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オープンエクスチェンジマーケットにより必要とされるのは、信用と透明性

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

Coull CEOのIrfon Watkins氏は、オープンなエクスチェンジ市場で何かが変わったと主張している。フラウドの横行や、透明性の欠如、プライベート・マーケットプレイスの人気が高まっていることが、オープンなエクスチェンジに損害を与えている大きな課題である。だが様々な対策によって、現在のオープンエクスチェンジを成長軌道に戻すことは可能だ。

 

エクスチェンジ市場の目的は、大規模なインベントリの売買のために効率的なプラットフォームを提供することである。需要と供給の規模は、流動性を生む。理想的な世界では、この流動性によって、価格が下落することなく取引が継続していく。

2016年までに、プライベート・マーケットプレイスでの取引額は33億1,000万米ドルに上ると予想されており、米国のプライベート・マーケットプレイスで競売にかけられるディスプレイ広告はほぼ3倍にもなる見通しだが、オープンなエクスチェンジ市場への投資はまったく増える見込みがない。エクスチェンジの不透明性と横行するフラウドにより、エコシステムの均衡が脅かされている。プライベート・マーケットプレイスの台頭は、オープンエクスチェンジに変化が必要であることの証である。

 

現在、オープンエクスチェンジにおける価格は急速に下落している。その要因はよく知られているが、供給過多およびビデオ広告市場における信用低下である。これらが引き金となり、ブランドの予算はより厳密に管理されたプライベート・マーケットプレイスへ向かうようになっている。どのようにこの問題に対処すれば、オープンエクスチェンジ取引モデルを再活性化させ、その取引の効率を回復させられるのだろうか。

 

積極的なインベントリの制限

ほとんどのエクスチェンジは、デマンドサイド、サプライサイドの両者から利ざやを得ている。売り手と買い手をつなぐ公平かつ見えない存在として、利益を得ているわけだ。エクスチェンジは、広告主のインベントリの質に対する関心に対して、リップサービスをする一方で、最近までインベントリのマーケットプレイスに対する流入の制限に対しては、短期的な収益を阻害しうることから、積極的な対応をしてこなかった。

問題のありそうなインベントリへの対応を怠ってきたことが、ボットトラフィックや虚偽のインベントリなどの不正行為を助長してきた。その結果、より厳格に管理されたプライベート・マーケットプレイスへの(広告予算の)流出を加速させた。オープンエクスチェンジの信用を取り戻すための第一歩は、不正なインベントリをエクスチェンジで競売される前に排除することである。この課題への取り組みは始まりつつあり、AppNexusは最近ATS Londonで、疑わしいインベントリを排除していくことを発表したが、まだやるべきことは多く残されている。

 

データがなければ最適化はできない

データはデジタルの救世主であり、ターゲットを絞った広告を大規模に展開する際に、過去のでたらめな手法から離れるための鍵と考えられている。それにも関わらず、入札リクエストの段階において、DSPが利用できるデータは非常に不足している。DSPの役割は、少ない費用でメディアから結果を生み出すことである。そのために、購買行動を容赦なく最適化・洗練する。このプロセスは、データがなければ不可能であり、それゆえに変化が必要なのだ。

まず必要なことは、入札の勝敗結果の通知である。DSPが簡単な通知によって、広告主が入札した競売に勝ったかどうかを知らせる。いかにも単純なことのように聞こえるであろう。実際にその通りなのだが、これは一般的な機能とされていない。この機能によって、DSPが特定のユーザーへのフリークエンシーキャップを頻繁に実行できるようになる。というのも、かつて広告主は、自分がどれだけ落札できたのかが分からなかったのだ。これはなんとも非効率的である。

 

現在のエクスチェンジは、ある程度OpenRTBの仕様によって規制されているが、今まで特定のIABスタンダードコンテンツカテゴリーへの自動入札を実現する努力がなされてこなかったこと、また、このような混乱が起こりうる環境で、入札前に閲覧可能なデータが入札リクエストに含まれていないことなどは、まさに驚きである。

広告主が、バイイングするメディアについてより多くの情報を持って決断できるようになるには、データ要素が必要なのである。

 

信用と利用可能なデータがバイイングの不透明性を打開する鍵

オープンエクスチェンジとプライベート・マーケットプレイスとの実質的な唯一の違いは、利用可能な情報である。これほどまでに、オープンエクスチェンジにおいて厳格さが不足している以上、広告主が安全なプライベート・マーケットプレイスを選ぶことを責められない。

しかし、アドエクスチェンジの未来は、現状を今後どう変化させていくのかにかかっている。アドエクスチェンジにとっての今後の課題は、正当性を確証し、入札前に不適切なインベントリを除外し、信用を築き、すべての入札リクエストごとに複数のデータ要素を追加し、広告主がそれらに基づいて決定を下せるよう可能な限りの情報を提供することである。

インベントリの取引においてこのような枠組みが大規模に展開できれば、メディアの販売サイドが公平かつ弾力性のあるプライスポイントで需要を得るための要件を満たすとともに、広告主が大規模に高品質なメディアを利用できるようになる可能性は、まだ残されている。

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。