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テレシーが、運用型テレビCM事業で大切にしていること[インタビュー]

2020年に運用型テレビCM事業を開始し、その後急成長でその規模を拡大しているテレシー
運用型テレビCMが高い注目を集め、競合環境が激しくなりつつあるなかで、同社はどのようなこだわりを持ち、広告主にサービスを提供しているのか?

代表取締役 土井 健氏、取締役 吉濱 正太郎氏、取締役 川瀬 智博氏の三人へのインタビューを通して、テレシーならではのこだわりや考え方が明らかになった。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下智之)

運用型テレビCM市場は想定を上回る成長へ

―2020年から2021年にかけての運用型テレビCM市場の動向をお聞かせ下さい。

土井氏:所感としては、想像以上に伸びています。市場規模も昨年当社が予測した今年の数字よりも大幅に伸びていると感じております。
多くの広告主の方が、テレビCMでも広告効果を見ながらPDCAを回していくという運用型テレビCMに注目をしていただいています。

 

―この領域への新規参入はその後続いているのでしょうか。

土井氏:現状は、ほぼ当社とラクスルさん(ノバセル)の2社がシェアを伸ばしているという状況になりつつあるという認識です。もちろん効果測定ツールとしての立ち位置や周辺のアタッチメントという立ち位置で事業を始めて、徐々に参入をし始めている企業はおりますが、放送局媒体の取り扱いを大きく伸ばしているのはこの2社ではないかと思っております。

 

―直近のお取組みについてお聞かせください。広告宣伝活動を積極的に展開しており、配信面でもタクシー広告などに面を広げているようですね

土井氏:去年12月にタクシーCMを出稿し、その成果が認められました。そこで4月以降はタクシーやエレベーター広告などにも出稿しており、テレビCMの展開も進めています。

 

―現在テレシーに出稿している広告主層についてお聞かせください。

土井氏:1年前にお話しした時と若干私たちの状況が変わっておりますが、現在テレシーという会社の中に、運用型テレビCM事業のほか、タクシー・エレベーターなどのデジタルサイネージ広告も取り扱っている広告代理店事業があります。この事業も非常に伸びています。

運用型テレビCM事業におけるクライアントは、スマートフォンゲーム、D2Cなどの事業を展開する広告主が多いです。

広告主の中にはネット広告におけるIDFAのオプトイン化やクッキーレス絡みの問題も含めてネットでのプロモーションに限界を感じて、新しい媒体を探す必要性を感じている広告主が増えています。

また、タクシー・エレベーターサイネージ広告については、SaaSを提供するBtoBの広告主が圧倒的に多いです。中には、最初にタクシー広告を出稿し、次にテレビCMという流れで出稿いただく広告主もいらっしゃいます。

 

運用型テレビCMに対するダイレクト広告主からの評価

―広告主の出稿目的は刈り取りの指標やCPAを目標値にしてそれで出稿されているような形でしょうか

川瀬氏:D2C広告主は特にその傾向がみられます。それが事業の生業であり、CPAが合えば出稿を継続されますし、もし合わない場合には、出稿を止めるというスタンスです。

 

―数字に対する見方はネットと同じくテレビもシビアに見られていますか

川瀬氏:非常にシビアです。広告主によって様々ではありますが、テレビのCPAを何と比較するのかで、評価の仕方が変わってきます。

 

土井氏:テレビCMの効果に手応えを持つことが出来たのが、あるD2Cの広告主に5回ほど継続出稿をしていただいているということです。

この会社は、元々ネット広告やBSのインフォマーシャルなどに出稿されている企業なのですが、15秒のスポットCMでここまで継続いただけているので自信になっています。

私自身ネット広告側の人間でしたので、以前はテレビCMの意義については懐疑的なところもありました。しかし、効果が合うときは非常に合い、また合う確率も意外に高いという手応えを得られました。

 

その精度にこだわり抜いた効果測定

―インフォマーシャルもやっている会社がテレビで上手くいかれるのは良いですね

土井氏:広告主の中には、インフォマーシャルしか合わないという意識でテレビと向き合っていたが、スポットでも効果があるということで驚かれる方もいます。また、効果が可視化できるようになり、少額から地域を区切って試すことができるという特性が、お試しいただけるきっかけになったと思います。そして実際に効果を出すことが出来ました。広告主、放送局にとってもポジティブな流れであると思います。

 

吉濱氏:広告主の数も売上に比例して伸びております。私たちのサービスはD2Cの企業様を含めてご納得いただける成果をお出しすることが出来るようになっています。

私たちのプロダクトは、過去のデータをもとに、未来のコンバージョン数を予想し、それを上回る分をテレビの効果として捉えるようなプロダクトを作っています。

この部分の精度はプラスマイナス5%程の精度で出せるようになりつつあり、満足していただけるパフォーマンスを発揮しています。

 

―広告効果測定はどのように行われているのでしょうか?

吉濱氏:広告主から過去2〜3ヶ月以上のコンバージョンデータを共有いただき、その数字をもとに未来の数値を予測します。これに加えて、どの程度のアップリフトがあったのかを計測し、これをテレビCMの効果とさせていただき、投資した広告費をもとに、CPA/CPIで算出します。

 

川瀬氏:当社の効果測定のロジックにおいては、テレビCMを見ていなくてもコンバージョンするという人はカウントしておらず、テレビCMを出稿したことでどれだけリフトアップが起こったかというところをシビアに見て、高い精度で出しています。
この方法は、私たちならではの手法であると自負しています。

 

広告主と同じ「事業者目線」でマーケティングを支援

―テレビCMを出稿したいと思った広告主は、まずどうすればよいのでしょうか?

土井氏:全てテレシーに相談してください。シリーズA、Bなどで資金調達受けておられるスタートアップ企業とのお付き合いもありますが、私たちが1年走ってみて感じたことは、テレビもマーケティングも手段でしかなく、事業全体をどのように伸ばしていけるかという部分で同じ目線、スピード感で仕事を進められるかが私たちを選んでいただけるかどうかを判断いただくうえで、重要視されていると感じています。

私たちは、そういった部分において受け入れていただけているのかなと感じております。広告以外の話もできるかと思います。全体感の中で手段としての広告の話をするのか、シンプルにこの広告だけをやるという話をするのかで、受け入れられ方が違うのではというのはスタートアップの会社の方々とお話させていただいていて、感じています。

 

川瀬氏:一般的に、広告代理店はテレビCMを売りたいと考えています。企業としては投資判断どうするかというところなので、まず考えてほしいことはしっかりPMF(プロダクトマーケットフィット)が出来ているかどうかということ。運用型テレビCMという言葉が先行し過ぎている感があります。運用型テレビCMは、ピンポイントでCMをターゲットに当てられると考えている人もいますが、テレビCMの場合、それ以外の方に当たってしまうことを排除することは出来ません。

まずは自社でイノベーターやアーリーアダプターを獲得し、そこでプロダクトを開発されたうえで、アーリーマジョリティーやレイトマジョリティといったところを獲るというのが基本的な流れになってくるので、その目線はプロダクトを推進していく事業社様側にも意識していただけると、運用型テレビCMをより効果的に活用いただけるかと思っております。

 

土井氏:私たちは、場合によっては、「今はまだテレビCMを使わないほうがいいです。」と言って差し上げることも重要です。
リスティング広告やFacebook広告も実施していない段階で、いきなりテレビCMを打とうとする広告主に対しては、場合によりそのようなお話をさせていただくこともあります。

 

―CMの尺の長さは現状15秒や30秒が中心でしょうか?今後、インフォマーシャルのようなものが可能となる可能性はあるでしょうか。

川瀬氏: 15秒30秒が中心です。いかに15秒30秒でCPAを下げられるかが重要になると考えております。60秒を提案することもありますが、まずは計画的なキャンペーンを実施しやすい15秒30秒でチャレンジしていただくような土台作りをしていきたいです。

 

―事業をされている中での課題についてお聞かせください

土井氏:とにかく採用です。笑

今は事業の成長に、人材が全く足りていない状態です。

これまではネット系人材が中心でしたが、当社の事業規模も大きくなっており、テレビ業界とのお付き合いを深めていくうえでも、テレビ業界に詳しい方に来ていただきたいと考えております。職種は、営業や事業戦略策定の担当、企画担当、ディレクターなど、テレビ領域の広告代理店のエースのような方々を集めていきたいです。

私たちは、この先の事業ロードマップも作っており、付加価値を生み出して事業成長を継続させる方法も見えてきております。
これを実現するための人材が必要であるのが現状です。

 

―今後どのような広告主層をターゲットにしていかれますか?

土井氏:引き続きゲームアプリやD2Cの会社の顧客層を開拓していきたいです。ネットに数千万円の予算を投下しているが、テレビCMはまだという広告主の方にはぜひ一度お試しいただきたいです。また、スタートアップ企業がマーケティング投資をされる時にも、ぜひご一緒させていただきたいと考えております。産業を問わず、様々な業種の方々とご一緒していきたいと考えております。

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。