AIとオーディエンス戦略が広告を再構築する中、ブランドは次なる競争優位をどこに見出すのか[インタビュー]
by on 2026年6月02日 in ニュース
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デジタル広告業界は、プラットフォームの統合やAI主導のツール、進化するエージェンシーモデルなど、構造的な変化の局面にある。Oguryと電通ランウェイはパートナーとして、一貫したオーディエンス構築戦略を展開している。
ペルソナを起点としたチャネルを横断するアプローチ、AIを活用したマーケティングについて、株式会社電通ランウェイ 代表取締役社長執行役員、Ogury CEO、Ogury Japanカントリーマネージャーに話を伺った。
(Sponsored by Ogury)
-自己紹介をお願いします。
鈴木氏:株式会社電通ランウェイの代表取締役社長執行役員の鈴木篤と申します。電通ランウェイは、「業界の当たり前」にとらわれず、常に新しい可能性を模索し続け、「構想力」と「実現力」を兼ね備えたプロデューサー集団として、メディア・コミュニケーションを軸とした事業を展開しています。
ビドン氏:2025年12月にOguryの最高経営責任者(CEO)に就任しました、ニコラス・ビドンと申します。
松本氏:Ogury Japan株式会社のカントリーマネージャーを務める松本亮と申します。
-現在、広告業界を大きく変えている最も重要な変化は何だとお考えですか。
鈴木氏:最大の要因は、生活者の情報接触行動がかつてないほど極端に多様化していること、そしてそれに伴うデータプライバシーへの意識の劇的な高まりです。これらが相まって、広告業界の従来の前提が大きく揺らいでいます。これまで業界の主流だった『メディア』『クリエイティブ』『データ』といった分業型の代理店モデルは、長らく重要な役割を果たしてきましたが、いまはこの変化のスピードと複雑さの前で限界が見え始めています。分業による組織のサイロ化は、結果としてコミュニケーションの分断を招いてしまうからです。
そのため、電通ランウェイでは設立当初から、企画立案から実行、メディアのバイイングに至るまでを一気通貫でリードできる『マルチスキルを持つプロデューサー集団』の育成に注力し、独自のチーム体制を構築してきました。業界全体が直面しているこの課題に対して、組織のサイロ化を完全に打破し、全体を俯瞰した統合的なアプローチをとることこそが、現在の業界に求められる最も不可欠な進化だと捉えています。
ビドン氏:現在、業界を再構築している大きな要因は3つあると考えています。
1つ目はAIです。現時点では主にメディア運用の最適化など下流工程で活用されていますが、今後は戦略的意思決定に影響を与え、どのオーディエンスが長期的な成長をもたらすのかを理解する上流工程へとシフトしていくでしょう。2つ目はプライバシーです。もはや単なるコンプライアンス上の制約ではなく、戦略設計における前提条件となっています。3つ目は組織モデルです。サイロ化された構造から脱却し、より統合的なアプローチへと移行しています。
-多くのCMOは、マーケティングの成果をより明確なビジネスインパクトとして示すことを求められています。「インパクト」の定義はどのように変化しているとお考えですか。
鈴木氏:私たちが考えるインパクトとは、単なるインプレッションやクリック数といった短期的な指標の達成ではありません。クライアントの持続的な事業成長に直結する『ブランドエクスペリエンス』をいかに高く、深く提供できるかだと定義しています。現在、多くのブランドは、メディア環境が複雑化する中で、いかにブランドを毀損しない安全な環境(ブランドセーフティ)を守りつつ、生活者の質の高いアテンションを獲得するかに投資を集中させています。しかし、多様な接点を持つ現代において、各チャネルでバラバラの施策を打つ部分的な最適化に陥っていては、生活者の心は動きません。
あらゆる顧客接点において一貫したブランド体験を届けるための、全体を俯瞰した統合的なアプローチが、真のインパクトを生み出す絶対的な鍵になります。重要なのは、チャネル起点ではなく、オーディエンスやペルソナを起点として全体を統合することです。

ビドン氏:現在のリスク回避傾向の強い市場においては、すべての投資が明確なビジネス成果に結びつくことが求められています。多くのブランドは依然として、チャネルごとに個別のオーディエンス戦略を設計しています。
真のインパクトは、一貫したオーディエンス戦略を軸とした統合的なアプローチから生まれます。
-日本のブランドにおいて、オーディエンス戦略やAIに関してどのようなトレンドが見られますか。
鈴木氏:日本のブランドは、ターゲットを単なるデモグラフィックやデータポイントの集合体として捉えるのではなく、感情や生活文脈を持った一人の『人(ペルソナ)』として深く理解しようとする傾向が極めて強いと感じています。
Ogury社と電通が共同開発した『dentsu persona hub』※ を通した強力なデータ連携により、机上の空論ではなく、実際のキャンペーンにおいて日本市場における本質的なオーディエンス理解とアプローチが大きく前進しているという確かな手応えを得ています。
※『dentsu persona hub』は、Oguryの独自データと電通の各種生活者調査データを統計的に加工・分析し、より精度の高いペルソナを作成して広告配信に反映できるサービス。配信結果をペルソナターゲティングの専門家が再分析し、改善と提案を行うことで、生活者に対し親和性の高い広告配信を可能にし、新たなペルソナの発見によるさらなる広告配信パフォーマンスの向上を実現。
松本氏:日本では、ブランドがより包括的なオーディエンス理解の構築を目指す動きが見られます。『dentsu persona hub』のような取り組みは、チャネル横断で活用可能な詳細なペルソナ構築を可能にしています。自動化によってメディア運用は最適化されましたが、成果は依然として「誰にリーチするか」に依存しています。
-日本は非常に細分化されたメディア環境を持っています。この中で、ブランドはどのように一貫性を保つべきでしょうか。
鈴木氏:多様なチャネルを横断する際、エージェンシー側やプラットフォーム側が機能ごとに分業していると、どうしてもインサイトが分断され、生活者に届くメッセージにブレが生じてしまいます。これを防ぐため、電通ランウェイでは一人のプロデューサーがメディアやデジタルの垣根を越え、プロジェクト全体を横断的にマネジメントする機動力の高い体制をとっています。しかし、人の力だけでは限界があります。
私たちのこの一気通貫の体制に、IDに依存することなくチャネル横断でペルソナを正確に捉え続ける優れたテクノロジー、例えば『dentsu persona hub』のようなソリューションを組み合わせることで、はじめてあらゆるタッチポイントでブレのない、一貫したオーディエンス戦略が維持できると考えています。
松本氏:多くの企業では、依然としてチャネルごとに独立した運用が行われています。ブランドはサイロ化されたアプローチを超える必要があります。
-今後、AIはマーケターの意思決定にどのような影響を与えるとお考えですか。
鈴木氏:AIは単なる業務の効率化や自動化のツールにとどまらず、人間の思考を深め、より本質的な価値を生み出すための頼れる『相棒(Buddy)』になると考えています。その思想のもと、当社でも広告提案のプロセスを一気通貫で支援する独自のマルチエージェント型AIプラットフォーム『Mates AI』を開発し、実務への導入を進めています。
複雑なデータ分析や基礎的な資料作成といった作業をAIに任せることで、私たち人間は、キャンペーンの成否を大きく左右する『高度なクリエイティビティの追求』や、生活者の文化的な文脈の深い理解に、より多くの時間を注ぐことができるようになります。AIは人間の創造性を解放するための重要な鍵になるはずです。そしてその結果として、CMOの意思決定の質も飛躍的に向上することに繋がります。
ビドン氏:AIアシスタントの普及により、影響力が発生するポイントが変化しています。AI時代において、大規模言語モデルは文化的情報の集約装置として機能します。調査によれば、クリエイティビティはキャンペーン成果の約半分を左右するとされています。

-プライバシーに対する意識の変化に対し、ブランドはどのように対応していますか。
鈴木氏 : 日本には『不易流行』という考え方があります。生活者のプライバシーを尊重し、誠実に向き合うという『本質(不易)』は絶対に守りながらも、そこへ到達するためのアプローチは時代に合わせて大胆に変革(流行)し続けなければなりません。当社はJICDAQなどの認証を取得し、透明性と安全性の担保を徹底していますが、いつまでも古いトラッキング手法に固執するべきではありません。
個人の監視や行動追跡に依存することなく、ペルソナベースで高い関連性を持った広告体験を創出できる革新的なテクノロジーの活用こそが、これからの時代に適応した最適解であり、健全な広告エコシステムを守る道だと確信しています。
ビドン氏:プライバシー意識の高まりにより、ブランドはデータの収集と活用においてより慎重になっています。関連性の高いマーケティングは、必ずしも過度なデータ追跡を必要としません。
-エージェンシーモデルはどのように進化していますか。
鈴木氏:エージェンシーの役割は、単なる『広告枠の買い付けや仲介者』から、クライアントのビジネスの持続的な成長に深くコミットし、ともに課題を解決していく『伴走者』へと明確に進化しています。その使命を果たすためには、自社のリソースだけに閉じこもるのではなく、オープンな協業が不可欠です。
戦略のプランニングから実際のメディア配信に至るまでのギャップを埋めるため、当社はOgury社のような最高のテクノロジーパートナーと共に『dentsu persona hub』の実践的な活用を進め、統合的なソリューションを提供しています。両社が専門的な知見を深く共有し、高め合うような強固なパートナーシップの構築こそが、クライアントの事業成長を牽引する最大の原動力になると信じています。
松本氏:各種ツールの進化により、ブランド、エージェンシー、テクノロジーパートナー間の連携がより強化されています。重要な課題の一つは、シグナルを損なうことなくキャンペーンを実行することです。戦略立案と実行をつなぐことが、極めて重要となっています。
ABOUT 角田 知香
ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。





