×

シェアリングサービスが作り上げた新しいDOOHメディア[インタビュー]

2018年4月よりモバイルバッテリーシェアリングChargeSPOTの展開を開始したインフォリッチ。設置台数は2020年9月時点で20,000台を突破し、現在も拡大を続けている。ChargeSPOTではデジタル映像コンテンツも流すことができ、これを媒体化した広告商品の販売も開始した。ChargeSPOTの現在の活用事例と今後の展望について同社サイネージ部ゼネラルマネージャーの滝川佳延氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 柏海)

 

 

フロンティア企業としてシェア90%以上を獲得

 

―インフォリッチの事業およびChargeSPOTのサービス概要をお聞かせください。

滝川氏 モバイルバッテリーのシェアリングサービス、ChargeSPOTが我々の基本事業になります。

モバイルバッテリーのシェアリングサービスは、日本ではまだ普及が進んでいませんが、アジア圏では当たり前のサービスとして普及しており、特に中国ではほとんどの人が利用しています。ChargeSPOTは香港を中心に事業展開がなされていたなか、そのサービスを日本向けに展開していたものとなります。

日本におけるモバイルバッテリーシェアリングサービスのシェアは、ChargeSPOTが90%以上。我々は日本におけるフロンティア企業でもあり、シェアナンバーワンでもある状況です。

―ユーザーはChargeSPOTをどのように利用すれば良いのでしょうか。

滝川氏 ChargeSPOTの利用者はスマートフォンでアプリを起動し、バッテリースタンドに表示されているQRをスキャンすることでバッテリーを借りることができる仕組みとなっております。こちらは自転車など他のシェアリングサービスと同様に、必ずしも同じ場所にバッテリーを戻す必要はなく、別の場所に置かれているChargeSPOTの空きスロットにバッテリーを戻すことも可能です。

現在は駅などの公共交通、全国チェーンのコンビニなど、ユーザーの出入りがしやすい施設を中心に20,000箇所以上に設置をしておりますが、日本国内で展開しているChargeSPOTのサービス仕様は、海外で展開しているChargeSPOTのサービス仕様と同じなため、日本の空港で借りたバッテリーを、香港の空港に設置されているChargeSPOTで返すことも出来ます。

ChargeSPOT

 

全国一斉配信・エリア限定配信に強み

 

―ChargeSPOTではどのような広告サービスを提供しているのでしょうか。

滝川氏 現在主に提供しているのは、バッテリースタンドのデジタルサイネージを利用したDOOHの広告ビジネスとなります。ChargeSPOTで流している映像コンテンツは1ロール6分となっていますが、そのうちの4分はインフォリッチとロケーションオーナーの映像コンテンツをそれぞれ流しており、残りの2分、30秒×4枠を広告枠として販売しています。

全国一斉配信やエリアを絞った広告配信も可能で、ロケーションオーナーや代理店が異なることも多いDOOHにおいて、一括で大規模なDOOH広告配信が出来るというところに我々自身ニーズを感じています。例えば、静岡県内を対象とした国勢調査への協力の呼びかけや、全国を対象に新型コロナウイルス接触確認アプリ、COCOAの告知広報を全国展開した実績もございます。

特に我々のサービスが他のOOH広告と大きく違う点としては、デジタルサイネージに表示されたQRを読み込ませることによりサービスを利用するため、広告をながら見させるのではなく、じっくり見せるということも、ユーザーのアクションのなかで自然にできています。

また、A地点でChargeSPOTを利用し、B地点でChargeSPOTのバッテリーの返却を行った人にだけクーポンを発行するような仕組みも可能です。今後、街歩きや周遊をさせたいニーズが戻り、企業や自治体からの企画提案が増えていけば、より活用の幅も広がってくるのではないかと感じています。

 

ロケーションオーナーには自社広配信と来店集客のメリット

 

―ChargeSPOTを設置しているロケーションオーナーにはどのようなメリットがありますか。

滝川氏 メリットとしては、先ほども触れた「ChargeSPOTで流れている映像コンテンツのうち、2分をロケーションオーナーが利用できる」という点だけでなく、「ChargeSPOTがあることにより、バッテリーのレンタルや返却を目的にユーザーが訪れるようになるため来店集客の促進効果が期待できる」というのも大きなメリットとなります。

我々が出入りのしやすい施設を中心に設置を進めているのも、そのような理由があるからです。

―サービスの利用にはアプリのインストールが必要となりますが、ユーザーデータの取得等によるスマートフォン上での広告配信は行っていますか。

滝川氏 個人情報は電話番号以外一切取得していないので、ユーザーデータを元にした広告配信はしておりません。利用ユーザーの性・年代といった属性についても、アンケートで把握をしている状況です。今後はアプリ利用者や位置情報、移動情報などに基づいた広告配信や他メディア、技術などと連携したメニューなどを開発していく検討を、法令遵守のうえ適切に進めていきたいと考えています。

また、今は表示回数および表示単価でのみの広告販売となっていますので、そこも課題であると認識しております。今後はクライアント様、パートナー企業様などのニーズを吸い上げながら、様々なメニューを提案できればと考えております。

 

アフターコロナに向けた新たな取り組み

 

―今、DOOH広告において注目されている動向はありますか。

滝川氏 DOOH及びOOH広告は非常に厳しい局面に立たされていると感じております。元々、我々のサービスはインバウンドにも強く、従来のDOOHメディアとは異なり街をスタンプラリーのように周遊させることもできるという非常に強力な訴求要素はあります。しかし今のWithコロナ状況では、もう少し感染リスクが落ち着いてから取り組みをしたいというお声をクライアント様やパートナー様等からもいただきます。

また、我々もChargeSPOTを展開していてDOOH広告の厳しさを感じている一方で、新しい企画提案を持っていただけるようなクライアント様やパートナー様も多くいらっしゃいます。そこも踏まえて考えていくと、DOOH広告も単純に映像を表示するだけでは生き残れなくなっていくのではないかと感じています。

―今後のChargeSPOTの展開についてお聞かせください。

滝川氏 ChargeSPOTの設置数は20,000台を超えましたが、2022年には100,000台の設置完了を予定しております。このネットワーク化された100,000台の広告媒体が全国に設置されたときには、非常にインパクトのあるオンリーワンメディアになります。

また、100,000台の設置に向けて、ChargeSPOTを利用するためにアプリをインストールするユーザーも同時に拡大させています。アプリとサイネージを連動させた広告配信の展開は現在も可能ですが、近い将来ChargeSPOTの利用ユーザーを対象にするだけで一つのマーケティングが完結できるような新しいメディアとなることも可能だと思っています。

現時点でも様々な広告やイベント企画の提案をいただきますが、なかには「地域一帯にChargeSPOTを設置するので、その運営を任せてもらいたい」という提案もありました。ChargeSPOTは我々自身が企画を考えるよりも、皆さんから新しい提案をいただくことのほうが多く、メディアとしての価値が高まりつつあることを感じております。

今は様々なパートナー様と組みながらChargeSPOTを使った企画や広告のトライアルを行っている段階ですが、新しいメディアの担い手として、アフターコロナに向けた準備も進めていきたいと思います。

【ChargeSPOTに関するお問合せはこちら

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。