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2022年予測:Next Wave - ブロックチェーン、メタバースなど

今回のExchangeWireの2022年予測シリーズは、急成長中のメタバース、NFT、ブロックチェーンをはじめとする新技術の2022年予測を業界関係者に語ってもらった。

 

 

ゲームの世界でNFTが勃興

ここ数年、NFTの人気が急激に高まり、2021年前半の売上高は25億ドル(約2870億円)にまで達しました。しかし、ゲームの世界では、まだ十分に活用されているとは言えません。それでも、ユービーアイソフト(Ubisoft)が、「Digit(ディジット)」という名のNFTを取引できるサービス「Ubisoft Quartz」を発表したり、NFTに注力するポリゴン(Polygon)が、ブロックチェーンゲームとNFTの発展を支援するため、2021年7月にポリゴン・スタジオを立ち上げたりするなど、すでに一部の企業の参入は始まっています。

 

2022年には、もっと多くのゲームプラットフォームがこのNFTのトレンドに乗るべきだと気づくでしょう。多くのゲームプラットフォームが、オンラインゲームの世界で近い将来に起きるであろうエキサイティングな変化に気づき、ようやくこの未開拓の市場に参入する意義を理解する1年になるでしょう。

 

アーカディウム CEO兼共同創業者、ジェシカ・ロベロ(Jessica Rovello)氏

 

ブランドはメタバースでの存在感を示すためにマーケティング投資を増やすだろう

多くの人が2022年はメタバースの年になると予測していますが、メタバースは新しい概念ではありません。エピック(Epic)、ロブロックス

(Roblox)、そして、メタ(Meta)はすでに、私たちが遊び、働き、エクササイズを行い、交流できる集合的な仮想空間に巨額を投資しています。そして、別の側面に目を向けると、2022年は、ブランドが、この新しい空間でブランドアイデンティティを浸透させるため、多額のマーケティング費用を投じる年になるでしょう。

 

私たちの日々のデジタルインタラクションはすでに変化を始めています。私たちがコンテンツを消費し、友人たちと交流する方法は、ますますバーチャルに適応したあり方に変化してきています。今後数年のうちには、ブランドが、メタバースやそのユーザーたちと適切に協業する方法も見えてくると思います。

 

最近では、ジョン・ルイス(John Lewis)とITVがフォートナイト(Fortnite)での活動を開始し、ナイキ(Nike)がロブロックスにナイキランド(NIKELAND)を開設しました。これらは、ブランドがどうすれば、ブランド主導でメタバース体験を実現でき、ユーザーにNFTと呼ばれるデジタルアイテムを購入、収集してもらうことができるかを示す特筆すべき実例です。

 

NFTは、現実世界における商品売買と同様に、デジタル資産を売買する方法で、すでに需要が急速に高まっています。高額アイテムの販売で知られるサザビーズ(Sotheby's)も、メタバースでの取引を始めており、高級ブランドのバレンシアガ(Balenciaga)はNFTコレクションを33秒で完売しました。

 

2022年に、NFTは数十億ドル規模の市場となり、現実世界で購入されているようなアイテムが、仮想空間においても気軽に売買できるようになるでしょう。

 

ビッドスタック オートメーション責任者、ヤシン・ダブヘリア(Yasin Dabhelia)氏

 

 

ARとVRは、ブランドのマーケティング戦略でより大きな役割を担う

多くのオーディエンスは、創意あふれるインタラクティブなデジタル体験に好意的なので、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)はマーケターにとってもエキサイティングな技術となりえます。イケア(IKEA)のようなブランドはすでにARを活用し、顧客が自分の居住空間を自由にデザインするのを手助けしています。バーチャル不動産ツアーや休暇に予約を検討しているホテルの「事前体験」、口紅の色や衣服が似合うか購入前に試せる試着など、他の業種においても大きな可能性を秘めています。

 

メタバースはまだ初期段階にありますが、マーケターがこれらのデジタル空間で消費者とつながるためのツールはますます拡充していくでしょう。その結果、2022年には、ARとVRがマーケティング戦略で、より大きな役割を担うことになるだろうと私たちは予想しています。

 

トータル・メディア・ソリューションズ バイサイド担当ディレクター、ナディア・オゼリ(Nadia Ozeri)氏

 

 

ブロックチェーン対応ゲームが、ゲームをよりメインストリームに押し上げる

メタバースの概念は非常に大きな話題となり、世界中に情報が溢れていますが、2022年にそのためのプラットフォームやシステムが突如現れるわけでなく、引き続き一連のアイデアのままであり続けるでしょう。発展の初期段階における最も顕著な変化は、仮想空間に関心を持つ、ゲーム関連以外の企業の数と種類に表れるはずです。今後、こうしたゲーム関連以外の企業も、ゲームに用いられている技術やエンジンを利用して、大規模に相互接続された巨大な世界に必要な共有プロトコルの開発を始めることになるでしょう。

 

ブランドもゲームに注目することで、メタバースで優位に立つチャンスがあります。賢明なブランドは「概念実証」の域を出ない話題先行の不明瞭なチャンスを追い求めるのではなく、半世紀近く前からすでにネットワーク化された仮想世界を持っているゲームの世界に学ぶことが近道です。そうすれば、目の前にあるチャンスを活かすことができるでしょう。

 

メタバースが約束する広大な仮想プラットフォームでは、デジタル所有権がこれまで以上に重要になります。そのため、NFTという概念に対する熱が急速に高まっています。短期的に見ると、NFTはブロックチェーン対応のゲームで最も有用性を見いだされています。従来のゲーム業界を混乱させるものではなく、むしろ補完の可能性を秘めているからです。これらのゲームの台頭は、既存のゲーム会社が駆逐されるわけではないという意味において、モバイルカジュアルゲームの成長に似ているかもしれません。ブロックチェーンゲームは、ストリーミングやeスポーツといった収益性の高いジャンルを超えて、あらゆるゲームがプロ化することを可能とするため、稼ぐことを動機とするプレーヤーをそこに取り込むことで、ゲーム全体の裾野を拡大することになるでしょう。

 

アクティビジョン・ブリザード グローバルビジネスマーケティング・測定・インサイト担当バイスプレジデント、ジョナサン・ストリングフィールド(Jonathan Stringfield)氏

 

 

2022年、業界が一丸となってメタバースの規制に責任を負うようになる

ウェブ2.0の初期は西部開拓時代のような無法地帯でした。今でもその影響が残っており、コミュニティやプラットフォームは、ますます制御することが難しくなっています。その結果、ユーザーとブランドの両方の安全性が大きく損なわれる状況となっており、匿名性のメリットも悪用されています。

 

メタバースの構成要素を考えると、ウェブ同様に無秩序な道を歩むことになると予想されます。

 

2021年にはバーチャル上での初めてのセクシャルハラスメントが報告され、他にも安全性の課題が日々発生しています。このような問題だらけの空間では、ブランドが参入に二の足を踏むのも不思議ではありません。

 

しかし、私たちは、2022年がオンライン空間における集団的責任の転機になると予想しています。過去の失敗から学び、この未知の領域に何らかの規制を加えるため、つまり、現実世界の倫理を導入してブランドを守るため、オアシス・コンソーシアム(Oasis Consortium:メタバースでの倫理行動を示す技術リーダーのパネル)のような組織も創設されました。

 

同時に、デジタル世界を支えるコミュニティ管理者たちは、日々状況に適応し続けています。このメタバース世界の開拓者たちはコミュニティアバターとして、今もこの共有空間に対峙し続けています。しかも、匿名のカスタマーサービス担当ではなく、問い合わせや懸念事項を受け付ける現実世界の窓口として機能しているのです。

 

このような安全プロトコルを整備することで、世界中でメタバース管理者たちが活躍するようになり、多くのブランドがメタバースに参入することを可能にするでしょう。

 

TMWアンリミテッド ソーシャルおよびインフルエンス担当ディレクター、オリビア・ウェダーバーン(Olivia Wedderburn)氏

 

 

没入感のあるデジタル体験を構築することで、ブランドはオーディエンスエンゲージメントを高めることができる

メタバースはより大きなトレンドを物語っています。つまり、消費者は没入感のあるパーソナライズされた体験を通じて人間的なつながりを求めているのです。デジタル化が進み、人々が仕事、遊び、生活の大部分をオンラインに依存するようになった今、仮想世界に集まり、交流する方法を再考しなおすことには、新たな重要性と緊急性が生じています。

 

 

私たちは、リアルタイムに進化する、完全にインタラクティブで息をのむようなデジタル世界をほんの少ししか見ていません。2022年、ブランドは5Gや次世代技術によって、デジタル世界での没入型体験を大幅に強化できるでしょう。その結果、ブランドが消費者と関わる方法は劇的に変化し、ストーリーテリングの新しい次元が切り開かれます。マーケターは独創的なだけでなく、買い物客、さらには急拡大しているゲーマーのコミュニティに対しても、完全にインタラクティブな体験を提供できるようになるでしょう。ゲーム内でのショー、コンサート、パーティー、そして、クールなギアから会場そのものまで、あらゆるものを非代替性トークン(NFT)でデジタル所有できるのです。このような、インタラクティブなゲームの世界をぜひ想像してみてください!

 

ARは没入感と「試着」、非接触型エンゲージメントなどの実益を併せ持ち、すでに広く受け入れられています。ヤフー(Yahoo)の調査では、買い物客の46%がARコンテンツに関心を持っており、80%が商品を購入前に360度すべての方向から見たいと述べています。多くのデジタル技術が実用化され、メインストリームの仲間入りを果たしています。ブランドはこれまでよりはるかに大きなキャンバスを手に入れ、絶え間なく変化するメタバースでターゲットオーディエンスと効果的にエンゲージし、コンバージョンにつなげられるでしょう。

 

ヤフー 最高事業責任者、イバン・マークマン(Ivan Markman)氏

 

 

ゲームはメタバースへの理解を深める場所に

2021年がメタバースの到来を誰もが認識し始めた年だとしたら、2022年は、この空間が自社にとってどのような意味を持ち、どんな準備をすればよいのかを真剣に考える企業が多数現れる年になるでしょう。

 

世界有数のテクノロジー企業が、この空間の一角を占めようと画策しているという話をよく耳にします(すでに目にしているケースもあります)が、最も進展が見られるのはゲームの世界です。ロブロックスやフォートナイトはすでに、プレーヤーが、プレイするだけでなく、集まり、創造し、学び、さらにはキャリアを築くための包括的なプラットフォームへと進化を遂げています。

 

アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)、ザ・サンドボックス(The Sandbox)などのNFT技術を用いたゲームは、プレーヤー同士が仮想環境で金銭的な取引関係を持ったとき、何が可能になるかを示してくれています。ポケモン GO(Pokémon GO)、ピクミン ブルーム(Pikmin Bloom)、イングレス(Ingress)といったナイアンティック(Niantic)のARゲームは、リアルとバーチャルの境界を曖昧にすることがどのような効果をもたらすかを理解する助けになります。VRゲームの人気はますます高まっています。CESでのプレイステーションVR2の発表のおかげで、2022年はVRゲームの話題が相次ぐと予想されます。

 

もし広告主がライバルに先んじて、メタバースのどこに適合するのかを知りたいのであれば、ゲームはその出発点として最適ではないでしょうか。

 

アンズ・アイオー 英国セールス担当ディレクター、ニール・パメル(Neil Pummell)氏

 

 

より多くのブランドがメタバースのチャンスに飛び付く

メディアやテクノロジーの未来に関する記事を書くのは決して簡単なことではありません。WAP、スカイ・オープン(Sky Open)、グーグルグラス、スマート冷蔵庫を覚えているでしょうか? これらすべてが次の「ビッグウエーブ」と宣伝されながらも、結局さざ波程度しか立ちませんでした。ブラックベリー(BlackBerry)でさえも、今は電源が切れた状態ですし、アレクサ(Alexa)もあまり芳しい状況ではありません。

 

私の自宅では、アレクサの用途は、音楽か天気予報、あるいはふざけたジョークにほぼ限られています。市場の状況もこれを反映しているようです。英国では2020年、アレクサの新しいスキルの公開が前年より66%も減少しました(Voxalyze調べ)。2022年、アマゾンとグーグルは、音声アシスタントの風向きを変えるため、間違いなく新しいデータ、テクノロジー、ユーザビリティを投入してくるでしょう。

 

一方、メタバースには、衰退の兆候は全く見られません。ロブロックスやメタからマイクロソフト・チームズ(Microsoft Teams)まで、人々が仮想環境で遊び、働き、交流する時間はますます増えています。

 

これまで広告予算は、こうしたオーディエンスの行動変化をあまり反映できていませんでした。しかし、2022年はすべてが変わる年になるでしょう。なぜなら、より多くのブランドがメタバースの可能性に気付き、メタバース環境での足場の確保を急ぎ、NFTを賢く活用するため、広告予算を大きく増加させるはずだからです。

 

ザ・セブン・スターズ テクノロジーおよびアクティベーション責任者、リース・ウィリアムズ(Rhys Williams)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。