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モバイルデータを活用してアドブロックに打ち勝とう

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

アドブロッカーの無力化は現在も続くアドブロック戦争を終わらせることになるのだろうか?Near社のヨーロッパ担当ジェネラルマネージャーのKen Parnham氏(下の写真)は、ユーザーの信頼を取り戻し、ユーザーに即したコンテンツを提供し、アドブロックを不要にするような、(モバイルデータを活用することで)ユーザーの行動に関する有益な洞察を加えることについて述べている。

2015年も終わろうとしているが、アドブロック問題は依然としてマーケッターにとって一番の課題だ。だが、この問題を解決するために業界として何が出来るだろうか?一部のデジタルパブリシャーにとっての解決策は広告をブロックする読者を排除することだ。City A.M.は最近、この戦術を試した最初の英国の新聞社になった。だが、こうした手法は結局お互いにとって長期的には効果的な解決にはならない可能性が高い。

むしろ、業界はユーザーに届ける価値を増やす事に注力しなければならない。そのためにはコンテンツをユーザーニーズに完全にマッチさせ、モバイルデータがそのための正しいインサイトをマーケティング担当者に提供できるようにすることだ。ユーザーの習慣や行動の詳細な全体像を提供することで、モバイルデータを使ってユーザーにカスタマイズされた効果的なコンテンツを最適なタイミングと場所で届けることが出来る。これは、アドブロックと闘う上で重要な武器になる。

Ken-Parnham-hi-res-300x200モバイルデータは、既にオーディエンスの理解を深めることに役立っており、結果的にデジタルマーケティング業界全体の必須のアイテムとなっている。例えば、Near社は最近モバイルの位置情報を分析してマーケティング担当者に英国で特に人気の5大ショッピングエリアにおける有益なユーザーインサイトを提供した。その中には、ユーザーの年齢、性別、好みの買い物日といった情報が含まれる。マーケッターは、この実用的なインサイトを利用してブラックフライデーやサイバーマンデーの週末に先立ってターゲットのオーディエンスの理解を深めることが可能になった。

つまり、問題は、ユーザーは何故広告をブロックするのかということと、マーケッターはどうやってモバイルデータのインテリジェンスを活用してユーザーが関心を持つ広告を作成出来るかということだ。

ブランドがユーザーの信頼を取り戻す力になる

ユーザーは広告に反対ではないようだ。アドブロックユーザーの71%が受入基準に合致する、すなわちホワイトリストに登録された広告の配信には抵抗がない。ユーザーがブロックしたくなるモバイル広告とは、低品質で的外れなために画面上のゴミと見なされる広告だ(64%のユーザーの意見による)。モバイルデータ(特にモバイル位置情報)を効果的に利用すればこの問題を解決出来る。

検索やクロス・スクリーン、位置情報、店舗販売時点情報(POS)といったモバイルでの利用から収集されたデータからユーザーの興味や習慣に関する洞察が得られ、意外な傾向が明らかになることもある。例えば、若者はより大人の顧客向けの店に行きたがる傾向がある。正確なデータをベースにすれば、マーケッターはキャンペーンの効率性や正確性、関連性を向上させることが出来る。つまり適切な個人に最も適切なタイミングでカスタマイズされたコンテンツを提供出来るのだ。

個人に即したコンテンツをリアルタイムで提供する

ペースの速いデジタルの世界でユーザーの注目を集めるにはスピードが欠かせないが、マーケッターはオーディエンスには適切なタイミングで働きかけることが必要だ。適切なタイミングとは、必ずしもオーディエンスがスマートフォンを見た途端ではない。ユーザーの行動を理解することで、モバイル位置情報からマーケティングメッセージを邪魔にならないように表示するベストのタイミングが明らかになる。

ブランドのマーケッターにとり、このインサイトにより、効果のなさそうなタイミングで届けられ無駄になってしまう広告を大幅に削減し、まさしく適切な瞬間に広告を配信することでエンゲージメントを向上させる可能性がある。例えば、モバイル位置情報でユーザーが週の中頃に頻繁に店で買い足していることが分かれば、クリスマス直前で季節商品の売上を最大にしたがっている食品や飲料ブランドにとって非常に有益だ。

ユーザーのオフラインとオンラインの購入プロセスを繋ぐ

最終的に購入を行うデバイスとは限らないかも知れないが、購入に至る過程でモバイルの果たす役割は、チャネル横断的にユーザーの追跡を容易にすることだ。モバイルデータによってユーザーが一旦特定されれば、ユーザーとのやりとりは、オンラインでもオフラインでも追跡可能で、一個人の購入プロセスの全体像を描くことが出来る。

そのため、モバイルデータは店舗でもオンラインのキャンペーンでも重要な要素であることは間違いないが、これはモバイルデータの用途の一つに過ぎない。位置情報によってモバイルデバイスに直接広告を配信することが容易になる一方(例えば、競合店のすぐ近くにいるユーザーにターゲット型メッセージを送るといった)、モバイルの使用状況から導かれるインサイトは効果的なデバイス横断的マーケティング戦略の基盤にもなり得る。

ユーザーの位置や購入の意思、習慣的な行動を把握することで、チャネルやデバイスを超えて個人に即した魅力的なマーケティングが可能になる。モバイル位置情報から通勤客が帰宅途中で日常的にスマートフォンを使い、家に着いたらタブレットに切り替えることが分かれば、ブランドはお互いを補完し最適なタイミングで届く、カスタマイズされたデバイス横断的なメッセージを配信するのに必要な情報が得られる。

「adpocolypse」の話題で騒がしいが、 マーケティング担当者は、ここ1年でアドブロック戦争に勝利する方法をじっくり検討する必要がある。増大するモバイルデータを活用することでブランドは、実用的なユーザーインサイトに基づいてチャネル横断的なキャンペーンをカスタマイズし、ユーザーがブロックしようと思わない魅力的で関連性の高いコンテンツをタイムリーに届けるようにすることが出来る。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。