとのこと。
アイデンティティが複雑化する中で、正確性という基礎に常に立ち返ることが、パートナー企業からの信頼と強い絆につながるとし、参加したパブリッシャーに感謝の意を伝えるとともに、今後のさらなる協力を仰いだ。
続いて登壇した事業開発担当上級副社長のタミル・シュブ氏は、Intent IQのソリューションとアプローチについてプレゼンテーションを行った。
同社が日本市場に進出を果たして2年となる。展開するアイデンティティ戦略は、パブリッシャーが最大の利益を生み出すことを主眼としている。
Intent IQが提供する技術の中核は、Cookieなどの識別子が利用できないIDレスインベントリーに対して効果を発揮できる独自のIDソリューションである。IDに依存せずにSSPとDSPの識別子をリアルタイムで照合する。
さらにパブリッシャーが柔軟に選ぶことができるよう以下のような統合方法をサポートしている。
・Prebid: 業界標準の環境にシームレスに組み込むことが可能。
・JavaScript: サイト側での柔軟な制御を実現。
・サーバーサイド統合: ブラウザ側の負荷を軽減し、パフォーマンスを最適化する。
管理画面で提供される機能では、IDレスブラウザ間のギャップがリアルタイムで補完される。すべてのパートナーに対して、A/Bテストや最適化、サプライパス最適化(SPO)インサイトが提供されることで、技術的な裏付けを持って運用を改善できる環境を整えている。プライバシー保護については、EU一般データ保護規則(GDPR)・カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)・グローバルプライバシープラットフォーム(GPP)といった国際基準に準拠済みとなる。
日本市場におけるインフラ投資とケーススタディ
日本市場に特化した取り組みとして、シュブ氏は約6カ月前に東京に「リアルタイム識別のためのローカルデータセンター」を開設したことを報告した。ここではIDスイッチボードにより、SSP/DSPパートナー間のデータギャップが補完され、初回コール時のレイテンシーが大幅に改善される。ローカルでのデータ処理により、日本におけるプライバシー・ファーストを尊重する姿勢を見せている。
具体的な数値がいくつか示された事例の発表では、連携している国内パブリッシャーにおいて、CPMとフィルレートともに増加しており、トータルで20%前後の収益向上が確認されているとのこと。特に、iPhoneユーザーの比率が極めて高い日本市場において、Safari環境などのシグナルが制限されたインベントリーをいかに有効活用できるかは、パブリッシャーの収益を左右する大きな要因となる。Intent IQはこうしたiOS環境においても高いパフォーマンスを発揮し、広告主とパブリッシャー双方の成功を支援している。
最後に、シュブ氏はユーザー識別がますます複雑化する時代において、「正確性、信頼、強固なパートナーシップ、そして長期的コミットメント」という基本に立ち返ることが重要であると強調した。今後日本市場においてこれらの基本を念頭に、パブリッシャーと共に成長していく意欲を示し、プレゼンテーションを締めくくった。
トラフィックを捨てて関係性を取りにいけるのか?
最後のパネルディスカッションには、株式会社Leave it to me代表・池田寛氏、かわらのLab合同会社代表・瓦野晋治氏の両氏が登壇。「“トラフィック”を捨てて“関係性”を取りにいけるのか?」というテーマで、デジタルメディアが直面する課題について真っ向から向きあった。
デジタルメディアの構造的な課題は「トラフィック依存モデルの限界」である。瓦野氏は、記事の掲載や配信によってページビューを獲得し運用型ディスプレイ広告で収益を上げるという従来モデルが終わりつつあるという現状を総括する。その背景として挙げられたのが、AIによる検索体験の激変であり、AI検索結果上で情報が完結する「ゼロクリック化」が進み、ユーザーが個別のウェブサイトへ訪問する機会が減少している。
また、Google DiscoverやYahoo!ニュース、SNSなどのプラットフォーム経由の流入に依存してきたメディアにとっては、プラットフォームの判断やアルゴリズムの変化ひとつでトラフィックが左右され続けている。加えて、ページビューと連動して収益になるディスプレイ広告の収益性も好調とはいえないため、「トラフィックと収益性の減少が同時に起こり、ダブルで危機に直面している」と指摘された。
コミュニケーション再設計と“依存しない”戦略へのシフト
後半では、ユーザーとの関係性の再構築が重要なテーマとして議論された。現在、ユーザーの可処分時間は動画、SNS、ゲームなどに大きくシフトし、ニュース記事を能動的に読む習慣は減っている。読者がサイトを訪れる理由をどのように作るのか。
その解決策として示されたのが、読者とのコミュニケーションの再設計である。単なる情報提供にとどまらず、読者との接点そのものをサービスとして設計し、継続的な関係性を築くことである。コミュニティという形に限定されずとも、「便利」「楽しい」「ないと困る」といった価値を提供することで、ユーザーの生活のインフラとして入り込むことが重要だと指摘された。
また、プラットフォームとの向き合い方も重要な点となった。これまで多くのメディアは外部プラットフォームに強く依存してきたが、その関係性は健全とは言えない。今後は「依存する」のではなく「利用する」という意識のもと、アルゴリズムに振り回されない自社主導の自立したビジネス設計を持ち、自社の価値を維持しながら外部プラットフォームをハブとして活用する関わり方が重要だと瓦野氏は述べる。売上が減るメディアも存在する中で、早く手を打つこと、小さくてもチャレンジを積み重ねることが重要であり、現場レベルではなく組織全体で取り組む課題であると強調した。
ディスカッションの締めくくりで、池田氏は「正解は存在しない」という前提のもと、各社で試行錯誤を続けようと参加者に呼びかけた。メディアの価値が問い直され、収益性と各メディアの特性を活かした新モデルを模索する段階に入っていることを痛感させられる、意義深いディスカッションとなった。
ディナー後のアフターパーティーでは、パブリッシャーを中心とする参加者たちがIntent IQメンバーや参加者同士で交流を深め、温かい空気の中でイベントは締めくくられた。Intent IQは昨年に続き2026年ATS Tokyoのスポンサー企業としての参加を予定しており、同社のさらなる日本展開に注目が集まる。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。








