新世代のシゴト観-統合ソリューションとグローバル協働の現場で見つけた、成長のかたち[インタビュー]
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グローバルブランドの日本市場展開を支援しながら、社内外の垣根を越えて新たな広告ソリューションを推進する若手マーケターがいる。
株式会社電通ジャパン・インターナショナルブランズ Manager 兼 Integrated Solutions Office Solution Development Supervisor の須藤梓氏だ。
デジタル専業代理店からキャリアをスタートさせた須藤氏は、現在、グローバルクライアントのアカウントマネジメントと、次世代ソリューションの開発推進担当として、電通グループのメディア・テクノロジー領域におけるケイパビリティを高める一翼を担っている。
変化の速いデジタル広告業界の最前線で、何を学び、どのように成長を重ねてきたのか。自身の経験を通じて見つめるキャリア形成と、業界の未来への視座を聞いた。
キャリアの原点——デジタル専業から統合型エージェンシーへ

学生時代には広告研究会に入っていたという「広告好き」の須藤氏が、広告業界に足を踏み入れたのは新卒時。最初に所属したのはデジタル専業の代理店であった。
運用型広告のプランニングやパフォーマンス改善に約5年間携わり、デジタル領域における基礎スキルを徹底的に磨いた。また、若くしてチームマネジメントを経験する機会も得られたという。
「購買に直結する広告効果を日々検証しながら、デジタル広告の奥深さを学びました。一方で、より認知に響く広告やブランドコミュニケーションにも挑戦し、その相乗効果を生み出せる人財でありたいという思いが強くなったのです」。
そしてより広いマーケティングの視野を求め、2022年にカラ・ジャパン―現在の電通ジャパン・インターナショナルブランズ(DJIB)へ転職。オンオフ統合型のマーケティングに携わる環境で、グローバルクライアントのシニアプランナーとして新たなキャリアをスタートさせた。
「フルファネルでブランドを支援できること、そしてグローバルな視点を持つチームと協働できることに魅力を感じ、勇気を出して参画しました」。
クライアントと向き合う日常——挑戦の中にある“責任”と“喜び”
須藤氏は現在、米国に本社を持つ複数のグローバルブランドを担当し、メディアプランニング設計からキャンペーンの実行、効果測定までを一貫して手掛ける。
「当社では多くのアカウントにおいて、営業とプランナーを分けず、プランナーが一貫してクライアントの最前線に立ちます。責任は大きいですが、その分だけクライアントとの協業範囲も広くやりがいがあります」。
同じアカウントを担当するグローバルチームとの連携も日常的であり、時差を超えたミーティングや資料作成などの連携も欠かせない。業務の多忙さはあるものの、異なるバックグラウンドを持つ同僚と協働することで、日本と海外でのメディアのスタンダードの違いなど、日々新たな発見があるという。
日本のオフィスにおいても、「多国籍なメンバーと働くことも多く、コミュニケーションもオープンでフラットに感じます。刺激的でありながら、とても働きやすい職場です」と語る。
そして、グローバルキャリアの構築には欠かせない英語、とりわけスピーキングは「日々の業務で習得している」とのことだ。無論、クライアント向けの資料作成やメールは英語がベースである。
自身については「意外にタフなんです」と須藤氏。多忙なクライアントにも寄り添ってキャッチアップが出来ることを自負しており、DJIB入社当初から担当している2社のクライアントとの関係もすでに4年に及ぶという。
「クライアントとのコミュニケーションでは、相手の立場を多角的に考えます。クライアントの担当者は、当然対エージェンシーのみではなく、国内外のクライアントの社内チームやステークホルダーにも向き合っていらっしゃいます。
言われたことをそのまま受けとるのではなく、資料1つにしても“この後どのように展開されるか”“誰が意思決定に関わるか”を考えながら、相手が動きやすくなるよう擦り合わせることを意識しています」と、相手との信頼性を構築するための秘訣も教えてくれた。
社内外をつなぐ仕掛け人——“dentsu Japan Digital Day”で広がる知見共有の輪
須藤氏はアカウント業務に加え、DJIB内の「統合ソリューション室」にも所属し、国内外の先進的なソリューションの社内推進や、メディアとのパートナーシップの構築を担っている。
「日本にも素晴らしいソリューションが多いのですが、私たちのチームでは特に、海外で一般化している概念やソリューションを日本市場でも活用できるよう、情報収集やメディア、ベンダーとの協業を進めています。新しい取り組みをローカルに合わせて展開し理解を得る過程は簡単ではありませんが、確かな手応えを感じています」。
「まだ日本にはない新しいソリューションに出会うことに日々ワクワクしている。」と語る須藤氏。だが一方でこれらを日本で普及させるのは、ローカルの特殊事情を考慮する必要などもあり、一筋縄ではいかない。グローバルと日本とでは市場環境や求められるニーズが異なることも、多分にある。
課題解決には多様なステークホルダーとの調整や細やかな確認が欠かせず、タフな仕事だという。直近では、アテンション(Attention)指標のメディア横断実証と普及にも力を注いでいる。
Attention指標について、須藤氏がメディア横断での計測に初めて取り組んだのは2024年のこと。日本独自の媒体では計測タグの受け入れが未対応であることも多く、チームと共に各媒体にヒアリングを進め、完全には媒体横断での計測ができない課題にも直面した。
「こうした状況が改善され、より価値を生む広告運用につながるよう、指標を有効活用できる環境が広がってほしいと思っています。実際、日本でも浸透は進んでいて、2025年にかけて対応媒体が増えている手応えがあります」。
幅広い業務範囲でマルチタスクを次々とこなす須藤氏の活躍を象徴するのは、社内外の知見を結ぶ取り組み「dentsu Japan Digital Day」である。
国内外のメディアパートナーやテクノロジーベンダーと協働し、社員が最新の広告ソリューションやデジタルツールの情報を収集できるように企画された社内向けイベントだそうだ。
「当社の強みは、海外領域も含め蓄積された知見とネットワークです。その情報を社内に発信し、社員一人ひとりが新しいツールや手法を理解・活用できるようにすることが目的です。忙しい業務の中でも、楽しく興味をもってもらえるよう意識して取り組んでいます」
須藤氏はこのプロジェクトの企画・推進リーダーの1人として、メディア各社との調整、登壇者選定、社内広報まで幅広く携わっている。
「初回は試行錯誤の連続でしたが、回を重ねるごとに参加者や社外からの注目も増え、様々な媒体様から『次は自分たちも出展したい』というお声もいただくようになり、半年先まで枠が埋まっているほどです。社内外のつながりが生まれ、想定以上の成果を感じています。」
この取り組みは、DJIBのみならず、電通グループ全体の知見共有を促すと同時に、パートナー企業との新たな協業機会を創出している。
デジタル広告業界への視点——進化を恐れず挑戦を続ける
日系エージェンシーからグローバルエージェンシーに移った経験から、須藤氏は日本市場の課題を肌で感じている。
「グローバルと比べると、日本ではアドテクノロジーやデジタルソリューションの活用度合いにまだ伸びしろがあると感じます。広告主側でも、より質の高い広告に対する関心が今後ますます高まっていくでしょう。」
多様なテクノロジーが登場する中で、何を選び、どう使いこなすかが問われる時代である。
「ツールの進化や手段の多さは素晴らしいことである一方で、わかりづらく混乱を招くこともあり、シンプルなウォールドガーデンメディアの利用に依存してしまう傾向も感じます。Programmaticやアドテクは難しそうという印象で終わってしまうのは勿体ないことですので、広告主様のニーズに1番沿ったものを、これからも根気強くご提案していきたいなと思っています。」
また、業界の急速な進化に対しても、須藤氏は前向きだ。
「様々な媒体様やベンダー様の今後のロードマップをお伺いしたり、開発中の機能を少し見せていただいたりする中で、AIの導入や自動最適化の仕組み、3rd partyツール同士の併用の可能性など、進化のスピードは速く、広告の形はどんどん変わっていきます。新しい仕組みに関心を持ち、早々にチャレンジしていくことができる視点を持つマーケターが、一歩抜けて次のステージを切り開くのではとも感じますので、これからも業界の皆様、広告主様とともに挑戦を重ねていきたいです」
挑戦がキャリアを形づくる——行動から生まれる成長の実感
須藤氏はキャリアの節目ごとに“挑戦すること”を選び取ってきた。今の職場は、オンライン、オフラインと幅広い領域のソリューションの活用ができ、縦割で個々の役割が決まっている組織ではない。
柔軟な組織の中で、幅広い業務に対して、オーナーシップを持って取り組むことにより、1社目で抱いた「次の展望」を、今の環境で実現できている実感があると語る。
「中長期的には、これまで培ってきたグローバルメディアの知見を活かし、日本により広い選択肢を広げていける存在になりたいです。また、海外から日本へ/日本から海外へといった“イン・アウトの両方”を担える存在になることが、密かに描いている大きな目標です」と抱負を語ってくれた。
「20代の頃は“広告はマーケティングの一部に過ぎない”と捉え、将来的には広告主側でマーケティングに挑戦したいと考えていました。だが2社目に転職してみると、エージェンシーという立場でも新たな発見は尽きず、業界の奥深さと面白さを改めて実感しました。」
転職や兼務といった変化を通じ、広告主との協業の幅も増えることで、広告の枠を超えたマーケティングの全体像を体感してきた。
「キャリアに悩んだ時、一度動いてみることで違う視点を得られました。まだ2社目ですが、恐れず挑戦してみることで、成功も失敗も含めたすべての経験が、今後のキャリアを豊かにしてくれると感じています」
国内外のクライアント、パートナー、そして社内の仲間とともに新たな価値を創り出す須藤氏の姿勢からは、次世代を担うマーケター像のあるべき姿が浮かび上がってくる。変化を前向きに捉え、自ら行動することで成長を続けるその姿は、業界の未来に確かな希望を灯している。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。



