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「CDPは顧客主導」、「導入に際しては壁ばかり」-オプト主催CDPセミナーで明らかになったCDP事情

写真:伴大二郎氏

6月26日、都内にて、デジタルマーケティング事業を展開する株式会社オプト主催の「CDPセミナー」が開催された。

CDPの類似テクノロジーとしてしばしば言及されるDMPが広告の最適化を目的としたCookieなどの匿名情報の分類のために使われる傾向がある一方、CDPは会員IDやメールアドレスなどの個人情報に様々なデータを紐付けることで、出店計画や店頭サービスを含むより広範なマーケティング活動に利用できる点が特徴とされている。CDPを活用することにより、個人にパーソナライズした形で、コミュニケーションやブランドインタラクションを行うことができる。

この違いについて、これまで約40社に対してCDP導入及び活用支援を行ってきた株式会社オプト エグゼクティブスペシャリスト 兼 OMOコンサルティング部 部長の伴大二郎氏は、「CDPは顧客主導である」との一言で表現。加えて、①エンジニアではなく、マーケターによって管理されるシステム、②顧客のデータを継続的に統合管理するデータベース、③様々なチャネルとセッションから顧客情報を収集することができる、ことなどを特徴として挙げた。

またスマートフォンやタブレットの普及によって顧客とのチャネルが急増したが、それぞれのチャネルごとにツールやシステムを導入した結果、「システムないしマーケティングのサイロ化」が発生していることがCDP登場の背景にあると指摘。これらの分断されたデータを統合することで、顧客体験の統一設計及び管理が可能になるという。

写真:堀内氏

約350社へのCDP導入実績を持つトレジャーデータ株式会社マーケティングディレクターの堀内健后氏は主要顧客のCDP活用事例を紹介。アプリやウェブの閲覧ログとPOSデータを統合してチャネルごとに顧客とのコミュニケーションをパーソナル化した大手小売店や、気象情報やWi-Fi接続記録を通じて店内の顧客に対する送信メッセージの最適化を図るファッションビルの例などを伝えた。

写真:伊藤孝氏

主に中小企業向けにCDPの開発・導入を行なう株式会社EVERRISE取締役の伊藤孝氏は失敗例について解説。導入に失敗した企業には、①「まずは顧客データ統合」からスタートしてしまう、②「完璧なデータ統合」にこだわる、③「会員情報のみが顧客データ」だと思っている、といった傾向が見られるという。

写真:吉川大揮氏

CDPを通じた「顧客体験の統一設計及び管理」のあり方について論じたのが、株式会社オプト マーケティングマネジメント部チームマネージャーの吉川大揮氏。具体例として、販売促進担当者とセールス企画担当者が各売上の最大化のため、同一ユーザーに対して各部署からメール通知やアプリのプッシュ通知が配信されてしまう状況を取り上げた。

このような状況に嫌気が差すユーザーもいれば、すべての通知にくまなく目を通す者もいる。そこでCDPを通じて各情報に対するユーザーの感度を分析した上で、配信量の自動制御を行う仕組みを構築及び運営することが可能と伝えた。

最後には、株式会社オプトOMOプロデュース部 部長の川崎大氏による進行で、伴氏、堀内氏、伊藤氏の3者を交えたパネルディスカッションを実施。CDP導入に際しての課題などについて意見が交わされた。

登壇者が口を揃えていたのが、多くの企業が導入に向けての検討に数年間、導入効果を評価するまでに少なくとも1年を要しており、CDP活用に際しては長期的な計画が求められるということ。伊藤氏は、商品やサービスの売上増への貢献を短期的に見込むことは難しいので、多くの企業ではまず広告配信の最適化を通じた経費削減を導入理由として予算申請が行われるが、提携する広告会社がこの動きを警戒する場合があると指摘した。

また「CDPを導入するに当たっては壁ばかり」と吐露した堀内氏は、導入企業には旗振り役、根回し役、予算承認者、後工程での実践者など、4種類の人間がすべて必要になると主張。横断的な機能を持つ部署による推進や、単一部署での先行事例の構築などが鍵になるとの考えを示した。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。