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2023年の広告業界は楽観的かつ慎重:2022年第4四半期IPAベルウェザー・リポート

英国の広告業団体IPAが四半期ごとに発行しているベルウェザー・リポートでは、今回も広告業界の景況感を取り上げている。経済的な逆風が吹きすさぶなか、2022年第4四半期の調査結果は、2023年に向け、意外と楽観的ではあるが、当然のことながら慎重な姿勢も示している。

 

今回のリポートでは、回答者の20%がマーケティング支出を増やし、2022年第4四半期もマーケティング費用が増加したことが示されている。これは7四半期連続の増加であり、過去4年間で最も長い期間にわたる増加だ。

 

IPAの事務局長を務めるポール・バインズフェアー氏は、これを希望が持てる結果だと捉え、次のように述べている。「特に喜ばしいのは、今四半期は、主要メディアの支出が上方修正され、特に動画広告への投資が追い風となり、それが全体的な広告費の上昇にもつながっているということだ。私たちのエビデンスが示しているように、ブランディング広告は、ブランドの価格決定力を維持し、利益率を守ることに役立つことが証明されている。ブランドにとって、不況時のブランディングはやはり有効なのだ」

 

部門別の内訳を見てみると、広告費の増加率が最も高かったのは、イベント部門と主要メディア広告部門だ。2023/2024年のマーケティング予算についても、これらの部門が予算増をリードしており、イベント部門の支出計画は18%、主要メディア広告部門は13.4%増加している。

 

この数カ月にわたって悲観的な論調が優勢だった業界にとって、今回の結果はおおむね明るいもののように見える。私たちは2023年に向けて、このリポートに対する感想と重要ポイントについて専門家に尋ねた。

 

 

2023年の勝者はプライバシーへの対処によって決まる

主要メディアへの支出は回復傾向にあります。2023年は、成長の原動力に注力し、マーケティング投資を呼び込むことが重要になります。2022年第4四半期のリポートでは、力強い成長機会をもたらす鍵として、例えば、データの分析力や技術の進歩などが、引き続き挙げられています。

 

つまりマーケティング業界は、ターゲティングや測定に必要な、質の高いデータにアクセスし続けるために、データへのアプローチを革新し、Cookieや識別子のないプライバシー重視の未来に備える必要があるということです。2023年の勝者は、消費者のプライバシーを守りながらも、価値の高いオーディエンスにリーチし、費用対効果を実証できたマーケターになるでしょう。

 

ヴァーヴ・グループ マーケットプレイス担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー、アヴィラン・エダリー(Aviran Edery)氏

 

 

予算の増加は期待値の上昇を意味する

2022年第4四半期の暗い見通しから一転して、英国の広告主は迫り来る景気後退の逆風にも負けず、力強く前進し続けていることをあらゆるリポートが示しています。予算が増えているのは喜ばしいことですが、再考の余地がないわけではありません。パンデミック中や以前の景気後退局面など、私たちはこの道を(何度も)通ったことがあり、ゴールポストが動き続けることも知っています。

 

結果的には、既存のプラットフォームにおける効率化を徹底的に追求し、ビジネス上の成果を証明できているマーケティングチームが、最も大きな成長を遂げています。厳しい経済見通しのなかでは、マーケティングの成功を明確に示せることが、経営陣の支持を維持し、予算を確保するために必要なのです。

 

クラウド DX担当ディレクター、ソフィー・ウーラー(Sophie Wooller)氏

 

 

リーダーは楽観主義を行動に移す必要がある

テクニカル・リセッション(2四半期連続の景気後退)にもかかわらず、企業が投資継続を選択しているのは心強いことです。2023年の大きな課題に取り組むため、リーダーたちはこの楽観姿勢を保つ必要があるでしょう。その課題とは、進化し続けるプライバシー規制の範囲内で、いかに注目率の高いクリエイティブを追求するかです。

 

メタやグーグルが浸透させた、行動データに基づくターゲティング広告モデルは、ますます包囲網が狭まっています。また、サードパーティCookieの廃止が迫っているなかでは、プライバシー保護や最適化だけでなく、エンゲージメントやユーザー体験を優先したソリューションも必要となります。

 

スマートフレーム・テクノロジーズ グローバルマーケティングディレクター、アンディー・アシュレイ(Andy Ashley)氏

 

 

経済的な圧力が効率を向上させる

マーケティング業界がレス・ビネー氏の教えを真剣に受け止めているのは賢明な判断です(不況下でも広告予算を削減してはならないという教訓のことです)。しかし、もし、本格的な景気後退を回避できたとしても、賢明な広告主は、この経済的な圧力を利用して、無駄を減らし効率を高めたいと考えるでしょう。広告の効果を正しく評価し、見られていない広告、売上につながらない広告を大胆に削減することに今から着手しておくべきでしょう。

 

ルーメン CSO、タンワ・エデュ(Tanwa Edu)氏

 

 

広告主は価値観の調整が必要

昔から、景気が悪化しているときにこそ、広告主はマーケティング投資を継続すべきだと言われています。最新のIPAベルウェザー・リポートでも、企業はブランド価値を維持するために、マーケティング予算を増やしているとして、この点が強調されています。

 

現在の経済状況では、ブランド価値は、メディア投資以上に重要だと見なすべきです。そのため、広告主は無駄を抑え予算を節約することから、消費者に最良の広告を提供することへと軸足を移す必要があります。2023年のマーケティング予算を最大化するため、業界は、クリエイティブのアテンションを独自に検証し測定するなど、従来のオーディエンス・ターゲティングに革新的なアプローチをもたらさなければなりません。

 

アゼリオン 英国カントリーマネージャー、アナ・フォーブス(Anna Forbes)氏

 

 

ブランドは顧客との共感を軽視すべきではない

最新のベルウェザー・リポートは、大変ポジティブな内容ですが、まだ考慮すべき点はあります。このような時こそ、エージェンシーは将来の機会を見据えつつ、クライアントに効果的にアドバイスできるよう迅速に対応しなければなりません。

 

消費者は、現代の課題を理解し、それを解決するソリューションを提案しているブランドに自然と引き寄せられます。そして、そのようなブランドであるためには、存在感、知名度、関連性が必要です。2023年に成功するブランドは、マーケティングミックスのあらゆる要素を最適化し、わずかな金額も無駄にすることなく、消費者の共感を獲得できたブランドでしょう。

 

アイリス グローバル戦略責任者、クリス・ウィットソン(Chris Whitson)氏

 

 

楽観主義より現実主義

英国では、景気後退が長期化すると危惧されており、今回のベルウェザー・リポートは、ポジティブ過ぎると感じられるかもしれません。2022年第4四半期の鉄道ストライキ、悪天候、インフレ率の上昇等は、すべてが消費者動向に影響を与えたと推測されており、これが屋外広告(OOH)にも打撃を与えたように見えます。また、インフレは広告価格も直撃し、ブランドが予算の増額を余儀なくされたのは間違いありません。

 

しかし私たちの業界は、とてつもない創造性や柔軟性、回復力を有しており、確かにポジティブに捉える余地はあります。まず、待ち受けている課題を現実として捉えることです。消費習慣の変化をうけ、今、最高のROI(投資利益率)を達成できるのはどこかを、ブランドもエージェンシーも深く考える必要があります。

 

トータル・メディア CEO、トム・ラランホ(Tom Laranjo)氏

 

 

ブランドは慣れている方法にこだわるべきではない

マーケティング戦略の有効性を証明することは、ブランドが当面の不況を乗り切り、年末の有望な兆しから、確実に収益を上げるために極めて重要な作業です。

 

ブランドにとって重要なのは、慣れたやり方だからという理由だけで、それをデフォルトにしないことです。デバイスファーストのアプローチではなく、オーディエンス主導のオムニチャネル戦略、例えばOOHなどの従来型チャネルを含む戦略を採用し、適切な成果指標で評価すべきです。

 

タロン CMO、サラ・パークス(Sarah Parkes)氏

 

 

ハードな働き方よりスマートな働き方が重要になる

予算の増加は幸先の良い一歩ではありますが、ROIを最大化するためには、利用可能な媒体について、より柔軟に考える必要があるでしょう。そして。パートナーと協力しながら、リアルタイムにキャンペーンを調整していく必要があります。

 

マーケターが考慮すべきことの一つは、消費者と、広告、特にデジタル屋外広告(DOOH)との関与の仕方の変化です。新しい働き方、鉄道ストライキ、(最近も起きた)異常気象など、あらゆる要素が変化をもたらします。広告費の無駄を最小限に抑えながら、オーディエンスのトラフィックを最大化するためには、状況に応じてキャンペーンを調整することが必要です。そうすれば、マーケティング予算全体の効率化も実現するでしょう。

 

ヤフー EMEA責任者、ジョシュ・パートリッジ(Josh Partridge)氏

 

 

「人ベース」のアクティベーションがブランドの勝因になる

IPAのリポートが強調しているように、マーケティング予算に占めるオンラインチャネルの割合は増加しています。プライバシーファースト、ピープルベースのマーケティングソリューション、データクリーンルーム、そして、今後予想されているコネクテッドコマースメディアの成長によって、ブランドが広告費と説明可能かつ測定可能な結果を結び付け、アドレサブルにターゲティングできる範囲が広がります。

 

ファーストパーティデータを利用し、プライバシーにも配慮した上で、オムニチャネルマーケティングの総合インサイトを構築するために「ピープルベース」のアクティベーションや測定ソリューションを活用するブランドは、今後も価値の高いオーディエンスとのつながりを維持し、市場シェアを拡大することができるでしょう。

 

ライブランプ ヨーロッパ・アドレサビリティ担当バイスプレジデント、ルーク・フェニー(Luke Fenney)氏

 

 

調査結果と異なり、OOHは成長する

クリスマスとサッカー・ワールドカップに後押しされ、2022年第4四半期、OOHは好調でした。消費者と広告主が困難に直面しているにもかかわらず、この時期、OOHは2桁台前半の成長を遂げたというデータもあります。

 

不況になると、ブランドはOOHの伝統的な強みである信頼性や、マスへのリーチ力に魅力を感じるようになります。同時に、デジタルスクリーンとその背後にある技術への長期的な投資のおかげで、ブランドは、新たなクリエイティブの可能性を追求しながら、コンテキストに沿ったキャンペーンを大規模に展開できるようになっています。その結果、デジタル部門は2022年に30%の成長を遂げました。IPAのリポートとは異なり、2023年も成長が続くと私たちは予測しています。

 

キネティック英国法人 最高クライアント責任者、ニコール・ロンズデール(Nicole Lonsdale)氏

 

 

今こそ積極的になるとき

広告費の増加、なかでも13.7%増を記録した動画広告費は、ブランドが、ビジネスのエンジンを止めることなく、広告予算をより賢く使おうと考えていることを示す素晴らしい兆候です。

 

しかしながら、これらの調査結果は、特に現在の状況においては、より効果的かつ効率的なマーケティング戦略を実行することの重要性も示しています。つまり、柔軟性のあるパートナーシップを構築し、適切なツールや最先端の技術を利用することが、企業に真の成功をもたらすのです。これからの数カ月を成功に導くためには、適切なツールやリソースへの、かつてないほど積極的なアプローチと投資が必要になるでしょう。

 

RTBハウス アッパーファネルソリューション部門トップ、マテウシュ・イェンドローカ(Mateusz Jędrocha)氏

 

 

広告費を最大化するには、マーケターとパブリッシャーの強固な関係が最も重要

現在の不況を考えると、2023年のマーケティング予算が多少なりとも増えているのは素晴らしいことです。しかし、マーケターは少ない予算を最大限に活用するため、どこでどのようにメディアを購入するかを真剣に考える必要があります。現状、オープンウェブにおけるリーチはかなり制限されています。多くのユーザーが、Cookieや広告をブロックした環境でウェブを閲覧し、広告のためのデータ共有をオプトアウトしているからです。そのため、プログラマティック広告の配信は、わずか30%の消費者に集中しています。

 

マーケターが責任を持って広告予算を最大化するためには、自社のユーザーに100%リーチできるパブリッシャーと関係を築き、ファーストパーティで構築した同意済みの豊富なオーディエンスデータを提供する必要があります。そうすることで、はじめてマーケターはユーザーのプライバシーを侵害することなく、目標を達成することができるのです。

 

パーミュティブ 広告主カスタマーサクセス責任者、ネッド・ジョーンズ(Ned Jones)氏

 

 

広告主は混乱に適応できることを証明した

広告主は、過去にも不確実性や混乱を乗り越えてきた経験から、取引先や顧客を第一に考えながらも、力強い成長を優先することで、不況に適応し、対応できることを証明しています。

 

IPAが公開した最新の数字は心強いものですが、今回の景気悪化は、回復が遅く、長期化する可能性があるという点で、これまでとはやや異なるかもしれません。しかしそれでも、強力なパートナーシップを構築し、連携を強化することで、ブランドは引き続き前進し続けられるでしょう。

 

マインドシェア 最高収益責任者、リチャード・ケリー(Richard Kelly)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

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2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。