ATS Tokyo 2017開催、CIO/CMO設置の課題が議論に

日本のプログラマティック・マーケティングの最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2017」が10月3日、都内にて開催された。

ロンドン、シンガポール、トロント、マイアミといった世界の主要都市で実施されている本イベントが東京で行われるのは4回目。今年は「広告取引の透明性」「クロスデバイス」「プログラマティックビデオ」「データドリブンな企業の組織作り」などが議論の主要なテーマとして据えられた。

「企業におけるCIO及びCMOの役割」をテーマとした英語でのパネルディスカッションには、データ・ビジネスの第一線に立つ面々が参加。ExchangeWire.comのキアラン・オーケインCEOによる進行の下で、Datorama Japan株式会社の代表取締役である布施一樹氏、トレジャーデータ株式会社のマーケティング担当ディレクターを務める堀内健后氏、日本アイ・ビー・エム株式会社におけるマーケティング & コミュニケーション パフォーマンス・マーケティング アナリティクス & デジタルプラットフォームの担当部長である廣末佳子氏が持論を展開した。

ビジネスで活用するデータが拡大かつ複雑化していることを受けて、各企業ではデータ管理及び活用を効率的に行うための組織改変を迫られている。こうした変化に対応するために検討されているのが、主に欧米企業において先例が見られる情報システム部門の最高情報責任者(CIO)と最高マーケティング責任者(CMO)の新設。このCIO/CMOの設置にまつわる様々な課題が本議論の主なテーマとなった。

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日本アイ・ビー・エムの廣末氏

日本アイ・ビー・エムの廣末氏は、一般的に「プッシュ型」「プロダクトアウト型」などと表現される形態から、本当の意味での消費者理解を目的としたモデルへとマーケティング活動は転換しつつあると主張。そのためにデータとテクノロジーの活用が必須になっているが、豊富なデータを扱う環境においては、データを収集するプラットフォームの特性を理解し、またデータ活用に際してどのようなリスクがあり得るかを予め把握しなければならない。さらにマーケティングの最適化を定常的に図るためには、ペイドメディアに対する効果分析を従来のようにキャンペーン実施後ではなく、その最中に把握する必要がある。これらの業務の責任を負うのが、CIOやCMOの役割になるという。そのために、CIO/CMOは、様々なデータが統合的に表示されたダッシュボードを常に確認し、計画したマーケティング戦略が適切に実施されていない場合に備えて軌道修正を行うための権限と予算が与えられるべきであると述べた。

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Datoramaの布施氏

ただし、廣末氏が語るCIO/CMOを中心とした組織体制は、いまだ構想段階に過ぎないというのが現状でもある。Datoramaの布施氏によると、日本企業においては、実務レベルでデジタル戦略に精通した責任者が取締役に名を連ねていること自体が非常に稀。トレジャーデータの堀内氏も、自社サイトを通じてのデータ収集や、モバイルアプリの運営を行っていない企業も多くある現時点においては、CIO/CMOという役職が本当に機能するかどうかを疑問視している。

布施氏は、こうした状況を変革するには、企業のトップによるリーダーシップが必要になると主張。データ事業者が、CEOを始めとする要職とCIO/CMOの関係をつなぐ役割を果たし得るとも述べた。

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トレジャーデータの堀内氏

また廣末氏は、「どの事業者と提携を結ぶか」といった具体策よりも、「どのようなデータを収集するべきなのか」といった俯瞰的な青写真を描くことの難しさを指摘。これに対して布施氏は、青写真を描くという企業の根幹となる作業はデータ事業者に依頼するのではなく、自社で行う必要があると訴えた。さらに堀内氏は、広告部門とマーケティング部門がそれぞれ「蛸壷化」していることの弊害を指摘した上で、関連ソリューションが乱立している現状においては、CIO/CMOの重要性が確実に増していくと述べた。

加えて各登壇者は、CIOとCMOの架け橋となる「最高マーケティングテクノロジー責任者(CMTO)」や「最高デジタル責任者(CDO)」といった役割の新設まで提案。デジタル・マーケティングの発展のためには、企業は抜本的な組織改編を必要とするとの見方を示した。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。