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「AdSIST」で自社ECショップの広告配信を自動化―これから社の目指すボトムアップ戦略とは [インタビュー]

株式会社これから(これから社)は「ネットビジネスを底上げする」をビジョンに掲げ、EC領域の支援事業を提供している。Saas型自動集客ツール「AdSIST」の開発・提供も行い、中小・零細企業が自社ECショップ集客を行うための第一歩を支援している。これから社の取り組みとEC市場の展望について、今泉雄介代表取締役に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

自社ECの売上はゼロの会社が9割

―自己紹介とこれから社の設立経緯についてご共有ください。

前職はECパッケージを提供している会社に勤めていました。その会社では新卒入社で8年勤めましたが、その後は独立してこれから社を立ち上げて、現在は10年目に入りました。

 

これから社の設立経緯としては、前職の会社では、当時クライアントが2万社ほど居ましたが、そのうちの9割は自社ECでの売上がゼロで、残りの1割はかろうじて売上がある状況を見ていたことです。要は購入チャネルとしてECは設けたものの、全く売上には貢献出来ていなかったのです。

 

私はその状況を課題視していたのですが、今いる会社ではその状況を変えるのは難しいと考え、自身で独立して事業を始めることにしました。

 

―売上が思うように立っていない、という事業者は現在も多いのでしょうか。

私がECの業界に入ってから約20年が経ちますが、同じ状況が続いています。

 

「何故商品が売れていないのか」という理由をお話しますとシンプルで、サイトへの集客が出来ていないからです。楽天やAmazonと違い、自社オリジナルのEC店舗の場合は集客を自分でやらなければならないのですが、中小・零細企業にとっては、集客をするための知見もリソースもなければ、外部委託するような潤沢な予算もない、という会社がほとんどです。

 

このような状況のため、ECコンサルなどを手掛ける支援事業者から見ても、お金を持っていない中小・零細企業を相手にするのはビジネスモデルとして儲かるものではないため、サービスの手が回っていないという問題もあります。

 

中小・零細企業のEC集客を助ける「AdSIST」

―貴社ではAdSISTを提供されています。こちらはどのようなサービスでしょうか。

AdSIST(URL)は誰でも手軽にFacebookやInstagram、Google、Yahoo!、LINEといった主要広告媒体へ出稿できるSaaS型ネットショップの集客自動化ツールです。

 

「誰でも簡単にネットショップに集客できる」をコンセプトに作成されたツールで、初めての方でもチャットボットの質問に回答していくだけで、広告配信の設定が可能です。また、配信された広告の効果測定についても、AdSIST内で確認することが可能です。

 

先ほども申し上げた通り、ECショップで商品が売れていない理由は、集客が出来ていないからです。現在は累計6,000サイトにご利用いただいていますが、我々はこのAdSISTを広めていくことで、まずは市場のボトムアップを行いたいと考えています。

 

また、AdSISTでECショップの売上がしっかりと出始めた企業の中には「更に売上を伸ばしたい」と考える方もいらっしゃるかと思います。そのようなお話が出れば、我々が展開するコンサルティングやネットショップ制作などの基幹事業で更にお手伝いをさせていただきます。

 

―貴社はネットショップのコンサルティングや制作、広告代理業等を展開されていますが、売上をアップするための方法をどのように決めていくのでしょうか。

目標金額が月商100万なのか、1,000万なのか、もしくはそれ以上かで大きく変わってきますが、最初に必ず現状分析をさせていただきます。

 

サイトへのアクセスが足りてなければ広告代理業。転換率(サイト訪問者数に対する受注成立数)が少なければネットショップ制作。戦略立案のためのリソースが足りなければコンサルティング、という形でサービスを提供することが多いですね。弊社には専門のチームが社内にありますので、全て社内で対応させていただきます。

 

売上や目的に合わせたシステムを選ぶことが大切

―ECサイトを構築するためのツールには様々なものがございます。そちらのトレンドについてはいかがでしょうか。

圧倒的に多いのは基本無料で取引や決済の際にだけ利用料が発生するBASEとSTORESですが、Shopifyも利用者数を伸ばしています。それ以外のツールについては、ほぼ横ばいかと思います。ツールを選定する際は、月商で決めていくのが分かりやすく、「とりあえず始めたい」という状況でかつ、月商10万未満までならば、BASEかSTORESを使うのがオススメです。

 

月商が10万を超え始めると取引手数料が占める金額も高額になってきますので、カラーミーショップ、MakeShop、futureshopなどに移られるのが良いでしょう。

 

流行りのShopifyですが、Shopifyは専用の機能=アプリを個人から企業まで様々なベンダーが開発および公開をしているため、ECショップとして出来ることは多いのですが、流行りだからと安易に飛びつくのはリスクがあります。

 

Shopifyは日本語に対応していないプラグインが多数あるため、日本国内だけでEC事業を行うのであれば、別のツールを使ったほうが良い場合もあります。一方で、越境ECを見越しているならば、Shopifyを採用するのは非常に良いかと思います。

 

ライブコマースの発展に期待感

―SNSの運用はどのように考えていくのが良いのでしょうか。

ECの立ち上げから月商100万~500万までは、新規顧客を獲得するためのステージです。そのため、SNS運用では広告出稿をしっかりと行いながら、新規のユーザーをどんどんと掴むことが大事になってきます。

 

ただ、月商500万以上から先は、新規顧客を増やすこと以上に、リピーターを獲得することが大事になります。要はファンを作り、エンゲージメントを高めていかなければなりません。

 

―運用を行うSNSはどのプラットフォームがメインになってくるのでしょうか。

ターゲットや商品によって異なりますが、TwitterやTikTokは若年層が多く、Facebookは年配層が多いです。一方で、アパレルならば圧倒的にInstagramが効果的でしょう。基本はタイムラインに流れるディスプレイ広告をお使いになるのが良いかと思いますが、類似ユーザーやオーディエンスに向けて、趣味趣向が似ている人に広告で自動を打つのもECでは効率的ですね。

 

ライブコマース(動画のライブ配信上で商品の購入が可能なスキーム)もトレンドとしては注目しています。

 

現在はInstagram(Facebook)でサービスが提供されていますが、Youtubeもライブストリーム動画から直接商品を購入可能なシステムのテストをしているようです。ただ、ライブコマースは中国でのウェイトはかなり大きいですが、欧米ではそれほど大きくありませんので、日本でどのような広がりを見せるかは不透明なとこがあります。

 

広告代理店向けに「AdSIST plus」も提供開始

―今後の事業展望についてお願いします。

コロナ禍に入りDX化が迫られた結果、日本のEC化率は底上げされました。また、BASEなどのショップツール、メルカリなどのプラットフォームの登場で、企業から個人に至るまで、ECに参入するための障壁は非常に低くなりました。

 

一方で、ECの支援事業者はまだまだ足りていません。我々は様々な事業者のご協力もいただきながら、EC市場全体の底上げをしたいと思っています。また、我々が課題視をしてきたEC売上の底上げについては日本だけでなく、世界中の課題だと思っていますので、今後は海外のEC市場の底上げにも貢献していきたいです。

 

広告代理店の皆様におかれては、ECは数十万円で広告費が動く世界のため、あまり積極的に取り組んでこなかったかと想像します。弊社では2021年9月から「AdSIST plus(URL)」という広告代理店向けのメニューも展開していますので、今後は効率良くフォローをしていただくことで、売上に繋げていただければ幸いです。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。