小学館が「コトバDMP」を開発―メディア自らデータ・ビジネスに取り組む時代の幕開け
小学館は6月9日、本社にて、同社が推進するブランドビジネスについての説明会を開催した。会場には数百名規模のマーケッターが集った。
「CanCam」や「Domani」といった人気雑誌を有する同社は、これら女性を対象とした紙メディアを既にすべてブランド室化。紙媒体とウェブ媒体を統合した上で、CanCam独自の世界観を表現した「ナイトプール」企画などのイベントを実施したり、公式オンラインストアの「editstore」で雑誌と連動した通販事業を展開するなど、ブランド事業を多角的に行なう体制が整った。
また大規模な組織変更を経て、従来の編集局ごとの運営体制を超えた、全社一体となってのデジタルメディア連携が可能になったと説明。そうした取り組みの一つとして、言語解析技術を活用した独自のデータマーケティング基盤「コトバDMP」を開発したと発表した。
【「コトバDMP」の概要】
小学館デジタルメディア室の山野明登氏によると、コトバDMPは、「美的.com」「NEWSポストセブン」などを始めとする、月間2.2億PV/5000万UUの多様なメディア・コンテンツに接触する読者・ユーザーの興味や関心を記事中の「コトバ」レベルで解析し、広告主のマーケティング活動を支援するツール。
①小学館WEBメディアのコンテンツに含まれる6000以上の特徴的なキーワード情報を分析する「Rtoaster(株式会社ブレインパッド提供)」、②約4億のオーディエンスデータに紐づく5000超のデモグラフィック情報などを保有する「IntimateMerger DMP(株式会社インティメート・マージャー提供)」、③小学館メディアのアクセスログなどを集約する統合基盤である「TREASURE DMP(トレジャーデータ株式会社提供)」で構成されている。
この機能を活用することにより、「ターゲット分析に基づき、もっとも親和性の高いメディアにてコンテンツを企画・制作/掲載」「小学館メディア全体に存在するターゲットユーザーをコンテンツへ誘導」「ネイティブアドネットワークを活用し、小学館メディア外のターゲットへコンテンツを配信」などの作業がより効率的に行なえるようになったという。
本ツールのテストマーケティングに参加した、カネボウ化粧品のメディア企画グループでマネージャーを務める加藤義久氏は、「ウェブ施策においてPV数など、本来はKPIに置くべき指標を施策の目標に置いてしまうと、迷走することがある」と指摘。「ターゲットとなり得るお客様が何を求めているかの情報を合わせて得ることが必要」であるとし、コトバDMPを使えば、そうした情報を「より精度を高くした状態で得ることができる」と評価している。
また小学館デジタル事業局デジタルメディア室の青木岳氏は、「ネット広告においては『枠から人へ』と言われて久しいにも関わらず、そうした動きに対応できていなかった」「ウェブ上にたくさんの読者を集めているにも関わらず、マネタイズができていなかった」といった過去の反省から、コトバDMPの開発に踏み切ったと説明。
同社が蓄積してきた出版社としての知見と客観的なデータを掛け合わせることで、新たなソリューションが提供できるとの見通しを語った。また将来的には、コトバDMPを活用した広告の外部配信を行なうための運用体制を自社内に構築することも検討しているという。
DMPMarketerNEWSPublisherプラットフォーム媒体社
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。