「水を濁す存在」から「市場を健全化」する手段に―グリーエックスとInMobiが目指すゲームアプリの広告マネタイズ

右:グリーエックス株式会社 取締役兼カスタマーエクスペリエンス本部本部長 小室喬志氏
左:InMobi Japan株式会社 シニアゲーミングBDマネージャー 三野泰宏氏
JustCo Gran Tokyo South Towerにて撮影
独自のキャラクター、世界観、ストーリーを提供するミッドコアゲームは今、そのマネタイズ手法のあり方を始めとして構造的な変化を遂げている最中にある。時に必要悪と位置付けられてきたゲーム内広告が名誉挽回で真の救世主となるのか。それぞれ異なる立場からミッドコアゲームの収益化支援を行うグリーエックスとInMobiの2社に話を聞いた。(Sponsored by InMobi)
IAPとIAAをいかに両立させるか
―自己紹介をお願いします。
小室氏:グリーエックス株式会社で取締役兼カスタマーエクスペリエンス本部の本部長を務める小室喬志(こむろ たかし)と申します。アプリパブリッシャー向けの広告マネタイズ事業を統括しており、2013年のサービス開始以来、累計1万本を超えるアプリにご利用いただいてきた広告マネタイズプラットフォーム「アドフリくん」を中心に、動画リワード広告を軸とした収益化ソリューションなどを提供しています。グリーグループの一員として、私たち自身がゲーム開発・運営の現場を熟知している強みを活かし、ゲームに強いサービスとして、ユーザー体験とパブリッシャー様の事業成長の両方に寄り添うことを使命としています。
三野氏: InMobi Japan株式会社にてシニア ゲーミング ビジネスデベロップメント マネージャーという役職を務める三野泰宏(みの やすひろ)と申します。グリー株式会社でB2Cのマーケティング・プロモーションを担当、CriteoにてApp Retargetingの日本及びアジア太平洋域の事業責任者などを経て、今年2月よりInMobi Japanアプリパブリッシャー向けの収益化支援等を担当しています。とりわけゲーム事業者様に対して、アプリ内課金(IAP)と広告マネタイズ(IAA)を両立するための取り組みを支援させていただいています。
―ミッドコアゲームの収益化に関する課題をお聞かせください。
小室氏:日本におけるミッドコアゲームのマネタイズは長らくIAP偏重でした。2010年前後にはブラウザベースのSNSゲームでガチャとアイテム課金を中心としたビジネスモデルが確立し、スマホアプリにもこのモデルが引き継がれてきました。グリーグループも含め、日本のゲーム業界はこのIAPモデルで世界をリードしてきた歴史があります。
加えて、日本ではアニメやゲームのIPの世界観が強く重視されるため、他社ゲームへユーザーを送客する可能性がある広告マネタイズは敬遠される傾向にありました。
グリーエックス株式会社 小室喬志氏 JustCo Gran Tokyo South Towerにて撮影
しかし、外部環境は著しく変化しています。大規模な資本を投じて開発された海外発のゲーム、ショート動画、SNSアプリなどとユーザーの可処分時間及び所得の奪い合いが激化しており、日本市場におけるモバイルゲームアプリのIAP収益や使用時間は数年前と比較して17%ほど低下していると言われています。(出典:SensorTower 2025モバイル市場年鑑)
また、個人情報保護強化の一環としてIDFAやサードパーティCookieの利用が制限されたことで、UA(ユーザー獲得)におけるターゲティングの精度が落ちました。ATT導入後、ゲームアプリのIDFA取得承認率は他ジャンルのアプリ平均と比較して高いとされながらも、依然として30%~40%に留まっています。IAPのみに依拠して従来のLTVを維持することが構造的に困難になり、ミッドコアゲームにおいてもIAPとIAAを組み合わせたハイブリッドマネタイズが主流となりつつあります。
―広告マネタイズに対する警戒心は解けてきたということですか。
小室氏:ユーザー体験を最大限に尊重した日本独自の広告実装思想が進んだことで広告マネタイズに対する抵抗感は薄まってきました。代表例が、動画広告を視聴することと引き換えにゲーム内で使用できる報酬を得られる動画リワード広告です。やみくもに広告枠を設けるのではなく、ゲームアプリ内のコンテンツの一部として設計された広告を実装するという思想が、日本のミッドコアゲーム市場では定着しつつあります。
三野氏:IAP文脈のミッドコアゲーム領域で日本は世界を牽引しています。他の市場で主流となっているハイパーカジュアルゲームは寿命が短いタイトルを次々と生産するビジネスモデルなので大量に広告を表示させますが、ミッドコアゲームでは高額課金をしてくれるユーザーもいるのでユーザー体験には非常に気を遣います。
カジュアルゲームでは当然ながら世界的にもふんだんにIAAの事例があって、リワード広告導入で課金頻度も15%以上伸ばした上で収益を40%増やし、同時にセッション時間が20%増えた、などもあります。これをミッドコアでも再現性を構築できてきた、というのが市場の現在地と見ていますが、日本はその進化の先端になり得ると考えています。
―ミッドコアゲームにIAAを導入することで、多少はIAPを通じた収益も減少するのでしょうか。
小室氏:当社が支援してきた事例では、動画リワードを適切に設計すれば、IAPに大きな悪影響を与えずにIAAを上乗せできるケースが多いと見ています。当社は、IAP収益の減少を防ぐための助言や運用知見を、パブリッシャー様にご提供しています。
例として、ガチャ用のアイテム(魔法石やコインなど)を販売しているケースを考えてみます。そのアイテムが売られているショップに「1日に1回だけ動画広告を見たら、ほんの少しだけそのアイテムをもらうことができる」という動画リワードを実装したところ、IAPが減少するどころか、DAUの約2割をショップに送客できたというような事例があります。
また、動画リワード広告の本質は、ユーザーの体験を阻害しない位置に実装できることです。日本のIPゲームではそこからさらに一歩進んで、ユーザーの体験を促進し、ゲーム内の課題を解決する形での実装が進んでいます。
実例として、株式会社MIXIの「モンスターストライク」のケースをご紹介します。本作では、ガチャなどで得たキャラクターはモンスターボックスと呼ばれる倉庫に格納されますが、格納数には上限があり、オーブを使ってボックスを拡張することができます。しかし、ガチャに使えるオーブをボックス拡張に利用することはユーザーによっては「コスト負担が大きい」と感じられる事もあり、思うように拡張が進まないケースもありました。
そこで運営側がモンスターボックスの拡張を報酬とする動画リワードを導入したところ、ユーザーのボックス拡張は促進され、加えて、IAAによる売上もアドオンされました。「ユーザーの体験を促進し、ゲーム内の課題を解決する」広告実装の好例です。
こうした設計を丁寧に行うことで、IAAがIAPを侵食することはほとんど無くなると考えております。
ゲームアプリとブランド広告主
―今では多くのミッドコアゲームが広告マネタイズを積極的におこなっているのですか。
小室氏:ゲームタイトルによって温度差はあります。競合タイトルの広告表示はNGドメインで除外しつつ、それ以外についてはアプリ内課金の収益性を鑑みながら、広告マネタイズへの注力度や許容度を調整しているというのが実情だと思います。
三野氏:うなぎ屋の秘伝のタレのように、競合タイトルを中心としたNGドメインを徐々に継ぎ足し、熟成された秘伝のリストがある媒体側のお客様もいます。そういったことも広告自体が受け入れられ、成熟されてきている一例かと思います。
小室氏:今後は、いわゆるブランド広告やナショナルクライアントの広告がIAP / IPゲームでもっと配信されるようになってほしいと考えています。モンスターストライクのようなIAPゲームには、能動的かつ長時間プレイしてくれるユーザーが多く、広告媒体としての価値は高い、且つブランドセーフティです。例えば、人気IPに基づく国民的なゲームアプリの動画リワード広告を時間限定でジャックできれば、日曜のゴールデンタイムに放映されるアニメ番組にCMを入れるのと同じくらいの価値があるのではないでしょうか。
三野氏:ブランドセーフティ面でいうと、いわゆるオープンインターネット、特にウェブは、良い意味でも、そして特に悪い意味でも広告枠と広告主が多様ですが、アプリはストアの審査を受けなければリリースできないので、公序良俗に反するような内容を持つアプリ自体が極めて少ないです。弊社は歴史的にアプリの流通比率がかなり高く、その点で安心感を持っていただけることはアドバンテージです。InMobiではウェブの媒体社様を増やすことにも直近では積極的ですが、不適切な広告及び配信面をブロックする仕組みも整っているので、健全な広告配信環境が整備されています。
InMobi Japan株式会社 三野泰宏氏 JustCo Gran Tokyo South Towerにて撮影
ゲームアプリ以外の広告については、当社はAIを活用したエージェンティック型ショッピングプラットフォーム「Glance AI」を立ち上げ、様々なパートナーシップを通じて消費者との接点を広げています。CTV向けサービスである「Glance CTV」も日本での展開を控えており、こうした取り組みを通じてブランド広告主の出稿先をさらに拡充していく考えです。これまでテレビCM、YouTube、InstagramリールやTikTokに限定されがちだったブランド広告の新たな受け皿として、ミッドコアゲームはCTVと並びブランディングに適した配信面になり得ると期待しています。当社としても、その普及を積極的に後押ししていきたいと考えています。
小室氏:アドフリくんは、パブリッシャー様毎にアプリ(ゲーム)サイクルに則った広告枠の設計を行っております。高い専門性が強みでより効果的な運用の仕組みをご提供できます。ただ、その枠に対してユーザーとマッチング度の高い良質な広告をいかに配信するかという点については、InMobi社のような広告配信事業者の力が不可欠です。良質な広告を増やしていくために、業界の連携を今後深めていきたいと考えています。
誰もが楽しめるゲームであり続けるために
―ミッドコア領域のゲームアプリ広告は今後どのように進化していくのでしょうか。
三野氏:当社が主体的に市場の課題解決を進めていく提案としては、新機能としてパブリッシャー・パス・シグナル(PPS)というものがあります。ユーザーがアプリを開いて広告リクエストを送信する際にそのユーザーのセッション深度や広告との接触履歴に関する付加情報を加えたシグナルを飛ばしてもらうための仕組みです。
コンバージョン手前のローワーファネルのリターゲティングは、一番細かい粒度で「特定の商品に接触したユーザーにその広告を出して購入を促す」というものですが、基本的には「CVRが高い・ROASが高い」というユーザー価値が主題です。
一方、認知獲得をベースにするファネルのアッパーからミドルにかけては、「どのユーザーが広告の反応率が高いか」などが有用なデータになります。この個別のユーザー価値は媒体がすでにお持ちのデータに潜んでおり、小室さんが仰ってくれた「ブランド広告やナショナルクライアントの広告」の呼び水となります。
ユーザーを一人ひとりではなく集団化したオーディエンスないしはセグメント化する手法自体は、SNSなどプラットフォーム側が優位な仕組みではありますが、PPSはこのセグメントをもっと広い範囲で草の根的に構築するものです。
個人情報は取り扱わないので、ユーザーの同意を改めて得る必要はなく、パブリッシャー様に当社提供のSDKの中でパラメーターを設定していただくだけで利用可能です。PPS導入によって収益が1.5倍、CPMが13%増になるなどの事例が既に出ています。
加えて、これまで試験的に展開していた当社のネットワークを通じたPMPやプログラマティック保証などの枠組みもほぼ完成形に近づきつつあります。
小室氏:ユーザー体験を重視するミッドコアゲームでは、IAAを中心としたハイパーカジュアルゲームと比較して広告枠の数が少なく設計されているため、PPSのようなファーストパーティシグナルや、app-ads.txtのようなサプライチェーンの透明性を高める仕組みを活用することで、一枠あたりの価値を高めていくというのは、極めて正攻法のアプローチだと思います。
―ミッドコアゲーム市場は今後どのように変化していくと思いますか。
小室氏:ゲームアプリの開発費が高騰し、競争も激化している中で、業界全体として短期で確実に投資回収を実現したいとのプレッシャーが高まっています。このプレッシャーが行きすぎると、極論すれば一部のヘビーユーザーにマネタイズが偏り、コンテンツそのものを純粋に楽しんでいるユーザー層が薄くなってしまうリスクもあります。これは業界全体として避けたい未来であり、このバランスをどう設計していくかが問われていると考えています。
三野氏:トレンド自体はその避けたい未来に進んでいるとも言えて、ここ数年のゲームアプリ市場は、全体的なインストール数は縮小しつつあるのに、課金額は成長しているというやや歪な展開を見せ始めています。ごく一部のユーザーがもっと多くのお金を積むことで市場成長が維持されていて、「課金圧」といったあまり耳にしたくない用語も聞かれるようになってきました。
このような市場環境において、ゲームアプリの収益源をIAPのみに依拠するリスクは拡大しています。ミッドコアゲームにとってこれまで広告は「水を濁す存在」として受け止められてきたかもしれませんが、今後はむしろ「市場を健全化させる手段」となるべきで、その状態をいかにユーザーに心地よく実現できるか取り組むフェーズに入っています。
動画コンテンツでは映画やアニメの幕間にいきなりCMを挟んで体験を中断してしまうようなケースも、インターネット上に置かれたゲームコンテンツであればもっと広告表示機会を柔軟に創出できるし、実際にそうした事例も増えてきています。そのためにも、ユーザー、広告主、そしてゲーム会社すべてが恩恵を得られるような広告配信の仕組みを引き続き整備していきたいと思います。
InMobi JapanはGame Future Summit 2026(6/3 ベルサール渋谷ガーデン)にて下記2セッション(ステージB)を提供します。 17:20- ゲーム成長を加速する!〜InMobi Japanが変えるマネタイズと広告の未来〜 17:35- ゲームビジネスは課金の先へ〜コアゲームが切り拓くマネタイズと成長の新戦略〜 ※前出の小室氏も上記セッションにパネリストとしてご登壇いただきます。 更に深掘りします!是非お聴きにいらしてください! 詳細はイベント公式ホームページにて https://game-future-summit.jp/
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。








