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ブロックチェーンでプログラマティック広告の透明性の課題対処が出来る理由とは?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

現在のマーケットでは、安全に取引する能力や、投資先を完全にコントロールすることが、成功のために不可欠と考えられている。しかし、費用の透明性が欠如していることについての懸念は、グローバルなデジタル広告業界を長く悩ませ、広告主やパブリッシャーの取引経験にも大きな影響を与え続けている。 ExchangeWireはEnvisionXのCEO兼共同創業者であるZheng Zhang氏に、透明性、ビューアビリティ、アドフラウドなどの対応に関してブロックチェーンがどのように問題を解決できるのかについて聞いた。

近年、広告プロセスのデジタル化においては、多くのの新規参入者や、新たなテクノロジー・ソリューションを迎え入れている一方で、デジタル広告のエコシステムは買手と売手にとって厄介なものになっています。 その結果、長年にわたる透明性の問題が必然的に拡大しています。

プログラマティック広告における透明性について

過去数年間のプログラマティック広告テクノロジーの飛躍的な成長は、取引プロセスの広範な自動化の普及により、より多くの事業者が市場に参入したことで問題が深刻化し、不正行為の機会が増えるようになりました。プログラム広告の現状に関する最近の調査では、調査対象の広告主の79%がプログラマティック環境における透明性に懸念を示しており、1/3がサードパーティのビューアビリティの欠如が最大の懸念の一つであると回答しています。

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Zheng Zhang氏、EnvisionX社CEO、Co-Founder

これらの懸念が高まる中、業界には膨大な数のベンダーや仲介業者界が存在します。プログラマティック広告全体に存在する事業者の数が膨大なため、ブランド企業がデジタル広告キャンペーンを実行する際に料金の透明性が欠如していたり、マークアップなどが発生する危険性が非常に高く、彼らの予算がどのように利用されたのかを正確に把握するのが難しくなっています。

新規ユーザーと既存のユーザーの両方にとって、この自動プロセスによる環境は非常に大きな成長機会があるにも関わらず、広告主とパブリッシャーの両方にとって潜在的な収益損失を引き起こしています。 現在、アドフラウドの世界規模でのコストは、今後10年間で500億ドルに増加すると考えられています。 したがって、業界全体が新しいテクノロジーを求めて、グローバルなアドフラウドに対処するソリューションを確立することが重要で、企業側が広告費やプログラマティックにおけるポリシーを完全にコントロールし、予算を浪費せず広告を適切な場所で適切な消費者に見てもらうための変化が求められています。

ブロックチェーン技術を使った透明性に関する問題の解決

これらの固有の透明性の問題に対処するために、多くのテクノロジーがマーケッターによって試されています。 しかし、最近アドテクの分野に遅ればせながら導入されるようになった画期的なソリューションの1つが、ブロックチェーン技術です。 このテクノロジーは、世界中の企業に高い保護機能を備えていると認識され、多くの業界にとっての基礎的なセキュリティ資産となりつつあります。特に、広告主やパブリッシャーにとって、ブロックチェーンは、自動化されたプログラム広告によってもたらされる問題に対する明確な解決策として機能し、透明性の向上とアドフラウドの削減を実現できるのです。

ブロックチェーンには、プログラマティック市場で発生する全てのやりとりに関する変更不可能な記録を利用して永続的に監査可能なデータを公的に保持することで、マーケッターに非常に安全な取引ネットワークを提供することができます。 これにより、企業は自動的に実行される全てのトランザクションをより正確に追跡し、予算を有効に活用できるようになります。 ブロックチェーンの全ての取引記録によって、広告の購買サプライチェーン内において、多数の仲介業者からの隠れた費用や手数料を削減したり根絶したりすることが可能で、公平な価格管理を実施することができます。

ブロックチェーンは、広告支出の管理以上に透明性を高めることができる潜在性があり、現在プログラマティックの環境に蔓延している他の様々な問題を根絶することもできます。 たとえば、デジタル広告のビューアビリティを向上させ、広告キャンペーンの配信先やリーチ先を正確に記録できるようにすることもできます。

広告取引の処理を合理化するため、プログラマティック広告は、ターゲットの人口統計およびオンライン行動の基準に基づいてターゲティングを実施し配信しています。 これは、マーケッターが現在、広告の掲載場所についての知識をほとんど持っておらず、結果として不必要な広告配信を行ってしまっていることを示唆します。しかしながら、ブロックチェーンによって全てのデータとインサイトをパブリックでかつ不可逆的なネットワーク内に保持することで、広告主はサプライチェーン全体の中で、どこで広告がインプレッションを獲得しているのかを理解し、誰がどのチャネルで広告を閲覧しているかを把握することができます。

広告主は、セキュリティを強化しつつ、アドフラウドや透明性に対する懸念を減らすことができるブロックチェーンを使用することで、オーディエンスターゲティング戦略の改善に専念でき、必要なオーディエンスのために魅力的で創造的な広告を作成するための時間をより使うことが可能になります。

これはまた、プログラマティックを利用するパブリッシャーにとっても大きな利点をもたらします。バイヤーの取引をより正確に把握し、どの広告がどのチャネルを通じて配信されているかについてより理解できるようになります。 メディア取引に対する透明性の高さは、プログラマティックによる取引を行う際に、ブランド企業がより選択的なアプローチを取れることにつながり、両当事者の効率を高める働きをします。

ブロックチェーンによるデジタル広告の未来

現在の競争が激化し予算が縮小している業界において、広告主は、予算を最大限に活用し、広告キャンペーンの質と妥当性に高い確信を持って広告活動を実施する必要があります。

ブロックチェーンを使用することで、両事業者の距離を縮めることができ、買手と売手の両方が、投資先と取引についての詳細を把握することができます。 したがって、このテクノロジーは、デジタル広告において、普遍的な透明性を確保し、業界の将来的な収益性を確保するために必要なセキュリティレベルを保つための鍵となる可能性があります。

完全に自動化される将来を見据えた時に、ブロックチェーンは、プログラマティックにおける支出の透明性を高く保証するだけでなく、 失われた信頼の回復にも寄与します。したがって、これをより広範囲に実施することは、本質的な問題に取り組んでいる産業全体にとって、大きな変革をもたらす可能性があります。 近い将来にこのテクノロジーの採用が急速に進む可能性があります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。