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ExchangeWire本社による、2022年MadTech業界動向大胆予測

 

ATSロンドンは例年9月に開催されていたが、2022年は6月14日と15日の開催となった。主催するExchangeWireは、同イベントがMadTech(マーテク+アドテク)の展望を広げるものになると期待している。

結局のところ、数兆ドル規模のマーケティング業界向けの技術レイヤーを構築することもできるというのに、なぜ数十億ドル程度のリターゲティングディスプレイセグメントに拘るのか?

 

筆者は例年、ATSロンドンの数週間前に、この欧州有数のMadTechイベントを盛り上げるための予測記事を書いている。そして予測が当たる確率を表すのに、ビールジョッキの数で示すのが常だった。

 

今年は、ATSロンドンの新しい6月の日程と、カンヌライオンズの会期(6月20日~24日)が近いことから、ロゼワインのボトルを確率の目安として使うことにした。ロンドンの会場で、皆さんにお会いするのを楽しみにしている。

 

では、2022年の予測を以下に示していこう。

 

ショッピファイがクリテオを買収する

ショッピファイは、リテールメディアの主力に成長する可能性がある。100万以上のサイトが同社のプラットフォームを使用しているため、サイトのネットワーク全体で、大規模なショッパーグラフをバイヤーに提供できるからだ。また、同プラットフォームの顧客企業は、「ショッピファイグラフ」だけでなく、自社のファーストパーティデータも活用できる。ここで問題になるのはアドテクだ。ショッピファイにはアドテクがない。そして、アドテクを構築するには時間がかかる。そこで考えられる解決策は、クリテオを買収することだ。クリテオは、ディスプレイリターゲティングからリテールメディアへと巧みにビジネスを転換してきた。アイピーオンウェブ(IPONWEB)との契約が完了すれば(6月が有力)、クリテオは世界有数のリテールメディアインフラを手に入れることになる。ショッピファイが最高のリテールメディア環境を整えるためには、クリテオが必要なのだ。

 

ショッピファイがクリテオを買収する確率:2/5

 

 

メディアオーシャン(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)がマグナイトを買収する

バイサイドとセルサイドは収束しつつある。みんながインベントリの争奪戦をしているなら、バイサイドとセルサイドの境界はどこになるだろう?マグナイトは現時点で非常に安価であり、CTVとディスプレイ広告への対応に関して、メディアオーシャンに多くのものを提供している。メディアオーシャンは、ワークフローおよびオムニチャネルメディアエグゼキューションのセグメントで、長年のライバルであるザ・トレード・デスクを出し抜くことができるかもしれない。

 

メディアオーシャンがマグナイトを買収する確率:3/5

 

 

グーグルがDoubleClickを売却

筆者がLinkedIn上で、グーグルとサードパーティのアドテクスタックの将来についてアンケートを実施したところ、回答者の58%は、グーグルがアドテクから離脱することはないと予想した。そうした集合知は尊重しつつも、筆者はやはり、グーグルが傘下のアドテクスタックであるDoubleClickを切り離すことを余儀なくされると確信している。法規制がいずれ議会を通過することになるため、売却はもはや時間の問題だ。

 

グーグルがDoubleClickの売却を迫られる確率:3/5

 

 

欧州でゼロIDの茶番が始まる

グーグルが紛らわしいCookieバナーで1億ドル(約134億円)以上の罰金を科された後、欧州の主要な同意管理プラットフォーム(CMP)で「すべてを拒否する」オプションがユーザーに提供されるようになった。筆者も複数の大手パブリッシャーから、「すべてを拒否する」へのクリックが増加しているとの報告を受けている。こうした「同意しないユーザー」は今後どうなるのだろうか?アドテクはこうしたゼロIDのユーザーをマネタイズするビジネスではないので、「すべてを拒否される」とCPMは崩壊する。アドテクビジネスはIDをマッチングさせることなのに、ゼロIDユーザーのためにビジネスを再構築する意味はあるのだろうか?手短に答えるならば「ノー」だ。これは欧州のパブリッシャーにとって、大きな問題になるだろう。注視が必要だ。

 

欧州で「ゼロID」の茶番が始まる確率:4/5

 

 

Netflixがサードパーティのアドテクを選ぶ

最近、NetflixがRoku(ロク)を買収すべき理由を概説した記事が掲載された。100億ドル(約1兆3470億円)ならお買い得だとされる。しかし、プログラマティックに注力するビジネスの初期段階で、それほどの大金を投じるとは考えにくい。恐らくNetflixは、米国で動画広告を手がけるFreewheelとグーグルにダイレクトバイイングの管理を委託し、プログラマティックバイイングにはホワイトラベルのザ・トレード・デスクを選ぶだろう。とにかく短期的には、Netflixはサードパーティのアドテクを選ぶはずだ。

 

確率:4/5

 

 

eBayがアドサーバーを買収し、アドテクスタックを構築

eBayは、リテールメディアブームに乗じることを望んでいる。しかしスケールするにはアドテクインフラが足りない。そこでスタックを構築するために、アドサーバー・ソリューションを買収することを目指すだろう。eBayはかつて、デマンドサイドプラットフォームのAdformを買収すると噂されたが、この交渉は評価額の面で決裂した。eBayはより良い提示額で再交渉に臨む可能性もあるが、他の候補としては、KevelとSmartもある。

 

eBayがアドサーバーを買収する確率:3/5

 

 

リテールメディアのアドネットワークが台頭

リテールメディアが、ディスプレイ広告のプログラマティックを模倣することはない。テスコやカルフールのような企業が、センシティブな販売データを入札ストリームにフィードすることはほぼあり得ないからだ。その代わり、フルファネルのソリューションをエージェンシーに販売するアドネットワークが台頭するだろう。道端の露天商はもはや過去の遺物だ。ビスケット1パックとファンタ6本パックを、そんなところで買おうと思う人はもういない。

 

確率:3/5

 

 

パブリッシャーによるコンテクスチュアルデータの争奪戦が続く

アドテクとパブリッシャー間のコンテクスチュアルデータの奪い合いは、適切なビジネスモデルが合意されるまで続きそうだ。ポストCookieの世界では、コンテクスチュアルデータはオープンウェブのマネタイズに欠かせない。これは非常に厄介なことになりそうだ。

 

確率:4/5

 

 

2023年後半、欧州MadTechIPO市場が復活する

現在、市場が悲惨な状況なのは間違いない。投資家は「成長が予測可能な」企業という安全な避難所に逃げ込み、テック企業株の評価額は下がる一方だ。

 

アドテクのIPO:この先に起きること

アドテク企業のIPOは、このところ市場から締め出されている状況だが、2023年後半から2024年頃には復活するだろう。

 

ExchangeWireが取材した欧州企業の大半は、上場先にニューヨーク証券取引所(NYSE)を選択している。ニューヨークでは、アドテクが株式市場の1セグメントとして受け入れられる素地がある。ユーロネクストとロンドン証券取引所はこれを警鐘と受け止めるべきだ。さもないと多くのIPO案件を失うだろう。以下は、2023年から24年にかけてIPOが見込まれるアドテク企業のリストとその確率だ。

 

- Ogury

フランスのアドネットワーク企業Oguryは、調査データと独自のファーストパーティデータ資産で構成する興味深いデータグラフを開発した。欧州のプライベートエクイティ(PE)がいかにアドネットワークを好んでいるかを考えれば、大規模なPEラウンドを実施することも可能だろうが、そうではなくIPOを検討しているようだ。マネージドサービスのアドテク企業による上場は成功するだろうか?

 

2023~2024年にIPOを実施する確率:4/5

 

 

- Smart

パブリッシャー向けのフルスタックで、グーグルと真に張り合える唯一の存在だ。同社は最近、複数の大手パブリッシャーから契約を獲得しており、売上高は1億ドル(約134億円)にのぼる。グーグルの状況を考慮すれば、Smartは今後1~2年内にIPOを行う可能性があるだろう。DoubleClickは、グーグル傘下でなくなれば、AdWordsの強力なデマンド推進力から切り離され、かつての威光を失うことになるだろう。

 

2023~2024年にIPOを実施する確率:4/5

 

 

- MiQ

MiQは、2022年後半に大規模なPEラウンドを実施する予定だ。同社は欧州のアドテク企業の中でも売上高がとりわけ大きい。ある段階で、PEラウンドでの資金調達は終わりを迎えるだろう。MiQはその後、おそらくNYSEかNASDAQに上場する可能性が高いが、2025年まで持ち越されるかもしれない。ウォール街の期待にどう応えるかが、IPOでの重要なポイントになるだろう。

 

確率:3/5

 

 

- Permutive

欧州のアドテク企業の中でもとりわけ興味深いのは間違いない。Permutiveの技術はプライバシーファーストの時代に合わせて構築されており、パブリッシャーのマネタイズ実現に大きく貢献する。同社はソフトバンクの主導で、シリーズCの資金調達を実施している。2024年には米国でIPOを実施する可能性が高い。

 

確率:4/5

 

 

- Adverity

欧州でマーテックを手がけるユニコーン企業のAdverityは、大手マーケターに選ばれるエンタープライズ分析ソリューションを自負している。同社はこれまでに1億6500万ドル(約222億円)を調達しているため、おそらく大半のバイヤーにとっては高すぎる金額になっている。

 

確率:4/5

 

 

- Teads

2021年に上場を試みたが、当時の評価額はウォール街から基準に満たないと判断された。同社はCookieレスのソリューションに取り組み、売上高は6億ドル(約808億円)を超えている。今後2年のあいだには体制を立て直して上場すると予想される。

 

確率:4/5

 

 

- Infosum

「データクリーンルーム」に特化したInfosumには、この急成長分野をリードするソリューションを構築するチャンスが大いにある。

ウォールドガーデンによる断片化を考慮すると、上場ではなくトレードセール(M&Aによる売却)になる可能性もある。

 

確率:1/5

 

 

- Cavai

ノルウェーに拠点を置くアドテクプラットフォームのCavaiは、ポストCookie時代の新興ベンダーとして、同分野の未来を形成する一翼を担っている。同社のプラットフォームは、データ駆動型のクリエイティブに注力し、オープンウェブとリテールメディアにまたがるファネルの上部と下部とをつないでいる。IPOが見込まれるが、時期は2025年まで持ち越されるかもしれない。

 

確率:2/5

 

 

- TAPTAP Digital

TAPTAP Digital は、最近1億ドル(約134億円)のPEラウンドを実施した。同社が提供するロケーションベースのソリューションは、プライバシーフレームワーク上に構築されている。事業は拡大しており、CEOはIPOを望んでいる。

 

確率:3/5

 

 

- The Ozone Project

Ozoneはワイルドカード的な存在だ。技術レイヤーとCookieレスのアドネットワークソリューションを組み合わせており、この技術を国際的なパブリッシャーに販売する計画だ。ゆくゆくはそうした展開のための資金を調達する必要があるが、その場合には、結果が求められることになるだろう。ロンドン証券取引所に上場する可能性もあるが、しばらく先になりそうだ。

 

確率:1/5

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。