成長を続けるリテールメディア市場―MADSのサイネージアドネットワークが繋ぐ「三方よし」の未来【インタビュー】
by on 2026年5月13日 in ニュース

株式会社MADSはオンラインで繋がったリテールメディアのサイネージやタブレットなどの第三者デバイスにコンテンツや広告を配信するデジタルサイネージアドネットワークを展開している。また、美容室に設置するタブレット型サイネージサービス「OCTAVE(オクターヴ)」や複数の屋外3Dサイネージも手掛けている。
同社の取り組みについて、工藤裕貴 執行役員に話を聞いた。
「モーメント」を捉えるメディアの設置が進む
―MADSの前年度のお取組について教えてください。
MADSが提供するデジタルサイネージアドネットワークの領域を広げながら、広告の配信枠を増やしてセールスをしてきました。また、広告配信用のCMS「MONOLITHS」も提供しているため、その導入先の拡大も合わせて継続しています。
近年の変化としては、特にリテール周りの案件数や売上が伸長していますが、銭湯やサウナ、トイレなど、モーメント(消費者の興味・関心が高まる瞬間)を捉えることが出来る場所へのサイネージ設置が増えると共に、それらメディアへのCMS導入が増えて来ているのも一つのトレンドにはなります。

デジタルOOHネットワークシステム「MONOLITHS」
リテールメディアでは広告出稿額が倍増するケースも
―リテール周りの案件数や売上の伸長にはどのような理由があるのでしょうか。
メーカーの広告主において、流通を見てきた「営業・販促の組織」と、顧客や市場を見ている「マーケティングや宣伝の組織」、この両者の組織同士の連携を重視する企業が増えたのが1番大きな理由だと捉えています。
誤解を恐れずに言うと一昔前はいわゆる縦割り体制が多く、一気通貫のマーケティング施策は店舗上であまり取られていない印象でしたが、今は営業とマーケでしっかりと連携を取られたうえで、広告出稿に対しても積極的になってきました。
これらの背景には、リテールメディア広告を考えた時に、購買データや位置情報を使った配信、店舗のアプリを使った配信、店頭のサイネージを通した配信など、様々な広告メニューが増えてきたことで、メーカー広告主企業において、リテールメディア広告に本腰を入れて考えていただける環境が日本で整ってきたことがあると考えています。
その結果、商品の販促費ではなく、予算がより大きいマーケティング費からご出稿いただくケースも増えており、広告出稿額が従来の2~5倍に増加することもあります。

ドラッグストアやスーパーマーケットなどでリテールネットワークを展開
―リテールメディアにおける今後の課題や期待は。
緩和は進みつつありますが、近隣の不動産や自治体の広告などの、いわゆるノンエンデミック領域(その店舗で販売されていない商品)の広告掲載基準についてはポイントとなります。広告掲載基準が緩和されれば、広告出稿の対象となる広告主が増えるので、ポテンシャルは非常に大きいですね。
また、店舗サイネージでは「単一流通に対してマーケティング予算から広告を出すことは難しい」という状況もしばしば起こっています。
例えば、広告で宣伝をしたい商品が、MADSが全国で連携しているウエルシア薬局を中心に展開されている場合は差し支えないですが、広告主が大手になればなるほど多くの流通=他のドラッグストアなどにも同じだけ商品を配荷される傾向があります。そのような状況では、特定の店舗のみに大きな予算が投下されて大量の広告が流れている状況は望ましくないため、マーケティング予算からの広告出稿は難しくなります。
ただ、既存で設置されているサイネージをMADSのアドネットワークに繋ぎこんでいけば、複数の流通・店舗に一斉配信をすることが出来るようになるので、そのような未来を描いていければ、広告主や店舗の皆様とも三方よしの状態に持っていけると考えています。
新宿に続き名古屋でも3Dサイネージを展開
―MADSでは美容室に設置するタブレット型サイネージサービス「OCTAVE(オクターヴ)」の提供も続けています。
OCTAVEは各座席に設置されたタブレットから広告やコンテンツを一方向で流すだけでなく、視聴者が好きな動画をタッチ式で選べるなど、平均90分とされる美容室利用中の持て余し時間を有意義なものに変えていくことをコンセプトに、設置拡大を続けています。
OCTAVEが設置されている美容室は、タクシー同様にワントゥーワンで長時間滞在する環境でありながら、美容意識へのモーメントが高まる状況・条件が際立っています。そのためヘアケア商品や化粧品の広告と相性が良いですが、アパレルや旅行商品と相性が良いことも確認出来ています。
現在は2,000店舗以上に設置され、台数も1万面を超えましたが、1人1人に対してしっかりとリーチや体験をさせていきながら、規模感や売上も更に広げられるよう、取り組みを進めていきたいと思います。

―屋外3Dサイネージ「クロス新宿ビジョン」の取組状況は。
現在は2方向で反響があると捉えています。1つは広告媒体としてシンプルに、3Dや3D以外も含めて出稿をしたいというニーズです。出稿した広告の反響もすごく大きく、現在も引き続きご好評をいただいている状況です。
他方で「同じような屋外3Dサイネージを設置したい」というご相談も非常に増えてきました。2024年から稼働している「名古屋スクランブル × ビジョン」もその成果の一つとなります。
こちらは名古屋駅前のコムテックタワーに設置された縦長の3Dサイネージとなりますが、MONOLITHSにより、従来のように期間を指定して広告枠を購入する予約型の配信だけではなく、任意の曜日や時間、温度などの天候情報と連動し、インプレッション単位で購入する運用型の広告出稿も可能となっています。

「名古屋スクランブル × ビジョン」
企業同士の連携が進むリテールメディアネットワーク
―改めて、貴社の事業展望についてお聞かせください。
1人のお客様のカスタマージャーニーを考えていくと、家に居る時と店舗で商品を買える状態の時とで、導線が離れすぎてしまえば、広告主に良いサービスを提供することが難しくなってしまいます。
その前提で、「お客様の生活導線」と「複数の流通」をそれぞれ追いかけていけるように、企業同士でのデータやネットワークの連携・提携が業界内で活性化しているのが現在の状況だと考えています。
MADSは「サイネージのアドネットワーカー」という立ち位置で、ドラッグストアやスーパー、家電量販店など、様々な店舗に設置されているサイネージをつなぎ合わせて、1つのネットワークとして配信可能なプラットフォームを作れる立場にあるので、そのうえでリテールサイネージ広告を今後も盛り上げていきたいと考えています。
また、OCTAVEについては、美容室という特定のモーメントが高まる場所に広告配信が出来ることへの価値を評価いただいていますが、サンプリング配布などもとても良い反響が出ているので、ワントゥーワンの環境ならではの体験価値の提供により、さらに事例を増やしていきたいと考えています。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 副編集長
日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。





