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2022年予測:デジタル広告が環境に及ぼす影響

今回のExchangeWireの2022年予測シリーズでは、デジタル広告が現時点で環境に及ぼしている影響の評価と、この1年で、業界がこの問題にどう取り組んでいくかを関係者に予測してもらった。

 

2022年、CO2排出量削減策を講じるエージェンシーが増加

 

広告主はすでに、広告が環境に及ぼす影響に目を向け始めています。ただし、デジタル広告によるCO2の排出量を把握する作業は複雑です。また、考慮すべきレイヤーも多重となっており要因が見えにくくなっています。しかし、制作と配信のプロセス全体を詳細に分析することで、広告主はマーケティングによるCO2排出量を完全に把握できるようになります。

 

 

広告主がデジタル広告の影響を把握したら、次のステップはその削減に取り組むことです。2022年にはこれに取り組むエージェンシーが増えると予想しています。短期的には、ブランドとエージェンシーが採用すべき2つの主要な方法があります。ひとつ目は、広告の制作から配信までのレイヤーを減らすことにより、技術スタックを簡素化するというものです。パートナーの数を削減すれば、統合すべきレポートの数も減り、間接的に排出量を削減することにつながります。

 

2つ目は、データ負荷を軽減することです。短尺の広告の方が長尺の広告よりも軽く、広告フォーマットや圧縮率によって容量を小さくすることもできます。アセットサイズの最適化は、ユーザー体験の向上につながるだけでなく、広告配信に伴うCO2排出量を削減し、広告が表示されるデバイスの消費電力も抑えてバッテリーの耐用年数を伸ばす効果もあります。

 

さらに、広告への注目度が十分高ければ、フリークエンシーを抑えることができ、広告配信量を減らすこともできます。これによって、結果的に環境負荷が軽減されます。2022年、私たちの業界は影響を的確に測定、把握し、それを削減できるよう、具体的な報告基準を確立する必要があります。また、アテンション測定のフレームワークを確立することで、広告主はより魅力的な広告コンテンツを制作するようになり、結果として、広告はよりサステナブルなものとなるでしょう。

 

ティーズ グローバルリサーチおよびインサイト担当VP、キャロリン・ユゴネン(Caroline Hugonenc)氏

 

ベンダーのサステナビリティへの取り組みが、広告とメディアの取り組みを促進

 

現在、インターネット業界は全体として、航空業界とほぼ同程度のCO2を排出しています。これは主に、ハードウェアの製造とデバイスの電源に使用されるエネルギーによるものです。しかし、インターネット上でコンテンツを配信するだけでも、CO2排出の一因となるのです。このことから私が予想するのは、メディアと広告業界におけるインフラとテクノロジーは、それらのベンダーがサステナビリティを保つためにどのような対策を講じているかによって、選択することが重要になってくるというものです。

 

今後注視すべきなのは、広告主が環境に優しい広告を通して、どれだけ企業目標を達成できるかということです。どれだけCO2排出量を削減し、広告業界における責任を果たせるかということです。この業界はあまりにも長い間、不十分な指標に頼り、多くの無駄を出し過ぎました。

 

アドナミ CEO、サイモン・クヴィスト・ガルソイ(Simon Kvist Gaulshoj)氏

 

広告はサステナブルな活動を必須に

 

予測というより、切なる願いですが、2022年は広告業界がサステナビリティを実現する年になって欲しいと思います。つまり、気候危機への影響を正確かつ詳細に理解し、危機を軽減するために必要な措置を講じるということです。懸念すべき傾向はグリーンウォッシュで、これは、環境に貢献しているとアピールしながら、実際に有効なことはほとんど何もしていないことを表しています。極めて、不誠実な姿勢です。

 

 

私たちには、エネルギー消費(使用するデータ量、配信頻度、配信距離、接続数)の観点から、行っていることの有害な側面を突き止め、そうしたプロセスを徹底的に合理化する責務があります。サステナビリティはデフォルトであるべきで、値上げの理由にすべきでも、ビジネス機会にすべきでもありません。もしビジネス機会と捉えるなら、ビジネスのために必要以上の消費を行い、結局は過ちを繰り返すだけになってしまうでしょう。

 

カヴァイ CMO、ヤニケ・エクボ(Janicke Eckbo)氏

 

2022年が「アテンション・エコロジー」に移行する可能性

 

広告が多すぎると、消費者は木を見て森を見ず、往々にしてすべての広告を無視することになってしまいます。これは、消費者にとっても広告主にとってもマイナスである上、皮肉なことに、「木(広告)」にとってもマイナスなのです。

 

見向きもされない、あるいは邪魔になるだけの膨大な広告を配信するために、どれだけ無駄な電力が費やされているか、ちょっと考えただけでも分かるでしょう。

 

広告主がCO2排出量を減らすために小さくてもポジティブな一歩を踏み出すなら、アテンションデータを活用して、クラッター(混雑度)が低くアテンション(注目度)が高いサイトを選んで広告を出稿されることをお勧めします。それによって、消費者体験が向上し、ブランド売上も向上し、エネルギー消費は削減される等、より良い結果がもたらされるでしょう。2022年は、業界が、「アテンション・エコノミー」から「アテンション・エコロジー」へ移行する年になればと思います。

 

ルーメン・リサーチ マネージングディレクター、マイク・フォレット(Mike Follett)氏

 

2022年、よりグリーンなソリューションが登場し、脱炭素化へのアクションが活発化

 

2022年には、広告が環境に与える悪影響に対処するための行動が、業界全体で活発化するでしょう。広告制作に由来するものから、デジタル広告エコシステムの運用・維持にかかるエネルギーまで、広告産業は、世界のCO2排出量全体の中でも大きな割合を占めています。気候変動に取り組む広告業界団体のパーパス・ディスラプターズ(Purpose Disruptors)は、広告が消費者のCO2排出量を平均で28%増加させているとの調査結果を示しています。

 

また、私たちグッドループ独自の調査では、典型的なオンライン広告の実施によって、5.4トンものCO2を排出することが分かりました。これは英国の平均的な消費者が1年間に排出するCO2の約半分にあたります。しかも、この数字は消費者が実際に見る広告だけを対象にしたものです。プログラマティック広告の台頭により、もはや、ページに広告を送信するために使われるCO2だけを考慮しても十分とは言えません。広告がまったく配信されないオークションのリクエストが毎日何兆回も飛びかっているからで、このことも考慮する必要があるのです。

 

2022年には、広告主がキャンペーンの炭素コストを測定して相殺できるように設計された多くのグリーンソリューションが登場するでしょう。また、プログラマティックエコシステムのCO2排出量をより詳細に測定する調査も実施されるでしょう。広告主は、キャンペーンの環境負荷を減らすため、クリエイティブ容量や種類を削減し、サーバーやサプライパートナーの選択に際しては、環境への取り組み実績を重視するなど、さまざまな方策に着手するだろうと予想しています。そして、私たち広告業界には、そのクリエイティブの力と影響力を駆使して、消費者に行動変容を促し、地球を救うことが求められているのです。

 

グッドループ COO、ライアン・コクラン(Ryan Cochrane)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。