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米国市場から学ぶ、日本のデータ流通エコシステム形成の今後 [インタビュー]<PR>

デマンドサイドでは、数々のDMPが立ち上がり、その後広告主による導入も増えて少しずつ進展する日本におけるマーケティングデータ流通のエコシステム。しかしながら、サプライサイドであるパブリッシャー側は、まだまだ様子見の状況を脱しきれていないという話も聞かれ、データ流通のエコシステムが本格的に形成されるには、まだ時間が必要であるようにも見える。

日本のデータ流通エコシステムは、現状どのような状況であり、今後どのような軌跡をたどっていくことになるのか。ベンチマークともいえる欧米市場で、エコシステム形成の牽引役を担ってきたオラクルのChris Scoggins氏に聞いた。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

Chris氏は、データビジネスの特化部隊であるOracle Data Cloudのデジタルストラテジー部門のVP及びGMとして、ビジネスユニットの全世界におけるデータビジネスの収益及びパートナー提携についての責任を担う。Chris氏は2015年にオラクルによるDatalogixの買収に伴い入社。DatalogixではSVP及びGMとしてデータビジネスの売上、パートナー提携、製品、オペレーションを担当した。

Datalogixはマーケティング業界のオフラインとオンラインのデータのやり取りをつなげる業務を行うために創立され、2015年までにはAdAge Advertisersのトップ100企業のうちの80社、及びComscore Digital
Mediaのトップ20のうち15社とのビジネスを獲得した。

―日本でのデジタルマーケティング用途でのデータ売買は、普及し始めてきました。米国と比べて日本は、いまどのようなフェーズにありますか?また、今後どのようなプロセスをたどるのでしょうか?

2009年に私たちがDatalogixを開始した際には、デジタル広告のためにデータ売買を担う会社は数えるほどしかいませんでした。2012年から2013年にかけて、米国では十分な機能をもったエコシステムが確立されました。データを中心としたメディアバイイングは単なる流行ではなく、マーケッターがもっともメディア予算を最も効果的に利用する為に欠かせないアイテムとなるのは明らかでした。日本でも同様のことが今日起こっていると感じています。そのような環境において、Oracle Data Cloud(以降ODC)サービスを通じて、日本におけるデータを中心としたメディアバイイングの利用促進に大きな役割を果たすことができるのは大変光栄なことです。また、タイミングも最適です。私は、日本も欧米の市場と同じような道を辿り、デジタルメディアバイイングの50%から70%がプログラマティック、あるいはオーディエンスの決定においてデータを活用する「オーディエンス重視」の形態に変わっていくと感じています。

―オラクルとして現在日本で進めているデータビジネスの直近の状況をお聞かせ下さい

オラクルは、6ヶ月の時間をかけて日本の市場を研究し、様々なパートナーや顧客にデジタルメディアをより効果的にするために何が必要かについて、日本企業に訪問し、直接お話をしてきました。
私たちはこれから「実行モード」に移ります。東京でチームを立ち上げ、日本のデータパートナー様とのビジネスの確立を目指します。私たちは、自身のデータを収益化し、新たな収入モデルを立ち上げようとする多くの企業とお話させていただいております。彼らは最も効果的な実現方法に関して私たちのサポートを希望されており、それに対して私たちは8年もの米国・英国での経験を活用してお応えすることができると考えています。日本で既に私たちにサポートを依頼され、一緒に業務を行っている大規模なグローバルデータバイイング企業もいますし、私たちのデータソリューションに大きな関心を示していただいている日本のDSP、アドネットワーク、エージェンシーやクライアント企業もいます。私たちはこの市場に応えるために、チームとプロダクトの立ち上げに注力しています。それぞれのパーツは全て準備が出来ており、ODCはそれらを組み合わせて最適な形で市場にご提供してまいります。

―データ活用が進むには、エコシステムが必要だと思いますが、そのためにはユーザー、マーケッター、パブリッシャーがこのエコシステムに加わることで、ベネフィットが得られる必要があります。それぞれに対して、どのようなベネフィットがあると言えるでしょうか?また、オラクルは、このエコシステムの中でどのような役割を果たしていくのでしょうか?米国での実績と合わせて教えてください。

全くその通りだと思います。先ほど述べた通り、ODCが真に得意とするのは全てのエコシステムを理解し、データソリューションの利用を通して、如何に全ての人が利点を得られるかという点にあります。私たちは米国で「Daas (Data as a Service)」という言葉を実際に作り出し、固有のエコシステムを産みだしました。それは非常に喜ばしいことでした。データにおけるエコシステムはデータの提供者と購入者の両者にベネフィットがあって初めて機能します。その中で私たちは3つの大切な役割を担っております。最初に、我々はデータに関するマーケットプレースとしての役割を果たし(私たちは米国・英国の両方で最大のデータマーケットプレース企業でもあります)、売り手と買い手を一緒の場所に集めます。これはスケールを持たせるために必要な作業です。次に、私たちは積極的にデータプロバイダーに協力し、彼らのセグメントを確立させデータを最適な形でパッケージ化するサポートを行います。私たちはマーケッターがどのようにデータを利用したいのかについて理解しており、データ提供者(パブリッシャー)が最大の収益を得られる形でオーディエンスのセグメントを形成することができます。最後に、これは逆側の作業になりますが、アドテクやマーケティング企業に対して、ユースケースやキャンペーンの目的に応じて、利用可能な様々なデータをどのように活用するかについてのサポートを行います。私たちは単なるテクノロジーカンパニーではなく、売り手と買い手の両者が価値を最大限に交換できるようなカスタマーサービスを提供していきたいと思います。私たちは自身のことを、このエコシステムの実現者であると考えています。

―日本と米国のプライバシーに関わるルールの違いは、日米のデータ活用プロセスにどのような影響をもたらすと思いますか?

私たちはプライバシーへの配慮に関しては、製品の初期段階から積極的に取り組んでいます。日米でプライバシーに関する具体的なルールは異なりますが、コンセプトは似ています。当社の全てのクッキー及びモバイルIDを利用した行動セグメントは匿名化されています。私たちのセグメントは個人を特定する情報を一切含んでおりません。私たちはユーザーの関心、デモグラフィックス、購入意思、ライフステージなどに応じてセグメントを設計したい一方で、それが誰かなのかを知る必要はありません。重要な内容ではないのです。私たちは、マーケッターが正しいユーザーに正しいタイミングでメッセージを配信することが出来るために、ユーザーがどのような人々であり、どのようなことに興味があるのかについてを把握したいだけなのです。オラクルは、Datalogix社やBlue Kai社が米国で(IAB、NAI、DAAなどを通じて)8年もの間行ったのと同様、日本におけるプライバシー問題のグループや議論に積極的に関与していくつもりです。日本のマーケットで議論を促進させるために、私たちが有する知識や経験を活かしたいと考えております。

―エコシステムの一翼を担う日本のパブリッシャーは、ユーザーデータの開放に、まだ躊躇しているようにも聞きます。オラクルとしては、どのようなメッセージを伝えてパブリッシャーにエコシステムへの参画を促すのでしょうか?

データはパブリッシャー、Eコマース企業、データアグリゲーターにとって非常に貴重なものですので、誰にでも共有したいというものではないでしょう。私たちは、パートナーと長い時間をかけて彼らがこの問題に安心を感じられるように話をします。まず、彼らはどのようにしてこのエコシステムが自身にとっての収益モデルになるのかを知りたがっています。私たちは過去の経験から、現状の収益モデルを保護しながら、これらの企業が新たなビジネスをスタートさせるサポートをしています。世界中の多くのデータパートナーの殆どが大規模な企業で大きく成功を収めており、データビジネスは第二のビジネスとなっています。これは日本も同じだと感じています。第二に、彼らは私たちのポシリー、安全性、ワークフロー、テクノロジーについて関心を持っています。ここでオラクルのサービスと実績が、効果を発揮します。グローバル企業はオラクルへの信頼のもと、日々大切なデータの保管やプロセスを任せています。オラクルは、データ保護・セキュリティにおいて、最高峰に立っているということです。我々ODCとしてもこの実績を継承していきます。
次に、最も重要な点となりますが、日本のオラクルのスタッフです。パブリッシャーは我々の人材を知り、信頼関係を築きたいと感じておられます。私たちオラクルは、スタートアップではないので、良い人材及びカスタマーサービスに投資をすることができます。私はこの点は日本のパブリッシャーにとって非常に重要な点であると感じております。日本のパブリッシャーは、彼らのデータを生かした収益化をサポートしてくれるようなパートナーを探しているからです。

―今後、広告配信に活用されるデータのバリエーションはどの様に増え、どの様な組み合わせが生まれるのでしょうか?またそれにより広告配信はどの様に進化していくのでしょうか?

私たちが米国で直面している本当の変化とは、特定の広告インプレッションに対してより多くのデータの組み合わせを活用する形態です。行動、購買、デモグラフィック、位置情報などのデータを組み合わせることで、マーケッターはよりターゲットに対して質の高い活動を行うことができます。私たちはマーケッターやエージェンシーが限られた数のアトリビュートに依存するのではなく、10以上のデータを活用する姿を目にしています。そして、日本でも同じようなトレンドが起きるでしょう。しかし、まず私たちは大規模な正しいデータアセットを確立しなくてはなりません。これがオラクルが今、注力していることです。

本記事に関するご質問は以下の問い合わせ窓口までお願いいたします。
日本オラクル株式会社
TEL 0120-112-453
MAIL: oraclemarketingcloud_jp@oracle.com

本記事は2016年5月現在のものです。現在の製品とは内容が異なる場合があります。
*OracleとJavaは、Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。
文中の社名、商品名等は各社の商用または登録商標である場合があります。

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。