「アドバンスドTV」と放送広告の未来とは-CCIが海外の先進事例を紹介

写真1:安達氏

株式会社CARTA HOLDINGSの傘下でメディアレップ事業を営む株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)は、9月19日、都内にて、海外放送局を例とした放送広告の最新動向を発表するイベントを開催した。

放送事業担当取締役の安達紳之介氏は、冒頭の挨拶で、今年春に「ブロードキャスティング・ディビジョン」を創設した旨を改めて報告。スマートフォン普及と通信環境の多様化により放送局のロングフォームのコンテンツが改めて注目されていることを受けて、放送事業におけるデジタル広告配信システム構築や関連サービス提供への注力を高めていくとの決意を述べた。

ニューヨークを拠点に米メディアに関連した研究やコンサルティングを行うMedia Japan Networks代表の渡邉卓哉氏は、「アドバンスドTV」と呼ばれるテレビ放送及び広告配信の新形態を解説した。米国のテレビ広告市場は約700億ドル(約7兆7000億円)で、近年はほぼ横ばいで推移。2016年から17年にかけてインターネット広告費に追い抜かれ、現在はOTTと呼ばれるインターネット回線を通じたデジタルビデオの視聴が伸びている。またデジタル広告は、Google、Facebook、Amazonが市場全体の7割を占有。これらの大手プラットフォームへの対応または対抗措置として、「アドバンスドTV」という概念が生まれたという。

写真2:渡邉氏

渡邉氏によると、アドバンスドTVは4種類に大別できる。まずは、視聴者に応じて広告の差し替えを柔軟に行えるか否か。行えないものが「リニア」であり、行えるものを「デジタル」と区別する。次に、アトリビューション分析などのデータ活用か、もしくは広告取引を始めとする自動化のいずれを目的としているかによっても形態は異なる。

ただし、ケーブルテレビ会社が供給するセットトップボックスなどを通じて、リニアでありながらも広告を世帯ごとに差し替えることが可能という意味で、上記4種類のいずれにも当てはまらない「アドレサブルTV」という形態も台頭。現時点では9割以上の広告取引は従来の視聴率ないし延べ視聴率(GRP)に基づいているが、将来的にはターゲティングの精度がより重要視される可能性があるとの展望を伝えた。さらにこれらの仕組みが整備できれば、DTCと呼ばれるデジタル広告運用に秀でた広告主層が、新たにテレビ広告市場に流入することが期待できるという。

また米国における多くの大手放送局やコンテンツ企業が定額制動画配信(SVOD)や広告付き動画配信(AVOD)事業に既に乗り出していることにも言及。テレビ放送広告市場で大きな変革が起きているとの現状を伝えた。

写真3:國分寿隆氏

CCIブロードキャスティング・ディビジョンのグループ・マネージャーを務める國分寿隆氏は、テレビの営業放送システムとウェブの広告配信システムを連携させる研究事業の概要を報告した。

同社では、本編映像のデータは従来通りスカイツリー塔が発信する地上波を通じて、また広告データに関しては別系統から放送標準となるSCTE-35信号にCM尺や番組IDを付与する計画を検討中。この仕組みが実現すれば、テレビとウェブのシステムをそれぞれ個別に制御する必要がなく、業務負担が軽減し、運用事故の発生率を大幅に低減できると見込んでいる。

また本イベントでは、米大手テレビ局のFOXコーポレーション、NBCユニバーサルなどの米国ネットワーク大手の関係者が登壇。講演とパネルディスカッションを通じて、各局における取り組みを細部に至るまで聴講者と共有した。

現在、CCIのブロードキャスティング・ディビジョンは国内の数多くの放送局や事業者に対して、ウェブサイト運営、広告配信、データ活用などの業務支援サービスを提供、また放送局、広告会社等と広告商品開発やセールスを実施。テレビ広告市場の変革期に合わせて、事業規模を一層拡大していく計画を立てている。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。