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広告キャンペーンの真の価値とは?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

もし、あなたがアカウントマネージャーだとして、次のようなキャンペーンレポートを受け取ったとした場合を考えてみよう。95%がビューアブル、70%の完遂率、60%の聴率、5%のクリッックスルー、よってターゲット達成。これは成功したモバイル動画キャンペーン結果の一例である。しかしながら、この施策はマーケティング上のゴールに合致しており、消費者を購入に導いたのであろうか?簡単に言うと、広告キャンペーンの実際の価値はどのようなものだったのだろうか?LoopMe社のファウンダー兼CEOであるStephen Upstone氏はExchangeWireに対して、企業からの要求に応えるために、より優れたキャンペーンの計測方法が必要な点について語ってくれた。

オンライン広告キャンペーンの効果を計測することは、考えているほど簡単なことではありません。デジタル広告は本来トラックしやすいものではありますが、正しい計測を行うには問題を抱えています。広告リサーチ協会は197ものデジタルの指標を特定している一方、IABは30ほどしか特定していないことからも、計測が難解である点がわかるとおもいます。業界としては、常々デジタルキャンペーンの効果計測に、クリックとビューの二つの指標を用いてきました。しかしながら、これらの指標は消費者を店頭に誘導し、購入を促すという点で機能しているのでしょうか?

Nielsenによるレポートには次のように記述されています。「CTRはブランド認知を計測するのに適した測定値とは言えない。CTRはROIやブランド認知、オフラインにおける売上との関連性はない」。これはかなりショッキングな記述ですが、このレポートが3年前にリリースされたものだというのは、更なる驚きかもしれません。それにも関わらず、現在もまだ業界全体として、これらに代わる計測方法が登場していないのです。

ビューやビュースルーレートは、より優れたものと言えるかもしれません。広告が閲覧され、広告を視認した場合には、消費者が企業のメッセージを受け取り、広告に影響を受ける確率は高いと言えます。最近の調査によると55%のユーザーが、モバイル動画の広告を閲覧して商品の購入に至ったと回答しています。

業界が、キャンペーンのKPIとしてクリックやビューから抜け出せない理由は、これらが容易に利用可能で、全てのアドテク業社の間で一貫しており、エージェンシーにとって比較やベンチマークが容易だという点にあります。

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キャンペーンの価値を考えた場合、より優れた方法は存在します。購入意思やブランド認知、広告想起などのオフラインで利用されていた計測方法です。これらの計測値はデジタルキャンペーンのパフォーマンスに関して、より正確な数値を提供し、キャンペーンによるオフライン売上についてのインパクトを測ることが可能です。On Device社のリサーチによると、購入意思が2%上昇すると、来客は1%上昇すると言われています。企業の目的が売上を向上させることにある場合には、購入意思はキャンペーンのパフォーマンスを最適化し、計測するうえでキーとなる計測方法となります。

Coca ColaやNikeのような大ブランドから、ローカルのコーヒーチェーンに至るまで、全ての企業が消費者の購入導線を広げたいと考えています。購入ファネルは異なり、企業によっては購入に至るそれぞれのステージにかかる時間は異なるかもしれません。例えば、BMWのようなラグジュアリーブランドは、ユーザーが認知・検討の段階から購入に至るまで10年もの時間をかけるかもしれませんし、Niveaのスキンケアの場合はよりサイクルが短いでしょう。

もしブランド全体のマーケティングゴールが、商品の認知を向上させ、消費者の購入意思を高め、ブランドロイヤリティを高めることにあるならば、それらはデジタルキャンペーンが果たせる役割そのものとなります。

プログラマティックやAIの進化によって、これらのブランド計測によって、リアルタイムでキャンペーンを最適化することが可能になっています。広告が、影響を与えやすいユーザーや購入に至りやすいユーザーを対象に、より配信を行うことができます。これは、キャンペーンにおいて広告を閲覧したユーザーを調査し、結果を比較することで達成することができます。AIのアルゴリズムはこのデータをリアルタイムで生成し、結果から自動学習を行い、例えば、購入意思に変化が見られたような望むべき結果をもたらしてくれる可能性の最も高いユーザーへのターゲット化を行います。広告キャンペーンの本当の価値を知るだけでなく、キャンペーン実施を行いながらキャンペーンの価値を高め、より高いROIを実施します。

デジタル産業における私たちのゴールは、企業に対して標準的な計測方法の利用を強いるのではなく、企業の目的にあわせて配信方法を変化させ、キャンペーンのベンチマークを実施することです。私たちのサービスに柔軟性を持たせることで、和たちたちはクライアント側のマーケターにとって、より優れたブランド価値を届け、優れた結果を提供することが可能です。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。