セプテーニが語る動画マーケティングの最前線-第四回:本質を見失わず新しいことに挑戦-オリックス銀行の動画広告に対する向き合い方- [インタビュー]

動画広告市場の成長を前に、広告主とエージェンシーはそれぞれどのような姿勢で向き合っていくべきなのか。オンラインを軸にビジネスを展開するオリックス銀行のカードローン企画部 営業開発チーム シニアアソシエイト 高畑 美恵氏と、デジタルエージェンシー大手のSepteni Japanアカウント戦略本部 戦略企画部 チーフプロデューサー 若月 裕子氏に、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

潜在顧客獲得に向け戦い方を変える

― 動画広告の市場が急成長しています。市場の変化についてどのように感じていますか?

高畑氏 動画広告の市場は今後も右肩上がりで成長すると予測されており、各メディアとも動画フォーマットへの対応を進めています。そこで当社は、動画広告を使ったマーケティング手法をいち早く模索をしてまいりました。動画は静止画に比べフォーマット上でより多くの情報量をユーザーに伝えることが可能であり、商品やサービスだけでなく、世界観もわかりやすく伝えることが出来ます。動画を通じて、お客様と新たなコミュニケーションを取っていきたいと思っています。

若月氏 動画広告市場は、2023年には現在の約2倍の規模に成長するといわれています。インフィード広告に対応したメディアが誕生してから、動画広告の普及が加速しました。オンライン動画をスマホで視聴するユーザーが増加したことが大きな要因の一つです。ダイレクトレスポンスを目的とするデジタル広告の出稿が多い広告主のお客様に対して、私たちデジタルエージェンシーは、購入やサービス申込みなどのコンバージョンをKPIにし、広告効果の最大化を目指しています。

このようなお客様は、動画広告もまたダイレクトレスポンス目的の延長線上で活用しているケースが主流ですが、今後は潜在顧客を含めた、より広いユーザー層へブランドメッセージを伝えていくための動画広告の活用が増えていくと思われます。

セプテーニでは、メディアやクリエイティブに関して動画広告の専門組織を作り、お客様(広告主)が新しい動画広告の活用を進めていけるよう、支援することに注力しています。

― オリックス銀行では、デジタル広告のこれまでの施策においてどのような課題がありましたか?

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高畑氏 大きく二つあります。一つ目はメディアの課題です。金融業界に限らず、主要なメディアに出稿が集中するため、獲得単価が高騰するという状況がみられます。二つ目はクリエイティブ表現に関する課題です。静止画の広告クリエイティブでは、当社のサービスについてお客様に伝えられる内容がある程度限られていましたが、今までとは違う方法で、私たちが伝えたいメッセージを、どのようにしたらもっと伝えていけるのかを考えていました。

― オリックス銀行さんがおっしゃったような課題は、広告主全般に共通して言えることなのでしょうか?

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若月氏 はい。最近では、特にダイレクトレスポンス型マーケティングを展開する企業から、同様の相談をいただくケースが増えています。
顕在層へのアプローチはしっかりと実施できているものの、先ほど高畑さんがおっしゃったような課題により、限られたメディアの内でユーザーの奪い合いが起こってしまい、従来のような効果を上げ求め続けることは厳しい状況になってきています。そのため、顕在層のユーザーをしっかりと取り込んでいる広告主のお客様においては、従来と戦い方を変え、新たなユーザー層へアプローチを拡げていくことも重要になってくると考えています。これは、オリックス銀行さんのような金融業に限らず、全般的にどの業種においても言えることだと思います。

― 動画広告の展開を始めるに当たり気を付けるべきことやクリエイティブをつくる上での留意点はありますか

高畑氏 広告主の立場からすると、15秒や30秒の動画広告の尺の中に、企業のメッセージを詰め込みたくなりますが、この点は気を付けるべきポイントだと思っています。視聴するユーザーの立場で考えると、一方的に企業側のメッセージを盛り込むだけではなく、最後まで見たいと思ってもらえるようなクリエイティブを追求する必要があります。また静止画のクリエイティブと比較すると、動画は表現方法が多彩ですので、より当社ならではのオリジナリティーを出していきたいですね。さらに、動画は拡散性が高いため、「コンテンツを作る」という視点をより意識すべきであると思っています。

若月氏 顕在化に至っていない潜在的なユーザーに向けた動画広告コミュニケーションは、顕在層へのコミュニケーション設計とは異なるため、ユーザーのターゲット分解とインサイトの分析・リサーチをしっかりと行います。これは施策の成否を分ける重要なポイントになります。

また、コミュニケーション設計において、ニーズが顕在化しているユーザーへのアプローチの場合、商品やサービスの機能面のみを訴求するような「点」のコミュニケーションでも獲得が見込めますが、ニーズが顕在化していないユーザーに対しては、その一つ一つの接触をつながりにかえ、コミュニケーションを「面」に変える設計が重要です。その上でクリエイティブについては、商品やサービスの背景から、ストーリーとして伝える事が重要です。

高畑氏 私たちも動画と静止画の役割を分けて活用しています。静止画の場合には、ローンの金利やATM手数料など、いわゆるサービスの機能面を訴求しているのに対して、動画の場合には、商品の活用シーンをお客様のライフスタイルと結びつけてイメージしていただけるようなクリエイティブにしています。

広告主が動画に求めるのは中長期的なコンバージョン獲得への道筋

― 動画広告の指標設計において重要なポイントについてお聞かせください。

若月氏 第一回目のコラムで申し上げた通り、単発的な動画広告の配信で結果を見るだけでなく、中長期的にコンバージョンに繋げていくための再現性のある指標設計をすることが大切です。
実施した施策において、クリエイティブ単位など細かい粒度で、コンバージョンを含めたデジタル上の行動変化を可視化し、何が良かったか悪かったかを明確にした上で、次につながるような施策の再現性を重視した設計を心掛けています。
動画によるブランディング効果はもちろん重要ですが、中長期的にしっかりとコンバージョンに結び付くよう意識した指標を設計することと、そこに至るまでの行動変化を可視化させることがとても重要だと考えています。

目的の本質を見失わない

― 今後、広告主やエージェンシーはどのように動画広告に向き合っていくべきですか?

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高畑氏 動画広告を単発の施策で終わらないようにする必要があります。最終的にどのような効果に結び付いているのかをしっかりと検証して、より良いものを続けていきたいです。あとは、これからも新しい動画広告フォーマットが次々と登場してくると思います。動画は広告の手法として今後さらに欠かせないものになっていきますので、新しい試みには積極的に挑戦していきたいです。

若月氏 二つのポイントがあります。一つ目は常に広告主が求めている目的の本質を見失わないことが重要であるということです。動画広告は本当に活用の幅が広く、本質的な目的を見失いがちです。もともとどのような課題があったから、動画広告をやるのかということを決してぶらさずに、私たちも向き合っていく必要があります。「市場が伸びているから、動画広告をやりましょう」ということだけではなく「課題解決に向けて動画広告を一緒にやっていきましょう!」という姿勢が大事です。二つ目は、目的の本質を踏まえ、その目的に沿った効果検証やファクトをしっかりと可視化して次につなげることが必要です。これにより動画広告の活用の幅が広がってくると思っています。

― これまで動画広告に取り組んでこられたことを踏まえて、これから動画広告に取り組もうとされている広告主の方に、伝えたいことはありますか?

高畑氏 動画広告は、静止画と同じような指標、例えば申し込み件数などの単体のKPIで効果をみると、厳しい結果になることが多いと思います。実施の際には、「この動画はどのような理由で、何のためにやるのか(何を成果とするのか)」ということを事前に明確にし、予め上司や関係各所に宣言しておくこと。そして、場合によっては静止画とは別軸の効果指標も設計しておくことがとても重要だと考えています。

動画市場はまだ成長過程であり、何が正解であるか明確ではありませんが、一方で多くの可能性を秘めています。商品の使い方を伝えることも出来れば、企業のイメージを伝えることも出来ます。目的により、作るべきコンテンツが変わりますし、クリエイティブを考えることはとても楽しいことだと感じています。今後も色々とチャレンジしていきたいと思っています。

― 今後何か動画を使って取り組んでいかれることはありますか?

高畑氏 3月下旬から新しい動画を配信します。これまで当社が動画広告で取り組んできた自社サービスの活用シーンをイメージしていただく要素に加え、コンテンツにこだわった面白い仕掛けも盛り込みました。当社のYouTubeチャンネルでも公開しています。また、今回はWEBだけでなく、マス広告(交通広告)と連動させ展開していきます。

このように、今後も多面的なコミュニケーションを仕掛けていければと考えています。そして見ていただく方に楽しんでいただき、「オリックス銀行ってこんなこともやる会社なのだな」ということも、動画を通じてお伝えできればと思っています。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。