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プログラマティック市場は、現在から将来に目を向けるべき

 

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

現在のリアルタイムビディングは、インプレッション取引のための取引市場であり、より予想的で上質な取引を行うためのウォームアップに過ぎない、とSwitch Concepts社の共同創業者、Tom Barnett氏は語ってくれた。

あなたが仮に仕事を転職し、ファーストフードチェーンの卵のチーフバイヤーとなり、1日数億の人に朝食を提供するために、1年に10億の卵を購入しなくてはならないケースを想像してみてください。

仮に、あなたが世界で最も大きな卵の供給業者と付き合いがあるとしましょう。そこで、業者はあなたに製品を一つずつ紹介しようとしています。

「これについてはどう思いますか?それではこれは?」

あなたは非常に退屈に感じるでしょう。実際に、卵を一つ一つ目で確認して選ぼうとすると32年間かかってしまいます。

賢いあなたは、そのような方法を選ばなくても良いことに気づきます。いくつかの卵業社に卵をいくつか紹介してもらい、良いと思うものを選び試食して次のように伝えます。「もう大丈夫です。これらの卵を購入しましょう。もし他の卵も同様で、腐ってなどいないようであれば、10億個分もらいます」。

仕事は完了です。

この購入プロセスは先物買い入れと言われるもので、株式市場のコモディティ製品などで、20世紀にシカゴ・マーカンタイル取引所で紹介され次第、広く利用されている方法です。

これがデジタル広告エコシステムとどのような関係があるのでしょうか?株式市場と同様に、また卵市場と同様に、私たちがいる世界もコモディティなのです。しかしながら私たちがいる世界はスポット的な取引市場であり、先物的な取引ではありません。

リアルタイムビディング(RTB)はインプレッションというコモディエティの取引市場です。取引をしているのは、画像や動画を人間の目が視覚する時間についてです。広告のビッグバンは自動化と効率化によって成し遂げられました。これによって、取引の普及が高まり発展が進みました。しかしながら、広告主と個人の間の自動化コミュニケーションは、このレベルでは止まりません。進化は進み、バイヤーは未来に起こることについての思索ができるようになりたいと感じるでしょう。現在だけでなく、未来を理解することが不可欠になってきます。

先物取引を行うにはコモディティに関する標準化と格付け、末端契約、比較可能なデータ、市場の透明性、売り手と買い手の間で取引を行うための完全なる情報が必要となります。一定の品質で市場を動かすにはアクティブな参加者が必要で、価格流動性、不足事項、確度、リスクおよびオポチュニティコストに関する正しい理解が必要です。

広告に関する全てが、賭博的な要素を持っています。全てのキャンペーンが、投資家の面からは投資戦略であり、バイヤーや広告主からはメッセージを市場に伝え、市場に変化を与える機会です。消費者行動に影響を与えるための努力といっても良いかと思います。投資によって、消費者からの結果が戻ってくるのです。

パブリッシャーの側から言うと、私たちは、コモディティの製造者としての生産ラインと考えています。彼らのビジネスは広告主がお金を投じて将来に影響を与えるための機会の創出と言えます。

近い将来、インプレッションを元にした本当の先物取引ができるようになるでしょう。この将来的な変化を考えると、現在のRTB市場はまだウォームアップの段階とも言え、将来のチャンスが全ての人に平等にあります。現在、将来に備えて準備を進めている人々が成功を収め、そうでない人が取り残されていくのではないでしょうか。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。