スマートフォン広告の先にある市場で勝負を挑むCyberZ [インタビュー]

日本ではいち早くスマートフォン広告市場にコミットし、その成長をけん引し続けてきたCyberZ。成長を謳歌するスマートフォン広告市場の現状とどう向き合い、今後、スマートフォン広告市場のリーディングカンパニーをどう舵取りしていくのであろうか。同社代表取締役社長である 山内 隆裕氏に聞いた。
 

 

 

 

 

マーケットリーダーが語る、スマートフォン広告市場の現状と今後

 

-今年のスマホ広告の市場動向について、現在感じられていることをお聞かせください。

山内 隆裕氏スマートフォン端末の普及が進み、これに合わせてスマートフォン広告市場も高い成長を遂げています。以前は大手クライアントの新規参入がそれを後押ししていましたが、今では1広告主あたりの出稿額増へと変化が見られます。クライアント側の出稿競争が激化しているのが現状です。

当社の主なクライアント層の一つであるモバイルゲーム業界は、再編により大手ゲーム会社による寡占化が進んでいます。制作費やプロモーションコストが上昇し、体力のある企業でなければ大きく成功するのが難しい環境に変化しつつあります。このため、特定の複数企業による売上ランキング上位の寡占が進んでいます。市場に評価されるタイトルのあるクライアントの広告予算は現在も増加し続けています。もう一つの大きな変化は、海外ゲーム会社による日本市場への広告出稿が活発化している点です。

 

-おっしゃられた環境変化の中で、クライアントの出稿スタンスに変化は見られますか?

大きく分けて二つあります。出稿先が従来のアドネットワークメインから、ソーシャルメディアなどのインフィード出稿へシフトしていること。もう一つは、出稿の目的です。ダウンロード数から、リターゲティングや広告主の保有するユーザーデータを活用しエンゲージメントを高め、DAUや収益性を高めることの比重が高まりつつあります。これは、先ほど申し上げたクライアント数増に歯止めがかかり、クライアント間での競争が激化したこととオーバーラップしていますね。このような環境変化にあっても、当社のモバイルマーケティングプラットフォームF.O.Xの強みが活かされています。今後も、テクノロジーの領域をブラッシュアップに注力していきます。

 

-次に、クライアントの業種について。モバイルゲームに次いで伸びている業種は何でしょうか?

Eコマース、オンライントラベル、また音楽配信系のアプリなどです。今後は、動画配信メディア領域のクライアント層などによる出稿も増えてくるでしょう。

 

-スマートフォン上で、ユーザーはウェブとアプリをまたいだ動きが活発化しています。ユーザーフラグメント化への対応について、クライアントにはどんな要望がありますか?

クライアントの要望はユーザー行動を一元管理し、広告効果や売上を向上させることです。したがってアプリだけ、ウェブだけではなく、どちらも統合管理したい。われわれのF.O.Xを活用すればその要望は実現されます。われわれのサービスを使っていれば、クライアントはF.O.Xにデータを蓄積し続けることも可能です。F.O.Xはまた、主要なスマートフォンメディアに第三者配信をすることができます。

 

-海外では、例えばEコマースのインド最大手企業がウェブサイトを閉じてアプリに振り切るというような動きもあるようです。日本で今後そのような流れになる兆候はあるのでしょうか?

ユーザーのスマートフォンメディアの視聴態度がアプリとウェブとでは異なっています。例えばブラウザは、暇なときに一時的に視聴するような傾向があります。検索サービスなどはブラウザからのトラフィックが多いのではないかと思います。アプリの場合は、ダウンロードをして使用するため、どちらかというとロイヤルユーザーがリピートをして使うというケースが多いのです。例えばネットで日常的に使う消耗品を買うAmazonユーザーのように。したがって、新規ユーザーに対しては、検索経由の流入を想定してウェブブラウザで対応し、その後アプリユーザーへと移行させる戦略を取るクライアントが多いです。

一方、Googleは、ディープリンクを活用したアプリマーケティングを提唱しています。そうなると、アプリもウェブもあまり関係がない世界になるでしょう。

 

-貴社が予測されているように、最大のクライアント層であるゲームアプリ業界は、今後成長が緩やかになることが予想されています。これに伴い、広告出稿額の増加が抑制される可能性についてはどうでしょう?

山内 隆裕氏今のゲーム性を前提とすると、アプリゲーム市場の成長率は今後は鈍化していくでしょう。しかし、私は、2016年度中に今後の成長性を決めるターニングポイントが訪れるとみています。2016年度中にキャリアによる基地局のアップデート(ファームアップデート)の実施が予定されていますが、そうなればモバイル通信速度は現在の約3倍になります。現在ダウンロードに数十分を要するゲームが、数分もかからずダウンロードできるようになるといわれています。このことが、今後提供されるゲーム性にいい影響を及ぼすのではないかとみています。今後はオンラインゲームで提供されているようなMMOや、同時接続して3対3で対戦が出来るもの、欧米で流行しているeスポーツなどのようなものが主流になっていくのではないかと。そうなればユーザーのARPUが上昇し、モバイルアプリゲーム市場は新しい成長トレンドを迎えるのではないかとみています。

 

 

スマートフォン広告事業の先にある、CyberZの方向性と戦略とは?

 

-今後に向けた貴社のスマートフォン領域における戦略についてお聞かせください。

われわれが掲げている戦略は、非常にシンプルです。一つはSDKを極めること。今、F.O.Xは4000アプリ近くに導入されています。今後は、海外ランキングでもトップセールスのアプリにもわれわれの優れたプロダクトの導入を進めていきます。国内で機能の垂直展開をしながら、それを海外に水平に広げていきます。

 

山内 隆裕氏-F.O.XとOPENRECとのシンクも想定されていますか?

現状そのような要望も増えており、先々はそのようにしていくことも視野に入れています。

 

-OPENRECを出された背景についてお聞かせください。ユーザーを囲い込むことで、アプリゲーム会社を囲い込んでいくという戦略と理解してよろしいでしょうか?

みなさんそのように思われているみたいですが、少し違うところを狙っています。これは広告代理事業の延長戦ではありません。先ほど申し上げた、今後スマートフォンにオンラインゲームの世界が来るということを視野に入れたものです。私は個人的にもゲームが好きですが、例えばウイニングイレブンやオンラインゲームにあるMMOの攻略方法などが動画で紹介されていたら、ついつい見てしまいます。アプリゲームでもそうした世界が近い将来訪れることを見据えて、メディアを立ち上げます。

 

-サイバーエージェントグループさんのこれまでの展開とオーバーラップしますね。そのようなイメージで捉えてもよろしいのでしょうか?

そうですね。広告代理事業以外に、何か自分たちで新しいものをつくっていければ楽しいと考えています。

広告代理事業は大きなビジネスですが、同じ方向で勝負を続けてもいずれ限界が来ます。であれば、F.O.Xを作ったときと同じような変化をしたいと思いました。これが、OPENRECを開始した背景です。

 

-今後も、広告代理事業以外のところで新しいサービスの提供を考えているのでしょうか?

特に意識していませんが、考えていることは盛り沢山です。BtoCとBtoBの両側面で、F.O.Xをベースにして、何かの価値をあげることが可能なサービスを検討しています。広告代理事業だけではできないことかなと。F.O.Xを開発し、今では50〜60名のエンジニアが在籍しています。

 

-海外の展開については、今後どのように進めていかれますか?

現状はサンフランシスコ、台湾、韓国、中国に展開しています。スマートフォン端末、Facebookなどのソーシャルメディアの普及状況、またわれわれはFacebookの公式パートナーですので、彼らの展開状況もインフラの一つとして重視しています。ユーザーのメディア可処分時間や可処分所得の多寡もありますね。発展途上ではなく、自分たちの余暇をスマートフォンで消費し、コンテンツに対して一定の対価を支払うということが文化として根付いているかどうか。これは国や地域により結構な差があります。ブラジル、ロシア、インドなどはその傾向が見られ始めています。一方、インドネシアやベトナムではその文化がまだ根付いていない。そうするとコンテンツが全く売れず、われわれのクライアント層はマーケティングにコストをかけられなくなります。こうした様々な要因を鑑みて、参入する市場を見定めています。

 

-海外では他の国内の事業者も含めて競合が多いですが、その中で、貴社はどのように戦っていきますか。

一つはF.O.Xを基軸にしていきます。F.O.Xは、Facebook、Twitterとも公式パートナーです。現地のメディアをつなぐのも大事ですが、この二つのプラットフォームは大きなプレゼンスとなります。

もう一つは、展開先の文化を深く理解すること。国や地域で商習慣は異なります。日本と同じやり方で中国、台湾、韓国などに行っても厳しい。現地の企業に資本を入れたり、現地人を雇用したりして、事業だけに留まらない面でのローカライズも進めています。

 

-現地企業の買収も想定されていますか?

そういった想定も視野にはいれてはいます。早めに判断して進めていきたいと思っています。

 

-OPENRECの海外展開はいかがでしょうか?

勿論、考えています。ゲームは全世界で普及していますので需要があることはわかっているため、早めに展開をしたいと思っています。今年10月に体制変更により、私がOPENRECの事業責任者になります。素晴らしいサービスにしていきますよ。

 

 

スマートフォン広告市場の先を見つめるCyberZ

 

-貴社は、2011年にフィーチャーフォンビジネスをバッサリと捨てて、スマートフォンに集約されました。今後もあのときのような取捨選択をすることはありそうでしょうか?

はい、いくつかありますね。一つは動画関連のビジネス。動画のKPIは、これまでわれわれが得意としてきた領域とは異なります。現状の生産性は他に劣るのですが、この領域により資本を投下して掘り下げていくことでビジネスを拡大していく必要があるため、何らかの判断を下す必要があるなと感じています。

われわれは、広告市場の末路をフィーチャーフォンの時に経験しました。広告代理事業だけでは、価格競争に巻き込まれ、収益の悪化を招きます。あの状況になる前に、どれだけ違うビジネスモデルが確立できるかというのが、CyberZのサバイバル能力の本質でもあります。われわれは、2010年10月頃に、フィーチャーフォン広告市場に見切りをつけ始め、翌2011年2月にスマートフォン広告へと舵を切りました。その頃は、まだフィーチャーフォン広告市場は伸びており、専業のモバイル広告代理店が儲かっていた時期です。当時お取引をしていたクライアントとのお付き合いは、すべてなくなりました。当時のクライアントにはご迷惑をおかけしましたが、あえて自ら退路をたったのです。中途半端に少しずつ事業転換するのではなく、いっきにやる必要がありました。力学的に、会社は売上が大きい領域に進んでしまうからです。スマートフォン上に広告枠が全くない状況からスタートし、われわれは一から市場を作ることに集中してきました。

 

-スマートフォン広告市場の現状について、フィーチャーフォンのときに感じられたような空気を感じられることはないでしょうか?

今はそのようなことはありません。ですが、スマートフォン広告では、フィーチャーフォンの時のような純広告がほとんどなくなっています。現状値引きは起こっていませんが、先々スマートフォン広告市場は自動化が進み、値引き競争が進んでいるリスティング広告市場と同じような方向に向かっています。恐らく2、3年以内には値引き競争が起こる状況となり、フィーチャーフォン広告市場と似てくるのではないかとみています。広告会社のサービスは進化しますが、市場のパイが広がらない。そうするとわれわれのランニングコストが上がっても、売上が上がらず単純に利益の幅が圧縮されるようになります。そうなる前に、何か違うものを確立する必要があります。

 

-貴社は2011年にいち早くスマートフォン広告にコミットされて、この市場で大きな成功を収めました。今後、そのことが逆にデメリットとなることはないのでしょうか?ゲームアプリとは異なり、例えばEコマースのクライアントが求めてくるようになるのは、PC、スマホのクロスチャネルでの最適化だと思われます。そのとき、PC領域への対応も求められるのではないかと思いますが、どう対応していきますか。

それは大きな課題です。ですが、スマートフォンとPCとでは、ユーザー行動の特徴が異なっており、両方を一緒に管理することは難しい。現状、大手広告主は、複数の代理店にプロモーション支援を分散化させているのが実態です。マーケティング支援を1社に集約して統合的に管理してもらうという体制と、チャネルごとに別々に管理・依頼をする体制とでは、後者のほうが多いです。したがって、現時点ではわれわれも統合的な管理への対応を進めるつもりはありません。統合管理へのニーズに対応するために、サイバーエージェント本体と組んだパッケージは用意しています。ですが、クライアント側の担当者も、PC、スマートフォンのチャネルごとに担当者を分けていることが現状は多いです。

 

-今後のスマートフォン広告市場のトレンドについて、どのようなシナリオが想定されるでしょうか?

山内 隆裕氏市場全体の規模は、今年は昨年よりも高い成長率で伸びているという感覚はあります。来年も引き続き同様の傾向をたどるでしょう。

 

動画広告は来ると思いますね。通信速度の高速化や、メディアの多様化が進むと思います。スマートフォン向けの動画メディアのPV数も増えてきています。そうなったとき、色々な動画を広告枠として束ねるサービス、動画コンテンツや広告自体を制作したり、広告出稿を統合管理できるクラウドソーシングのようなサービスなども出てくるでしょう。

ゲームアプリ会社の動画広告の出稿も増えつつあります。動画は、広告のみならず、YouTuberによる動画企画の展開なども有効です。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。