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特別講演「マーケターとしての価値形成」を開催―MCAが第3期を始動

マーケターキャリア協会(MCA)は、2021年10月8日、年次会員総会をオンラインで開催した。

会員数は既に1000人超

MCAは、「マーケターの価値を明らかにする」ことを目的として2019年に設立。事業会社、広告関連会社、アドテクノロジー企業などのマーケティング部門や事業部門の関係者を中心に1140名の会員基盤を持つ。

 

MCAでは、これら会員向けに各種プログラムを用意。本総会では、2022年に実施予定の各プログラムの内容についての発表を行った。主なプログラムは下記の通り。

 

・MCA道場

熟練したマーケターを師範として迎え、その師範の経験や考え方を通し、マーケターとして生き抜いていくためのあり方を学ぶリアル開催形式の場。主に対談形式の講義やグループワークで構成されている。

 

・MCAメンターシッププログラム

著名マーケターが参加者のマーケターとしてのキャリアを支援する、有償のメンタリングプログラム。

 

・MCA Meet Up

テーマごとに著名なマーケターをゲストに招き、パネルディスカッションとネットワーキングを行う交流イベント。

 

・MCAコンピテンシープログラム

高い業績や評価されるような成果を出す人に共通してみられる「行動特性」を明らかにするためのプログラム。自分の強みを理解し、例示される自分と近しい行動特性を持つマーケターのキャリアや経験から、目指すべき道や方法論を探る。

 

・幸せな就活

2023年に国内外大学・大学院を卒業予定の学生を対象とした、新卒マーケティング専門職採用プログラム。優秀者は本プログラム参加企業のマーケティング関連職などでのインターンや採用面接へ進出する権利を獲得できる。

 

・WASEDA NEO x MCA コラボプログラム

早稲田大学社会人教育事業室運営の社会人教育事業である「WASEDA NEO」とMCAのコラボ企画。「デジタル時代のマーケティング総合講座(仮)」と題して、マーケティングについて総合的に学びたいと考えている企業人を対象に、基礎講座に加え、応用講義科目として「デジタルマーケティング実務の事例」や「CMOセミナー」、実習・実践科目として「マーケターとしての価値形成」や「調整と実行としてのマーケティング」などの講義を行う。

 

尚、今年度は株式会社インテージがMCAサポーターとして参画。定量調査やインタビューに協力したMCA会員に対して、同社のパネル調査データを無償提供するなどの枠組みを用意している。

 

フレームワークとの付き合い方

総会の後半では、かげこうじ事務所代表の鹿毛康司氏、早稲田大学商学学術院教授の守口剛氏、MCA理事/Preferred Networks執行役員で最高マーケティング責任者の富永朋信氏が「マーケターとしての価値形成」と題した特別講演を実施した。

 

富永氏は冒頭で「マーケティングに特化したスクールはこれまであるようでなかった」と指摘。続いて鹿毛が「これまでも座学であればあったが、理解することと実際にできることとは違う」、守口氏も米国の経営学者であるフィリップ・コトラーの「マーケティングは学ぶことはやさしいが、使いこなすには一生かかる」という発言を引用しながら同意した。

 

続いて鹿毛氏は、「自分の頭で考える」ことの重要性を強調。マーケティングを学ぶという観点において、過去の成功例に基づき定式化されたフレームワークばかりが偏重される傾向に異を唱えた。

 

これに対して富永氏は「フレームワークには先人の知恵が結集されている」ため、参考にすること自体は悪くないと発言。ただし、フレームワークをなぞることだけに満足してはいけないとの考えを示した。

 

「人間理解に対する飽くなき追求こそが大事」と発言した富永氏に対して、鹿毛氏は「心が動くからこそ、人々は商品を買う」と同調。守口氏も「消費者にどんな商品が欲しいかと聞いて明確な答えが返ってくることはほとんどない。優れたマーケターはその答えを探り当てて提供することができる」と論じた。

 

あの外資系企業の社員はなぜ成功したのか

また守口氏は、マーケティングに関する先進的な取り組みで多数の実績を有するある外資系企業の社員たちは「豊富な経験を通じて、自分なりの見解や思考回路を構築したのではないか」と推測。これに対して鹿毛氏は、そうした社員は「日本市場ではまだ方法論が確立されていない時期に、自分で考えて、実験をして、かつ部下に体系立てて教える」経験を有するからこそ、「体系化されていない部分が勝負所だということを痛感しているのではないか」と述べた。

 

講演の終盤では、消費者が商品やサービスを購入する理由について3名が改めて整理。主に①馴染みがあるから、②便利だから、③好きだから、の3つがあるとした上で、消費者に好きになってもらうためのマーケティングこそ、最も難しく、また最も自分の頭を使って考えなければいけない領域であると伝えた。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。