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テレビCMを超えるデジタル媒体が誕生するか―LINEがトークリスト画面への新たな動画広告配信を開始

今や重要な生活基盤の一つとなったLINEが、2019年よりついにトークリスト画面への新たな広告配信を開始。そして2020年になり、この枠への動画広告配信を始めた。LINEの広告は、ついにテレビCMを超える存在となり得るのか。この新しい試みに対する展望や課題について、担当者に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 長野雅俊)

 

トークリスト画面への広告配信開始までの経緯

 

―自己紹介をお願いします。

 

運用型広告であるLINE広告(旧LINE Ads Platform)及びLINEのトークリスト最上部に位置するSmart Channel枠の広告企画担当を務める種市創と申します。また今年になって正式にリリースしたSmart Channelにおける動画形式の純広告商品であるTalk Head Viewも合わせて担当しています。

 

―「トークリスト」画面は、そもそもつい最近まで広告掲載そのものを一切受け付けていませんでした。広告枠として開放するに至った経緯についてお聞かせください。

 

仰る通り、これまでLINE広告の配信面はタイムラインやニュースなどトークルーム以外の枠に限定していました。LINE広告がトークリスト最上部のSmart Channel面に対して広告の配信を開始したのは2018年末からになります。初めは対象となるユーザーを一部に限定し、細かくユーザーリアクションを見ながら1年間をかけて徐々に対象ユーザーを増やしていきました。

 

トークリストはユーザーが最もアクティブに利用する面です。新たなコンテンツや広告を表示することで、ユーザーに負担をかけるということは防ぎたいとの思いがありました。ただLINE広告の機械学習や自動最適化が進んだことや、コンテンツなどの表示に徐々にユーザーが慣れてきたこともあり、トークリストへの動画広告配信に対しても実施の目途がつきました。現在はこの画面にLINEの人気コンテンツであるニュース、スタンプ、マンガなどと合わせて広告を配信していますが、いずれもユーザーの反応に応じて、表示内容や回数を細かく調整しています。

 

―そして今年になって、この枠に配信される新たな動画広告商品「Talk Head View」を正式にリリースしました。

 

トークリスト画面の上部に動画広告を配信するTalk Head Viewは、24時間で約5500万人にリーチできる広告商品です。現時点では一日一社に限定して掲載を受けつける純広告商品となります。

 

―今や多くのユーザーが動画広告の存在に慣れ親しんでいるのではないかと想像します。それでも慎重に段階を踏まれた理由はなんでしょうか。

 

当社には8300万人以上という大規模のユーザーにご利用いただいている責任があります。他社やデジタル広告業界全体の状況がどうであるかに関わらず、最小限ないし基本的な段階から順々にそしてデータドリブンに検証作業を進めていく必要があると考えています。

 

テレビCMを超えることができるのか

 

―Talk Head Viewで実施できるターゲティングは、性別のみの区分けとなっています。今後は年齢や家族構成などより細かくターゲティングができるようになるのですか。

 

Talk Head Viewの最大の価値は、8300万人以上存在するLINEユーザーが最も頻繁かつ能動的に利用するトークリスト画面に広告配信できる点にあると考えています。性別、年齢、在住地などを細かく区切ってターゲティングし、「東京都在住の30代女性に対して300万インプレッション」というご希望もあり得ますが、それはLINE以外のメディアでも実現できると思います。当社としては、LINEのトークリストというメディアでしか実現し得ないサービスを提供したいと思い、まずは配信セグメントのないオールリーチや垂直立ち上げにおける短期での商品認知の拡大に特化した商品設計にしました。

ただテスト実施していく中で、リーチだけではなく、LINEのトークリストの上部というプレミアムな枠に対して出すことの方に価値を感じていただき少ないリーチでも実施したいというケースや、どうしても企画の都合上、エリアや時間の制限が入るケースも多く、今後はそのような声にもお応えできるよう、ターゲティングについても一部検討していければと思っております。

 

―広いリーチを獲得するための手段という意味で、テレビCMを想起させる商品設計です。テレビCMとの競合は意識していますか。

 

意識していないと言えば嘘になります。動画広告でかつこれだけのボリュームを出すその他の広告媒体となると、やはりテレビCMがまず頭に浮かびます。またTalk Head ViewにはいずれはテレビCMを超えていくだけの伸び代があるとも思います。

 

一方で、少なくとも現状においては、マス広告とデジタル広告にそれぞれ代替できない機能や役割があるというのも事実です。テレビCMとTalk Head Viewを組み合わせることで、どれだけインクリメンタル(純増分)なリーチが増やせるか、または両者に接触したユーザーの態度変容はどうなるかといったことを検証しています。

 

―テレビCMとの最大の違いはどんなところにあると思いますか。

 

Talk Head Viewの主な特徴は、テレビを視聴しなくなっている若年層にリーチできるということ。さらにはテレビのように特定の時間に合わせた枠を通じてではなく、日ごとに各ユーザーにとって最も適した時間に配信できる点などで差別化できると思います。

 

一方で、テレビCMには音声がありますよね。たとえ視聴していなくても、耳から情報が入ってくるというのはやはり大きいと思います。Talk Head Viewにおいてもより伝わる表現を実現するための仕組みを今後考えていく予定です。

 

―広告主からは、デジタル広告と比較して、テレビCMはいつどこでどのように表示されているかが分かりやすく、社内や取引先からの理解を得やすいとの声も聞きます。

 

LINEは皆様に普段お使いいただいているサービスなので、広告がいつどこでどのように表示されるかを容易に思い浮かべることができるのではないでしょうか。

 

ただ、より重要なのは、Talk Head Viewは、あくまでもユーザーとの最初の接点に過ぎないということ。ここで広告に接触した後のユーザー行動を手助けするような新しい仕組みを開発し、そして組み合わせていくことで、Talk Head ViewはテレビCMとは全く異なる価値を持つようになると思います。

 

大切なのは広告接触後のユーザー行動

 

―広告主としてどのような業種・業態を想定していますか。

 

お陰様で、業種を問わず、様々な企業様から引き合いを頂戴しています。Talk Head Viewが一日一枠であることから、例えばバレンタインデーなど特定の日付に引き合いが集中するといった現象も起きています。これまでLINEが提供してきた広告商品の中でも、これほど業種・業態に偏りがなく、ご活用いただいている例はないかと思っています。

 

―どのような目的での広告出稿が多いのでしょうか。

 

リーチに対する単価をご評価いただいた上でのブランディング目的が多いです。また「LINEリサーチ」という調査パネルを通じて、認知、好意度、購買意欲などの調査を合わせてご実施いただくケースが増えています。

 

ただダイレクト・レスポンス目的においても利用価値はあると考えており、実際にその効果検証を行っている広告主様もいます。広いリーチを生かして、新規層や潜在層へのコンバージョン獲得数の引き上げなどで貢献できるはずです。

 

―今後開発される新機能によってTalk Head ViewやLINE広告も大きく変わり得るということですね。

 

友だち以外のユーザーとも交流できる「オープンチャット」が話題を集めたように、LINEは広告商品に限らず、様々な機能を増やし続けています。こうした新機能と組み合わせることで、LINEの新しい使い方が増え、広告媒体としての価値も増大していくはずです。

 

先ほども申し上げた通り、LINEのトークリスト画面への広告配信はあくまでもユーザーとの最初の接点に過ぎない。今後はコンテンツなり広告とLINE内のアクションがより有機的に結びつくような広告フォーマットを開発していきたいと考えています。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。